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【東京〜弘前】夜行バス“鬼パン”に乗ってみた 前編


旅の始まりは、突然の訃報だった。

大学の友人のご家族が亡くなったのだ。
友人の実家は秋田県と青森県の境目にあるのだが、学生時代に何度か押しかけさせていただいた。
当時は今以上にアッパッパーな私であったがご家族は温かく、まさに温かく迎えてくださり、私のためにきりたんぽを作ってくれたのが良い思い出であった。

悲しい話であり彼のプライベートに関わる話であるため敢えて詳細は割愛するが、とにかく世話になったご家族に不幸が起きてしまったのだ。
これは人として行かねばならぬ事であり、近頃の結婚式ラッシュでスーパー貧乏の私ではあるが、一路東北へ向かうこととした。

今回は怒金欠and時間の関係上、行きは夜行バスで向かう事とした。しかし3列バスなどは全て埋まっており、全く予約が取れなかった。
困り果てていた私が最後の手段として見つけたのが、弘南交通が運用する東京〜青森便、パンダ号、通称”鬼パン“である。
結局これだけ空席があり、背に腹は変えられず予約する事とした。
この時完全にテンパってた事もあり気付かなかったがどうやら鬼パンにはトイレがないらしく、最近抗生物質で腹をやられ気味な私にとってはひどく不安な夜となりそうであった。

いつも通り日中の勤めを果たし、帰路につく。
多少出発にバタつきはしたものの愛する妻と暫し別れのハグも済ませ、上野駅に向かった。

今回銀座線を使ってバス停まで向かったが、どうやら4番出口が最もバス停に近い様だった。
出口を出たすぐの場所にはセブンイレブンがあり、バス停の近くにもファミリーマートがあった。立地については好印象といえる。

鬼パンは写真の様なバス停から発車する。
私が到着した20時には既に数名が待機しており、これから戦を生き抜こうという強者達の準備の周到さを感じさせた。

汚ない上野の町に愛着を感じる


20時15分頃、ついに鬼パンが到着した。
カラフルな見た目だが、ビビリな私にとっては名作、バンドオブブラザーズの空挺輸送機さながらの地獄特急にみえる。

おしどりの様なカラーの鬼パン号



乗車した際の感想としては、いたって普通のバスである。というよりも普通すぎる。
というのも特殊な設備は充電プラグだけで他は素のまま。そして座席の幅が非常に狭いのだ。まるで隣の人と恋が起きそうなほど狭く(同性しか隣にはこない)、肘掛けもない。おそらく本来はもっと近距離用のバスなのだろう。

今回私のバディとなった隣の兄ちゃんは更に遠く、フェリーを経由して実家の函館まで行く様であった。鬼パンはフェリーチケットのセットも売っており、それが破格に安いそうだ。しかし13時間以上かかるルートであり中々の強者である。

さてこの記事を書いている21時現在であるが、車内は既に真っ暗となっている。発車後すぐに消灯となった。

外から漏れる光とバスが道路の接合部を超える衝撃が、高射砲の積乱雲に輸送機が飛び込むシーンをやはり思い出させる。
久しぶりのハードな旅に今夜は興奮して眠れなそうだ。

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