資料:国・地方レベルの公的意思決定プロセスへの子ども参加のあり方に関する欧州評議会のガイド
現在、こども家庭庁が「こども・若者の意見の政策反映に向けたガイドライン(案)~こども・若者の声を聴く取組のはじめ方~」に関するパブリックコメントを実施中です(3月6日(水)午後5時まで)。Facebookではとりいそぎ次のようにコメントしておきました。
提出期限までにあらためて検討して意見を送りたいと思いますが、この機会に、そのうち取り上げようと思っていた欧州評議会の資料を紹介しておきます。以前の投稿〈ヨーロッパ:子ども参加推進のためのオンライン・プラットフォーム〉で紹介した Child Participation for Europe (CP4E) に掲載されているものです。
★ Let's decide together!: Guide to meaningful and effective engagement of children in decision-making processes
https://rm.coe.int/let-s-decide-together-guide-to-meaningful-and-effective-engagement-of-/1680abb33e
「いっしょに決めよう!:意思決定プロセスへの子どもの意味のある効果的な関与の手引」と題するこのガイド(2023年6月)は、国・地方レベルの公的意思決定プロセスへの子ども参加のあり方について解説したものです。次の6章から構成されています。
第1章:国・地方の公的機関における意思決定プロセスへの、意味のある、包摂的で安全な子ども参加の前提
-支援的な政策と法的枠組み
-関連する研修・職能開発の機会
-子ども人口の多様性に関する認識
-専用の財源
-支援的なセーフガーディング(安全確保)の枠組み
第2章:子どもが意思決定に関与し得る分野・問題・活動
第3章:意思決定プロセスに子どもの関与を得るための計画活動
第4章:意思決定プロセスに子どもの関与を得るための実施活動
第5章:フィードバックの提供および意思決定プロセスへの子ども参加の評価
第6章:意思決定プロセスへの子ども参加におけるセーフガーディング
巻末には付録として自己評価のためのチェックリストも掲載されています。
このガイドで指摘されている重要な内容の多くは「こども・若者の意見の政策反映に向けたガイドライン(案)」でも踏まえられていますので、とりたてて詳しく説明すべき点もないのですが、フィードバックのあり方については、アイルランドの「意思決定への子ども・若者参加に関する国家枠組み」でも採用されている“4つのF”――全面的(Full)/子どもにやさしい(Friendly)/速やか(Fast)/フォローアップ(Followed-up)――の考え方に加えて次のような留意点が詳しく述べられていますので(pp.25-26;太字は原文ママ)、参考になるかもしれません。大人から子どもへのフィードバックだけではなく、子どもたちからのフィードバックにも触れられている点は大切だと思います(これは子ども参加の評価とも関連します)。
ガイドの作成に協力した子どもたちがどのようなフィードバックを望んでいたかについても箇条書きで記されていますので(p.26)、それも紹介しておきます。
個別的(Individual)なもの
できるだけ客観的なもの
子どもの年齢、経験、能力に会ったもの
子どもたちにどのような長所(strengths)があったか、子どもたちがどのようにうまくやれたかに焦点を当てたもの
短いもの
子どもたちの参加のおかげで肯定的な成果が出たら、そのことについて子どもたちが振り返られるよう、成果が出ると同時に与えられるもの
理想的には匿名のもの(とくに、引っ込み思案で過敏な子どもの場合)
現実の成果に言及するもの
形式的ではない、フレンドリーで楽しいやり方で行なわれるもの
最後に、このガイドでは「意思決定プロセスへの」子ども参加という表現が用いられている点にも注意しておきたいと思います。こども家庭庁が「こども・若者の意見の政策反映」に焦点を当てるのは、こども基本法11条の規定(「国及び地方公共団体は、こども施策を策定し、実施し、及び評価するに当たっては、当該こども施策の対象となるこども又はこどもを養育する者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする」)に照らしても自然なことではありますが、より幅広い「意思決定プロセスへの」参加という視点を持つことも重要だと感じます。
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