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イングランド子どもコミッショナー、オンラインのセクシュアルハラスメントについて子どもと話すための親向けガイドを発表

 イングランド(英国)の子どもコミッショナーが、オンラインで子どもが受ける可能性のあるセクシュアルハラスメントについて子どもと話すためのガイドを発表しました(2021年12月16日)。

★ Talking to your child about online sexual harassment: A guide for parents
https://www.childrenscommissioner.gov.uk/report/talking-to-your-child-about-online-sexual-harassment-a-guide-for-parents/

『親に知っておいてほしかったと思うこと――オンラインのセクシュアルハラスメントについて子どもと話すことに関する若者たちのアドバイス』と題されたこのガイド(PDF)は、16~21歳の若者たち(LGBTQ+の若者を含む)にフォーカスグループとして集まってもらい、その声を踏まえて作成されたものです。子ども・若者の声を踏まえてこのようなガイドを作成するというアプローチは、日本でもおおいに参考になると思います。

 ガイドでは、このような問題について子どもが親に話しにくいと考える理由(きまりが悪い/親はちゃんとわかっていない/話したらどうなるかが怖い)と、子どもがオンラインで直面する主要な問題(ポルノ/裸の画像のシェア/性的いじめ/写真の修正とボディイメージ/同調圧力)について取り上げ、それぞれに関する若者からのアドバイスが掲載されています。主として同世代間で生じる問題に焦点が当てられているため、グルーミング(性的接触を目的として子どもとの関係を確立しようとする行為)を含む性的虐待・搾取についてはあまり触れられていません。

 若者たちからのアドバイスを要約したポスター(PDF)も作成されています。

 子どもコミッショナーのレイチェル・デ・スーザ(Dame Rachel de Souza)さんは、ガイドのまえがきで次のようにまとめています(太字は原文ママ)。

 私たちのフォーカスグループから汲み取っていただけるであろう全般的メッセージは、早くから話す、何回も話すというものです。どのぐらい早くから親が会話を始めなければいけないと若者たちが感じているかを知って、驚かれるかもしれません。けれども子どもたちは年齢にふさわしい会話を望んでいるのであり、そのあり方は、子どもたちの成熟の度が増していくのにあわせて、時間とともに変わっていくものなのです。
 私から親・養育者のみなさんへのアドバイスは、危機が起きる前に文化をつくっておきましょうというものです。子どもたちは、こういう問題について話すための安全な、決めつけられることのない(judgment-free)空間をママやパパにつくってほしいと言っています。問題にぶつかる前にそうしておくことのほうが、問題に対処している最中にそういう雰囲気をつくろうと試みるよりもよいことです。

 以下、アドバイスの要約版を訳出しておきます。

1.携帯電話を与えたりソーシャルメディアのアカウントを作成したりする前に、こういう問題について子どもたちに話し始めましょう。早すぎると感じられるかもしれませんが、年齢にふさわしいやり方でやることができます。受け身でいるより、先手を打ったほうがよいのです。
 危機が起きるまで待たないこと。

2.会話を止めないこと。子どもを支えられるよう、子どもに合った話し方をしていきましょう。
 1回言えば十分だと思わないこと。

3.重く考えすぎず、日常的な機会を見つけてこういう問題について子どもと話しましょう――たとえばどこかを歩いたり、車で移動したりしているときに。
「おおげさな話」で子どもを怖がらせないこと。

4.まず子どもの気持ちに焦点を当てて、オンラインで見た可能性があるものについて理解しようとしましょう。子どもの話に耳を傾け、有害なコンテンツにアクセスしたかどうかがわかれば、支えるための手助けをすることができます。
 話を聴き、理解しないで罰しないようにすること。

5.子どもが利用しているテクノロジーに興味を持ち続け、プラットフォーム、アプリ、トレンドに関する最新動向をフォローしておきましょう。
 こういう問題が存在しないようなふりをしないこと。

6.超えてはならない境界を決めておくこと。子どもが有害なコンテンツにさらされることを制限するため、フィルタリングのためのツールを利用しましょう。ルールと境界については子どもといっしょに決め、子どもが意見を言えるようにします。モニタリングやフィルタリングのためにどのようなツールをなぜ利用しているか、説明しましょう。
 モニタリングやフィルタリングのためのツールを利用しないまま、子どもをオンラインで目の届かない状態にしてしまわないこと。公園や路上で子どもをひとりにすることはないでしょう――オンラインでも同じ水準の保護を適用すること。

 なお、〈子どもの性的搾取・性的虐待に反対する欧州デー:子どもたちによるリスキーな行動の防止〉(2020年11月18日投稿)、〈欧州評議会の専門家グループ、女性に対するオンラインの暴力についての一般的勧告を採択〉(2021年11月25日投稿)なども参照。


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