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龍馬の日記  元治元年皐月十三

元治元年皐月十三


高瀬川沿いの船宿で、お龍と飲んでいたら、
隣から聞いたことのある声がする。 
お龍に誰かと聞かせに行ったら、高杉君と土佐の中岡が飲んでいるらしい。

酒を持って、高杉君の座敷に声を掛ける。
「あしゃ、土佐の坂本ちゅうもんだが、
高杉さんと聞き、今一献飲みたくて声をかけたちゃ。」
「おお、龍馬か、入れや。」と中岡が答える。 
「すまんきに、これは酒じゃ。」
「龍馬、ここは魚がうまいときいちょる。なんか見繕えや。」と中岡。
「そうじゃな、お龍、女将に旨い魚を頼んできてくれんかのう。」
「はい。」とお龍が出ていく。
「ところで、坂本君とやら、
土佐では武市君と勤王に励んていると聞いているが、
最近は幕府とつるんでいるとも聞くが、どうなんだね。」
「いいこと聞いてくれる。高杉さん。
これからは海軍力ぜよ。海を制したモノが日の本を制し、
強いては、外国を制し、尊王も確立できる。
どうじゃ、長州も海軍に力を入れんか。」
「今、長州は草莽崛起が盛ん、相撲取りも勤王のために働く。
とてもじゃないが、海軍に力を入れる余裕はない。」
「そう言わんと、ちくと考えてくれんか。」
「それじゃ、坂本君が日の本の海軍をやれば良かろう。」
「もちろんそのつもりじゃ。
海は良いぜよ。士分も郷士もなか。皆んで船をうごかしゅう。
強い国はみんな、海軍が強い。
日の本もそうあるべきじゃ、のう、高杉君。」
そんな話をしていたら、操練所に行ってい居た、
近藤長次郎と沢村惣之丞が入って来て、中岡の顔を見て驚く。
「これは中岡殿。お久しぶりで。」
「長次郎も惣之丞も久しぶり、今は長州藩士、石川と名乗っている。
石川と呼んでくれ、元気だったか?」
「今は幕府の操練所で船の動かし方を習っています。
幕府の士分の方も、我々郷士も同じように炭まみれで、
船を動かすのは楽しいです。」と長次郎。
「ははは、郷士も士分もなかか。長州もそうぜよ。
これからの世の中は草莽崛起ぜよ。なぁ高杉さん。」と中岡。
そこへ新選組の御用改めの声、
山南さんを見つけ、声を掛け事なきを得る。
その後は、船の話と料理の話で盛り上がる。
高杉さんとは飲むのははじめてだが、土佐の古い友人の様だ。


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