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年末年始、妻の実家で過ごした。

妻の両親はコロナ以降芝犬を飼い始めたので、
俺の人生で初めての犬との触れ合い体験だった。

初めてわかったのだが、犬は怖い。
ずっと猫しか飼ったことがなかったので知らなかったのだが、犬は力が強い。
そして、牙が鋭い。

義父は落としたおもちゃを取ろうと手を伸ばして思い切り噛まれたらしく、到着初日の俺たちと子供たちに緊張した面持ちで「絶対に犬の前で落としたものを拾うな」と警告した。そんな緊張感の中暮らしているのか。

そんな緊張が伝わったのか、俺と犬の間には常に見えない壁が存在し、最後まで打ち解けることはなかった。
犬が人の心を読み取ったのか、俺が意識的に避けていたのか、その両方か。
いずれにせよ、俺と妻、二人の子供は無傷で帰宅することが出来たのだが、あれだけ深刻な表情で警告していた義父は、普通におもちゃを拾おうとして手を噛まれていた。
血こそ出なかったものの噛まれた部分は赤黒く変色してしまっており、心配する我々に気を使わせまいと「全然大丈夫」といいながら長時間水道で手を冷やしていた。

犬に対して勝手に「人間に100%忠誠、人間ラブ」と思い込んでいた俺にとっては、「犬も家族の一員」と言われることが納得できた数日間だった。犬はペットではなく、人格を持った一人の人間なのだ。

そう考えると、多少噛まれても引っ掻かれてもたいした傷にもならずに舐められがちな猫の、あの投げやりで、どうでもよさげな生き方と共存していた数年間が、俺には居心地の良いものであったことが、今はとても懐かしく思う。

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