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逃げ続けた大学最後の半年

「ご清聴ありがとうございました。」
卒論を書いた学生達の発表が終わる。
鳴り止まない拍手。
その拍手を浴びる発表者を僕はただ見つめていた。
思えば逃げ続けた半年であった。

卒論と人間関係が辛くてゼミを辞めた。
市役所と教員とのやり取りがめんどくさくて有志のまちづくりプロジェクトを辞めた。
こんな感じで怠惰になり腐ったラストセメスターであった。

それまでは逃げないことが取り柄だったのに。

野球部はスタメン落ち、後輩より低い立場でも最後まで続けた。
水泳部は楽しいことこそ沢山あったけど、たくさんいじられたし、ぶっちゃけ辞めたくなったこともあった。でもずっと最後まで居続けた。
受験勉強からも逃げずにまあまあの大学に進むこともできた。
ゼミ選択も楽な方に流されず、厳しいゼミに入り、色んな経験ができた。
就活もボロボロになりながらそこそこ納得のいくところに決まった。

このように最後までやり抜く貫くが僕の強みであるのだ。


え?論文発表者でもない僕に質問がある?
どうぞ。

「ご発表ありがとうございます。素人質問で恐縮ですが、今までたくさん行動されてらっしゃるけど、それらの行動は本当に逃げじゃないと言えるんですか?」

おお、そこ聞くか。うん。

「ご質問ありがとうございます。
先ほど上に挙げた行動なんですが、実は壮大な逃げの連続なのです。」


何を隠そう子供の頃から僕は女性からの承認に囚われて生きている。(※1)
これは僕のTwitterを見てくれれば1発でわかるのだが、まぁそういう感じでしょーもないことを目指してして生きているのである。(※2)
で、上にあげた行動、実は動機として異性からの承認が主なのだ。

野球部入ったら無条件にちやほやされる、
文化部よりかは運動部の方がモテる、
いい大学入ればすげーってなる、
いいゼミ入って何かデカいこと(あえて抽象的に言う)すれば賞賛の嵐、
いい就職できて年収1本超えたら目の色変えて接してくれる、

そんなことを本気で信じ込んでいたんで、自分の行動指針はモテるために同世代の中で立身出世をめちゃ頑張ろう!ってものだった。
しっかり結果も我ながら残せたと思う。

ビジコンでは賞をとり、
ゼミでは苦しい取材をやり抜き、マップとして結実した。
有志のまちづくりもなんとか一つ形にしたものを提案できた。

でもこれらの活動は回り道(やったこと、そのプロセスは尊いが)でしかない。普通ならモテたい(彼女を作りたい)なら相手である女性のことをよく知る、長く付き合うなら女性について向き合うってのが、当たり前である。

巷ではなにかに熱中していたらそのうち彼女はできるなんて言うがその言説、ちゃんちゃらおかしくない?だって受験勉強だって、
基礎的な知識固め→過去問演習の流れが当たり前である。
部活だけしてても勝手に学力は上がらず志望校には受からないのだ。

(受験で考えると息抜きに学校行事と部活を使える人はめちゃくちゃ強いし、恋愛においても、そればっかりに固執して必死感が出るのもよろしくないが)

こういうふうに考えてみると、僕の人生は大学3年半どころか、これまでの20数年ずっと女修行から逃げ、自分のしょーもない夢を実現させるための核の部分に真正面から向き合っていなかったのだ。立身出世と引き換えに。

でもゼミを辞めてから今日までの半年は違う。
アプリを始め、授業でいろんな人に話しかけてみることを始め、
推し活を通じて友達作りを頑張り、街中で人に話しかけることも始めた。

一見組織から抜けて逃げの選択をとっていると思われるかもしれないが、みんなが卒論書いている中、僕は僕で初めて女性、いや人間とガチで向き合ってみたのである。まあそこで得られた示唆はこの記事を見てくれた誰かと会うことになったら喋ろうと思うが、、、

思えばいつかは忘れたが、Twitterにもここで勉強頑張ったら、、、的な一コマを見たことあるが、これらの行動は人としての価値を高めるかもしれないが、僕にとっては問題解決の先送りでしかない。

僕は今年から社会人になる。社会人になると立場上えげつない遊び方はできなくなるので、残りのモラトリアムくらいはせめて真面目に女修行に向き合い、清濁合わせ飲んで、恋愛氷河期を乗り越える鍵を得られたらなと思っている。そして社会人は再び立身出世を目指し、バリバリ稼いでいきたい。


「だからこそいろんな迷信でしたり、おまじないに振り回されてことの本質に向き合わなかったこの20年を敢えて”逃げ”と本発表では定義しています。」

「ありがとうございました。」

どうやら卒論発表会でも寝てしまったようで、夢の中で質疑応答していたみたいだ。


「るみなさん!お久しぶりです!」
「おお!後輩ちゃんじゃーん!就活始まって論文聞いて大変ねぇー」
「論文書くかぶっちゃけ迷ってます!笑」

「るみなじゃーん!今日聴きに来てくれたの!?」
「そだよ!てか旅行メンバーでまた遊び行こ!」
「えマジ!?楽しみにしてるー!」

休憩時間になり、知り合いがたくさん話しかけてくれた。
僕は卒論こそ書かなかったものの、ゼミ、サークル、授業、推し活など、4年間でたくさんの友人を作ることができた。これは高校まで人見知りを極めていた僕からしたらかなーりの進歩だったと思える。この4年間で積み上げてきた深浅様々な関係性という卒業制作(めちゃ言い方キモいな)を胸にこの大学を旅立とうと思う。

ご清聴ありがとうございました。


・参考文献
 (※1)Lumina、2023、「夢について」
 (※2)Twitterの鍵垢


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