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新型コロナ禍と若者の人権をめぐる国連人権理事会決議(2021年10月)

 取り上げるのが遅くなりましたが、国連人権理事会は、2021年10月8日、「COVID-19パンデミックが若者に及ぼす人権関連の影響」Human rights implications of the COVID-19 pandemic on young people)に関する決議(A/HRC/RES/48/12)を無投票で採択しました。

 この決議は、「若者は、そもそもCOVID-19パンデミックの以前から、若いという理由で権利行使における困難を経験しており、かつ、若者の人権の保護および充足には間隙が存在する」などの認識を踏まえ、次のことを表明したものです(要旨)。若者のなかでも、女児・若年女性の状況にとくに注意が払われています。

1~2.(略;関連の取り組みを歓迎する内容)

3.COVID-19パンデミックとの闘いに際してすべての人権が尊重・保護・充足されるようにすることなどを各国に対して求める。

4.若者・青少年(女児を含む)にとって教育・職業訓練が基本的重要性を有することを強調する。

5.女性・女児に対する搾取、暴力および虐待の危険性を高めるあらゆる形態の差別に対処する必要性に加え、女性・女子に対する差別や暴力を引き起こしまたは固定化する、障害・ジェンダー・人種・排外主義に基づくステレオタイプ、能力主義、スティグマ、否定的な社会規範、態度ならびに行動を防止・解消するための措置を実施する必要性も強調する。

6.女児・若年女性が直面している課題、女児・若年女性への差別や暴力を固定化するジェンダーステレオタイプ、社会的発展を阻害する男女の役割についてのステレオタイプに対処するよう、各国に促す。

7.すでに存在する若者(とくに若年女性・女児)の課題がCOVID-19パンデミックおよびその拡散防止措置によって悪化していること、関連の制度的プロセスおよび政策立案ならびに政治的諸機関(議会・政党・行政機関など)への若者の参加水準が他の年齢層に比べて低いことなどを認識する。同時に、若者に発言権を与えるうえで若者主導の団体が果たしている重要な役割も認識する。

8.COVID-19パンデミックとの闘いを前進させるうえで若者が有している可能性を認識・支援するとともに、若者団体その他の関係者との包摂的で参加型の協議を通じて一貫した若者関連政策を実施するよう、すべての国に奨励する。

9.パンデミックが若者(とくに女児)に与えてきた/今後与えるであろう具体的影響についての理解を深めるために若者と安全かつ効果的に連携するよう、すべての国に対して求める。その際、COVID-19パンデミック対策において、若者による人権の享受を尊重するやり方がとられ、かつ若者の特有のニーズが包摂されることを確保するものとする。

10.若者による人権の享受に関連する問題について国連人権機構を通じて対処するとともに、パンデミック中およびパンデミック後に若者が人権を行使できるようにするために発展させてきたベストプラクティスを享有するよう、各国に対して促す。

11.パンデミックの影響を緩和するための解決策の模索などに関して、ユース担当国連事務総長特使と広く連携するよう、各国、国連機関(とくに人権理事会の諸機構)および人権高等弁務官事務所に奨励する。

12.今回の世界的パンデミックが若者との関係で人権に及ぼしている影響を緩和するための方策について詳細な研究を実施し、人権理事会第55会期に提出するよう、人権高等弁務官に要請する。

13.引き続きこの問題について検討していくことを決定する。

 この問題については、たとえば昨年8月の〈国際若者デー:新型コロナが世界の若者に及ぼしている影響〉も参照してください。また、若者政策のあり方を考えるための材料として、〈カナダ政府が初の若者白書を発表――「若者のために、若者とともに、若者によって」〉なども参照。

【追記】(12月18日)ユニセフ(日本ユニセフ協会)〈減少する若者の雇用 雇用市場に必要なスキルを持てず スキルギャップと失業問題への対応が必要に〉(2021年12月10日付)も参照。


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