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「わさび」が「わさびっちょ」になった理由 ~インコにおしゃべりを教えた方法~

我が家には「わさび」から「わさびっちょ」に改名したインコがいます。
「わさびっちょは~、みどり!」が決まり文句の、おしゃべりするワカケホンセイインコです。
2009年の春に街中で行き倒れていたのを保護し、飼い主を探すも見つからず、そのまま我が家の一員になりました。
(くわしくは過去記事「わさびっちょとの出会い」参照)

しかし、どうやっておしゃべりするようになったのか?
そして、名前がなぜ「わさび」から「わさびっちょ」になったのか?

そこには触れていなかったので、今回はその話をしたいと思います。

ワカケホンセイインコのヒナと暮らし始めた私。
実は、子供の頃からおしゃべりインコに強い憧れがありました。

さかのぼれば、物心ついた時から野鳥を目で追うほど鳥好きだった私。
いろんな生きものが好きでしたが、鳥には特別に惹かれるものがありました。
理由は…もはやよく覚えていません。
家の煙突の隙間にスズメが巣を作ってヒナの声が聞こえたのがワクワクしたからか、ピアノの先生の家に文鳥がいたからか、ご近所の人がおしゃべりする九官鳥を飼っていたからか…
小学生の時には、野鳥観察クラブに入って、双眼鏡を首から下げて山にも行きました。
北国の田舎でしたので、キツツキ・シジュウカラ・ヒバリなど様々な鳥に出会うことができました。
それだけならまだいいのですが、鳥好きが高じて、庭でハトに餌付けをして大量のハトを集め、家族が食べる分のお米までばらまいてしまい、こっぴどく怒られたこともありました。

そしてもちろん、触れ合えるコンパニオンバード(ペットになってくれる鳥さん)にも興味を持ち、おこづかいで飼育書を買って読み漁ったりしました。
何も飼っていないのに…(笑)
当時、手が届くとしたら隣町のペットショップで扱われている文鳥とセキセイインコに限られていました。
どちらも魅力的な鳥さんですが、小さなペットショップでセキセイのヒナたちが人に餌をせがむ姿がひどく可愛らしく、時間の許す限り釘づけになって見ていました。
ペットショップの店員さんともすっかり仲良くなり、親には「勉強もがんばるからインコを飼いたい!」と頼みこみ、ついに全身が黄色くて目が赤い「ルチノー」と呼ばれる色のセキセイインコをお迎えしました。

セキセイインコは長文を覚えるのが得意な傾向にあるそうで、桃太郎などの昔話をおしゃべりできる子も見かけます。
新しい言葉の覚えが早く、教えるつもりのなかったことまでしゃべる子もいるそうです。
一般的に、インコはメスよりオスの方がおしゃべりに対してやる気を見せる傾向にあります。
ものまねはオスの求愛行動であり、メスにモテるための有効な手段と言われています。

セキセイインコはヒナの時にオス・メスを見た目だけで見分けるのは難しいので、オスだったらおしゃべりを教えたい…けれど、可愛いからどちらでも構わないと思っていました。
そして、その子はすくすくと成長していき、ある日プリっと卵を産んだのでメスだったと分かりました。
その子はおしゃべりはしなかったものの、よく懐いて手乗りになってくれました。

それから2羽目、3羽目…と追加で違う毛色のセキセイインコお迎えして複数飼いをし、その中にはオスの子もいましたが、おしゃべりするようにはなりませんでした。
小学生・中学生の時は勉強や部活や受験で忙しくしていて、普段のお世話はできても、オスの子だけに根気強く時間をかけておしゃべりを教えることまではできませんでした。
また、多頭飼いだと鳥同士の仲間意識が強くなり、鳥語がメインになりがちになる、と当時の飼育書で読んだ覚えがあります。
インコは仲間との共通言語として、鳴き声を真似しあうことでコミュニケーションを取ります。
自然界では群れで暮らす鳥たちにとって、周りと合わせて団体行動をすることは命を守ることに直結します。
2羽以上の複数飼いで過ごさせる場合、1番の仲間は人間ではなく同じ姿形をした鳥同士だと認識されやすいのは想像にかたくありません。
鳥たちが仲むつまじく毛づくろいをし合う姿には強い絆を感じさせます。
人間のおしゃべりをまねる優先度は自然と下がっていくのでしょう。

そんなわけで、どの子もしゃべれるようにはなりませんでしたが、鳥語で楽しそうに鳴き交わす姿もそれはそれで微笑ましいものでした。
それぞれにかけがえのない個性がありました。
手にすっぽり収まって頭をグリグリこすりつけて甘えてくれる子。
夢中で遊んでいるうちにひっくり返ってしまう子。
独り言で悦にひたる、酔っぱらったおじさんみたいなユニークな子。
二羽でペアになって巣を作って卵を産み、新しい命が産まれる姿を見せてくれた子。
最初に飼った黄色の子は、私が18歳で家を出る直前までギリギリ踏ん張って長生きしてくれました。
たくさん泣いてから上京したのを覚えています。

いつかはおしゃべりインコを育ててみたいな…そんな思いを秘めたまま、気がつけば大人になっていました。

そんな折、おしゃべり上手と言われるワカケホンセイインコと思わぬ出会いを果たしたわけです。
オスかメスかは分からないけれど、今度こそおしゃべりインコを育てられるかもしれない。
子どもの頃のようなワクワクした気持ちが湧き上がり、胸が高鳴りました。
計画的にペットショップでお迎えしたわけではなく、仕事をしながら1羽をお世話するだけで精一杯だったこともあり、一対一でじっくり向き合い、おしゃべりを教えてみようと思ったのです。

前述の記事の通り、動物病院から退院した後は体調が安定してすっかり元気になりましたが、人間不信に陥っていました。
私はたくさんインコに話しかけ、なるべく同じ部屋で過ごし、仕草を真似して見せました。

信頼回復作戦が功を奏して警戒心が解けてからは、ペット用のおもちゃで一緒に遊んだりしてさらに親睦を深めました。

こうしたおもちゃの中には、握ると「プピプピ」と音が鳴る「鳴き笛」が入っているタイプのぬいぐるみがあります。
その高い音が気に入ったのか、インコがよく興味を示すので鳴らし続けました。
そんなある日、この「プピプピ」という音にそっくりな声で鳴き始めたのです。ほんの生後数か月でのことでした。
それはかなり忠実におもちゃの音を再現した声で、生まれ持った鳴き方ではなく、ものまねであることは明らかでした。
(この調子なら、おしゃべりもできるかもしれない!)と思った私は、まずは名前である「わさび」という言葉を教えてみました。
キョトンとこちらを見つめるインコに毎日10分ほど同じ言葉を言い聞かすこと2週間ほど…
かすかに「ははひ…はひひ…」と、どうやら私の声を真似ようとし始めたので、さらに根気強く教え続けること2週間ほど…

「わさび!わさび!」

めでたく名前をおしゃべりしてくれました!
やったー!子供のころから憧れていたおしゃべりインコの誕生です!
ところが、その後まもなく…

「わさびっちょ!わさびっちょ!」

と、語尾に「っちょ」をつけて名乗るようになったのです。
ああ、なんということでしょう…
どこから「っちょ」が来たのでしょう…
そんな言葉は一言も教えていないのに!
なぜか「わさびっちょ!わさびっちょ!ほほほほぉーっ、わさびっちょ!わーさびっちょ!わさびっちょぉぉぉー!」と連呼するインコ。
そのときの様子がこちら。


すっかり定着してしまったので、人間側があきらめて「じゃあいいよ…君の名前、わさびっちょで…」と、インコの自主性を重んじて正式に改名することにしたのでした。
これが、「わさび」から「わさびっちょ」に改名された経緯です。
もともと悩み抜いて名付けた「わさび」でしたが、自ら名乗り出したのですから、もう仕方ありません。

一度おしゃべりを覚えるとモチベーションが上がったようで、一般的なあいさつ「こんにちは」「おはよう」「こんばんは」も覚えてくれました。
しかし、しゃべるだけではなく、何かと体を動かす振り付けとセットになってしまうのです。

ワカケホンセイインコの特徴として、翼をワキワキと広げながら前のめりになったり、ドヤ顔でのけぞったりする求愛ダンス(通称:ワカケダンス)を踊るという本能があります。
ダンスの振り付けにも個体差があり個性さまざまですが、オスのほうが激しく踊る傾向にある気がします。
わさびっちょは、まるでダンスに歌詞をつけるような感じでおしゃべりし始めました。
前のめりで「こんにちは〜」と言ってから、仰け反って「おはよ!」と言ったり。
そしてまた前のめりで「わさびっちょ〜」と言ってから、仰け反って「わさびっちょ!」といったふうに。
そのときの様子がこちら。

ここで、私の中の遊び心がふつふつと湧いて、ひらめいてしまったのです。
もし、この振り付けに合わせて「わさびっちょは〜、みどり!」と教えたら、どうなるんだろう?
もしかしたら、そのまま覚えてくれるのだろうか?と。
自分の名前と色を、踊りながらドヤ顔で叫ぶインコ。
なんだか面白そう!と!

そんな遊び心が暴走してしまった私は、この作戦を実行に移しました。
わさびっちょのお気に入りの鳥型ぬいぐるみを模範にするように動かしながら「わさびっちょは〜、みどり!」と言い聞かせました。
わさびっちょは、私とぬいぐるみを交互に見て、新しい言葉に目をランランと輝かせて聞き入っていました。
そして、ある日ついに、わさびっちょの口から…

「わさびっちょは〜……みどりッ!」

ああ、なんということでしょう!!
私の思い描いた「自分の名前と色を、踊りながらドヤ顔で叫ぶインコ」の誕生です!!
しかも、求愛ダンスの最後の極め付けの決めゼリフとして、見事採用してもらえたのです!!
その様子がこちら。

それからは、もうそれ以上教えなくても自発的に「わさびっちょは〜、みどり!」がすっかり定着し、求愛ダンスのたびに大きな声で言うようになりました。
このおしゃべりは、わさびっちょのオスとしての自信と、アイデンティティの象徴になったのでした。

まあ…意味は理解していないでしょうけど…!

#わさびっちょ #インコ #鳥 #我が家のペット自慢

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