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子どもの性的搾取・性的虐待に反対する欧州デー:子どもたちによるリスキーな行動の防止

 本日(11月18日)は欧州評議会の「子どもの性的搾取・性的虐待に反対する欧州デー」(European Day against sexual exploitation and sexual abuse of children)です。今年のテーマは子どもたちによるリスキーな行動の防止:子どもの性的な自撮り画像/動画で、欧州評議会加盟国が行なっている意識啓発の取り組みもPDFにまとめられています。

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 欧州評議会・性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する条約(2007年)では、性的同意年齢に達した子どもが、相互の同意に基づき、かつ「自分たち自身の私的利用のみを目的として」製造・所持する性的画像は「児童ポルノ」に該当しないと定めていますが(第20条3項)、リスクをともなう行為であることは間違いありませんので、このような意識啓発の取り組みも重要です。

 国連・子どもの権利委員会が定めた子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の実施に関するガイドライン(2019年)では、この問題について次のように言及されています(太字は引用者)。

42.委員会は、子どもが自ら作成した性的コンテンツを携帯電話経由で他の者に送る「セクスティング」に対応する必要があることに、締約国の注意を喚起する。セクスティングは若者同士のプレッシャーの産物であることが多いように思われ、ティーンエイジャーは、ある程度まで、セクスティングは「当たり前」であるとますます考えるようになっている。このような行為そのものは、それ自体で常に違法または不法となるわけではないものの、そこには多くの危険性がともなう。子どもの性的画像には、子ども本人の意思を超えてまたは意思に反してオンラインまたはオフラインで容易に拡散される可能性、削除がきわめて困難となる可能性ならびにいじめの文脈および性的強要の目的で利用される可能性があり、これは子どもに対して深刻なかつトラウマ性の影響(自殺を含む)を及ぼしかねない。この複雑な問題に対しては慎重な注意を向けることが必要であり、委員会は、締約国に対し、子どもを保護する明確な法的枠組みを確立するとともに、防止のための努力を通じ、他人および自分自身の画像を拡散することの重大性について子どもが教育されかつ認識することを確保するよう、奨励する
67.もっぱら自分自身のために、あるいはボーイフレンドもしくはガールフレンドまたは(しばしば「セクスティング」を通じて)より幅広い同世代の集団とシェアするために、自分の性的部位の表現などの性的画像を製造する子どもが増えている。選択議定書が「児童ポルノ」としているもの(これは犯罪を構成する)と、子どもが自分自身を表現した自撮りによる性的なコンテンツまたは表現物を製造する行為は、区別されなければならない。委員会は、このような表現物が自撮りで製造されたものであることにより、子どもが被害者として扱われるのではなく責任を有するとみなされるおそれが高まりうることを懸念するとともに、子どもは自分自身の画像を製造したことについて刑事責任を問われるべきではないことを強調する。このような画像が、子ども本人の意思に反し、強要、恐喝またはその他の形態の不当な圧力の結果として製造されたときは、子どもにそのようなコンテンツを製造させた者が裁判にかけられるべきである。その後、このような画像が子どもの性的虐待表現物として配布され、頒布され、輸入され、輸出され、提供されまたは販売されたときは、これらの行為について責任を有する者の刑事責任も問われるべきである。

 欧州評議会人権コミッショナーのドゥーニャ・ミヤトビッチ(Dunja Mijatović)氏は、今回の欧州デーにあたって発表した声明(11月12日付)で、こうした問題に対応するためにも包括的セクシュアリティ教育(comprehensive sexuality education)の推進が喫緊の課題であることを強調しました。ミヤトビッチ氏は、欧州でもいくつかの国でこのような教育に対するバックラッシュが起きていることに懸念を表明するとともに、包括的セクシュアリティ教育の重要性に対する注意を引き続き喚起していくと決意を新たにしています。日本でもこのような教育をしっかり推進していく必要があります。


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