朗読台本【アンドロイドを愛した人間の話】



こんにちは。
朗読用童話
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【アンドロイドを愛した人間の話】

涙があふれてくる
なんでだろう?
カノジョはただの機械じゃないか。
壊れたら新しいのを買えばいいだけ。

そう思っていたのに。


インターホンの音がなる。
この間 頼んだモノが届いたんだろうなと思いつつ
玄関へ向かった。

受け取ると思った通りのモノだった。
心癒しアンドロイド【ココア】
標準服はメイド服
ガサガサベリベリと乱暴に開けてしまった。
説明書をさらっと読んだ後
起動させてみると第一声は

「私の寝床が…」だった。

どうやら
入っていた箱は綺麗に開けなくてはいけなかったらしい。
それが充電器 兼 寝床だったそうだ。
箱にでかでかと書いていてくれたらよきものをと少しイラっとしたが
壊れたわけではない。
よしとしよう。

ココアが
「大丈夫です、こういう時はご主人様と眠ることで回復できるようにプログラムされております。ご迷惑おかけしてしまいますがよろしくお願いします。」

と、にこにこしている。
その笑顔からは癒しの波動が出ていたのか
一瞬で気持ちが穏やかになる。

そんな出会いから9年
自分に大切な人が出来たりはもちろんなく
見た目が変わっていくことのないココアとふたり
平和な日々を送っていた。
思い出だって沢山ある。

ところが今日、朝目が覚めると
ココアは動かなくなっていた。
とんでもない見た目と味の朝ごはんがテーブルに置かれ掃除機を持ったままの姿勢でフリーズ。
自分以外の時間が止まったのか?
そう思うほどに
想像してきていなかった。

ココアが死んでしまうなんて。

最初の箱のことがあってから
ココアに対する事柄は最新の注意で行ってきていた。
説明書には寿命は30年と書いてあった。
ココアは三分の一も生きていない。
涙があふれる。

ココア ココア ココア ココア ココア

呼んでも返事をしない。

あぁそうだ

僕らはもう家族だったんだ。
感情を持たないはずのココアは
暇な時間にはよく本を読んでいた。
人の感情についての本を特に楽しそうに。
学習機能に優れすぎていたんだろうか
一年前くらいから
感情が芽生えているように見えた。

一緒の布団を恥ずかしがり
キングサイズのベッドを買わされた。
端と端ならいいらしい。
テレビで好きな芸能人もできたり
なにより私を家族と呼んだ。


天涯孤独の私にはただ一人の家族。
アンドロイドを火葬してくれるところはない。
回収されていくだけだ。


「…解体しよう そして実家のお墓に入れよう。自分もいずれはそこに行くんだ。待っていてもらおう。」



そうして
なんとか気持ちに整理をつけ
お墓にココアをいれたあと

出会いは突然だった。

ココアを小さくしたようなアンドロイドが発売されるとニュースが流れてきた。
買う気なんてなかった。

でも 一目だけでも。

「パパ!」

そう呼ばれた気がした。
自分とココアはそういう関係はなかった。
あったとしても生まれないし
まだ箱の中、話すわけもない…



後日

あの時と同じようにインターホンが鳴る。

今度はきちんと箱をあけた。

名前は親であるあなたがつけてください。


(ココア、僕たちの娘はなんて名前にしようか?)


空を見上げて君に話しかける。

アンドロイドを愛した人間の話。


end

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