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わさびっちょとの出会い①

わさびっちょ11周年を迎えてみて、嬉しいとともに、思ったことがあるんです。
一緒に過ごして年月が経つほど、出会った時の新鮮な気持ちや、あったはずのエピソードをつい忘れがちになってしまう…
人間同士だってそんなこと、ありますよね。
ましてや、鳥とは「一緒にお茶しながら思い出話をする」なんてできませんから、私が忘れてしまえば全てが薄らいでしまう…
そう思うと、今一度ふりかえって記録したくなり、noteを使って書くことにしました。
行き倒れていた謎のインコ、わさびっちょを保護した時のことを。

2009年6月2日の夜。仕事が一段落して退勤時間が近づいてきたころ、職場の近所にあった知り合いのおもちゃ屋さんから突然の連絡がありました。
「迷子のインコがお店に入ってきてしまった!
どうしたらいいかよく分からないから、鳥を飼ったことがある人に助けてもらいたくて…」

そんな切実なSOSでした。

仕事を終えてお店に駆けつけ、インコが保護されているダンボール箱を開けると…

予想より大きい鳥! 
そして、全身が…みどり!

もっとポピュラーなインコを想像していたら、そこにいたのは正体不明の中型インコでした。
顔はあどけなく、まだヒナの様子なのに…中型のオカメインコよりさらに大きい!
昔飼っていたセキセイインコは本当に「小」鳥だったんだなぁとギャップに驚きました。

さいわい目立ったケガはありませんでしたが、ふっくら羽を膨らませて微動だにせず、一言も鳴かず、ダンボール箱の中でちょこんと座っていました。
水は少しは飲んだようですが、お店のご主人が急いで買ってきた小鳥用の餌には全く口をつけないといった様子でした。

インコの体には、いつでもサッと身軽に飛ぶためのさまざまな仕組みがあります。
食べたものは、体が重くならないようにお腹の中に溜め込んでおかずにどんどん排出されます。
スタミナの元となる脂肪はありますが、やはり重さがネックになるのであまり蓄えられません。
平均体温は40℃と高く、エネルギー補給のために餌をこまめに食べ続ける必要があります。
つまり…

短い絶食と寒さでも急速に体力を消耗してしまい、命の危険につながるのです。

ほわほわ膨らんでおとなしくしているように見えても、それは寒気がしていて、少しでも熱が逃げないように耐えているから。
見ず知らずの人に触られても特に反応しないのはそんな気力も残っていないから。
鳥は天敵に目をつけられないよう、体力の限界ギリギリまで弱みを見せずに平気を装う生き物と言われています。

一刻を争うかもしれない、と思いました。
そんな焦りの中で思い出しました。
私は幼い頃から生き物全般が好きで、特に鳥類には憧れがありました。
通っていた幼稚園でたくさんのセキセイインコが飼われていた影響が大きかったと思います。登園するたびワクワクしてインコたちを眺めていたものでしたが、ある日、その中の1羽が外へ飛び出して逃げてしまったのです。
いつも穏やかな先生が血相を変えて虫あみを持って追いかけていったのを見て、飼い鳥が迷子になってしまうというのは一大事なんだ…と怖くなりました。
小学生に上がってからは親に何度もお願いして本当にセキセイインコを飼うことができ、幸せだったのですが、頻繁に同じような「夢」を見るようになったのです。
夢の中で私は迷子の鳥と出会ってドキドキするのですが、お世話をしてもたいてい良い展開にはならず…そんな半分嬉しくて半分悲しい気持ちになる内容でした。
鳥が好きな気持ちと飼育失敗への恐れが混ざって無意識に刻み込まれてしまったのだと思います。

しかし今、迷子の鳥との出会いは現実になりました。ベストを尽くさねばなりません。
もう夜遅くて動物病院も開いておらず、ここは私が引き取ることにしました。
ダンボール箱は軽かったですが、命の重さを思うと腕がこわばりました。

まず鳥を保護したら最初にやりたいことが「保温」です。
お湯を入れたペットボトルにタオルを巻いて即席の湯たんぽにすることもできますが、やはり適温を保てるヒーターが理想です。
ありがたいことにその夜は暖かく、帰り道の途中には遅くまで営業している百貨量販店がありました。神頼みで覗いてみると、ペット用ヒーターや鳥かご、インコの餌などの飼育グッズがあるではありませんか!
即購入です。
もう急な出費なんてかまわない!!

家に帰ってそっと箱を開けるとインコは変わらずキョトンとしていました。
電気ヒーターが適温になったところでインコを手ですくい上げました。
インコはなんの抵抗もせず、軽くて、温かくて、ふるふると震えていました。

保温ができたところで、ごはんをあげようと、お湯でふやかしたヒナ鳥用の餌を用意しました。
しかしスプーンで差し出しても、ちょっと迷惑そうな表情をするだけ。くちばしが汚れるばかりでほとんど飲みこんでくれません。

そこで次の手段として「ぬるい砂糖水」を作りました。水分補給&すぐにエネルギーになる糖で、体力温存するというわけです。
試すと、くちばしの端からスプーンで流し込めば飲んでくれたので、今晩は保温と砂糖水で乗り切ることにしました。
保温効率アップとリラックスのため、大きなバスタオルを鳥かごに被せ、暗すぎてパニックにならないように薄暗い程度の照明にして、その日は就寝です。

私も寝なきゃいけないとは思いつつ、もう気になって、気になって。
同じ部屋に布団を敷いて静かに横になりました。
明日の朝になっても、ちゃんと生きていて…
祈るような気持ちで、あまり熟睡できずに朝を迎えました。

(つづく)

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