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国際若者デー:新型コロナが世界の若者に及ぼしている影響

 昨日(8月12日)の国際若者デー(International Youth Day/国際青少年デー)にあたり、ILO(国際労働機関)やOHCHR(国連人権高等弁務官事務所)などが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界の若者に及ぼしている影響についての報告書を発表しました。日本でも複数のメディアが報じています。

1)NHK:若者の65%が学習機会減少 新型コロナ感染拡大で ILO発表
2)日経新聞:65%の若者の学習量が減少、ILOが報告
3)朝日新聞(ロイター):ILO、新型コロナによる若者の失業や学習機会減少を懸念

 前掲国連機関がNGOや企業と提携して取り組んでいるプロジェクト「若者に働きがいのある人間らしい仕事を」(Decent Jobs for Youth)の一環として実施された国際調査の結果をとりまとめたものです(この調査については以前Facebookで簡単に紹介しました)。

『若者とCOVID-19:仕事・教育・権利・精神的ウェルビーイングへの影響』Youth and COVID-19: impacts on jobs, education, rights and mental well-being)と題された報告書は、以下のOHCHRのサイトからもPDFでダウンロードできます(要約版もあります)。

4)OHCHR - COVID-19 and young people: urgent action needed to stem 'severe and long-lasting' impacts

 OHCHRが発表したこのリリースでは、報道で強調されている学習や仕事への影響に加え、COVID-19パンデミックによって若者の他のさまざまな権利にも影響が生じていることを強調しています。
・若者主導のデモが突然の中止を余儀なくされたために公的事柄または平和的抗議に参加する権利に相当の影響が生じていると、回答者の3分の1が指摘。
・パンデミックのために働けなくなった若者のほぼ3分の1が、居住の権利に影響が生じたと回答。
・回答者の27%が宗教・信仰の自由を実践する権利への影響を報告。
・他のどの権利よりも顕著な影響が報告されたのは余暇に対する権利で、回答者の68%が、レクリエーション活動(友達と会ったりスポーツや文化的関心を追求したりすることを含む)を「相当に制限」されたと報告。
・回答者の約4人に1人(24%)が、情報にアクセスする権利にも相当の影響があったと報告。一方、誤った情報の拡散に対抗するため、多くの若者がソーシャルメディア等で創造性を発揮してきた。
・このような大きな影響が生じているにもかかわらず若者たちは積極的に社会参加しており、31%がボランティア活動に従事し、27%が寄付を行なった。

 ILOによるリリースはILO駐日事務所により日本語訳(抄訳)されています。若者たちの声に耳を傾けなければならないという指摘は、多くの国連機関等が共通に指摘しているところです(以下、太字は引用者)。

 一方で調査からは、若者の4人に1人がウイルスの流行期間中に何らかのボランティア活動に従事したといったように、このように極度の状況にもかかわらず、若者が自らのエネルギーを用いて動員を図り、危機との戦いにおいて声を上げていることが示されています。
 新型コロナウイルス危機に対する、より包摂的な対応のためには、若者の声に耳を傾ける状況の確保が決定的に重要です。若者が自らのニーズや考えを表明できるよう意思決定の場における発言権を与えることは、政策や事業計画の効力を高め、若者に対策の実施に参加する機会を与えることにつながります。報告書はまた、失職者や労働時間の減少を経験している若者を再び労働市場に組み込むための措置や若者に失業保険給付の機会を確保すること、さらに心理社会的支援からスポーツ活動までに至る若者の精神衛生を向上させる措置など、危機が若者世代全体の雇用展望に永続的な傷跡を残すのを防ぐための、対象を定めた大規模な緊急政策対応を提唱しています。
(ILO:青少年の7割超が新型コロナウイルスによって教育を中断

 今年の国際若者デーのテーマは「グローバルな行動のための若者の積極的参加」(Youth Engagement for Global Action)でした。国連事務総長や国連総会議長も、たとえば世界規模の環境問題の解決を目指して若者たちが果たしてきた役割を称賛しています(UN News: UN praises resilience and vision of younger generation, marking International Youth Day)。

 一方で、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんがFacebookで

若者のコミットメントは本当にすばらしい。でも、間違えないでください――私たちは「主導」したいなどとは思っていないのです。
それをしなければならないのは会議室にいる大人です。

 と述べているように、問題解決の責任はあくまで大人世代にあることを忘れてはならないとも思います。


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