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子どもの権利を守るために議会ができること/やるべきこと――国連・子どもの権利委員会とIPUの共同声明

 国連・子どもの権利委員会とIPU(列国議会同盟)は、11月20日の世界子どもの日を前に、条約実施における議会の役割についての共同声明を発表しました(2022年8月29日付;IPUのサイトでは11月15日、OHCHRのサイト〔Wordファイル〕では11月17日ごろ掲載)。
 ここでいう議会には、国レベルの議会と地方議会の両方が含まれます。重要な指摘が行なわれていますので、以下、IPUのサイトに掲載されているPDFに準拠して全訳を掲載します(もっとも、両者の違いは文末の日付の有無だけです。なお、列挙されている内容を▽で区切っている箇所は、原文ではセミコロンが用いられています)。

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子どもの権利委員会/列国議会同盟(IPU)

子どもの権利条約とその選択議定書の実施における議会の役割についての共同声明

1.子どもの権利委員会(委員会)は、子どもの権利条約(条約)とその選択議定書に定められた子どもの権利の促進および保護において、国および地方のレベルで議会が果たしている役割の重要性を強調する。一方、国内議会の世界組織である列国議会同盟(IPU)は、条約および委員会の活動について、子どもの権利の尊重を促進するための行動および世界中の子どもたちの利益を保護する一助となる行動において議会が基盤とすべき、きわめて重要な柱であると考える。

2.この声明の目的は、▽立法プロセスにおける子どもの権利を基盤とするアプローチの推進、▽憲法上の権限を活用した条約実施への関与、▽子どもに影響を与える決定への子ども参加の推進、ならびに、▽子どもの権利の促進および保護における議会の重要性、有用性および可能性についての公衆(子どもを含む)、締約国、市民社会組織その他の関係者の意識啓発における、議会の重要な役割に光を当てることである。

3.委員会とIPUは、国のさまざまな組織をどのように関与させるかについて決定し、かつ条約実施の最善の手段を特定することは各国の裁量に委ねられることを強調する。

4.ただし、委員会とIPUは、議会および議員が条約の実施ならびに条約に基づく締約国の報告プロセスへの関与を緊急に強化する必要があることを認識する。委員会とIPUは、議会が子どもの権利の促進および保護における自らの可能性を余すところなく自覚することを自国の法律の枠内で確保できるよう援助するために締約国に働きかけていくつもりであり、かつ、この目的のために自らの憲法上の特権を有効に活用するよう、議会に対して直接呼びかけるものである。

5.これとの関連で、議会には子どもの権利を実現するための法的基盤を確立することが可能である。議会は、あらゆる領域で子どもの権利を保護する包括的立法の採択を通じ、子どもの権利の実現に対するホリスティックなアプローチを発展させることができる。議会にはまた、子どもの権利の特定の分野で具体的な法改正を行なうことによって重要な役割を果たすことも可能である。

6.法律および政策の実施を効果的に監督することは、子どもの権利を確保するために議会が有するもうひとつの強力な手段である。議会は、国および地方のレベルで行政府を監視することにより、透明性およびアカウンタビリティを高め、かつ、新たな立法または政策を通じて対処されるべき課題を特定することを推進できる。

7.子どもの権利の実現は、国家予算における適切な資源の配分に依存している。予算に関わる議会の権限は、子どものための予算資源の十分、公正かつ合理的な配分を確保するうえで重要な役割を果たしうる。

8.議員にはまた、子どもの権利を促進・強化し、子どもの権利に悪影響を与えまたは子どもの権利を損なう慣行と闘い、かつ子どもの権利に対する有権者の支持を獲得するために、自らのプラットフォーム(有権者およびメディアとのつながりを含む)を活用することも可能である。

9.議会には、条約に基づく締約国の報告プロセスに積極的に関与することができる。このことは、委員会にとって、締約国が直面している課題をよりよく特定し、かつ、委員会の勧告の実施においてこれらの課題に対処するために議会が行なうことのできる貢献を模索・支持することの一助となりうる。委員会とIPUは、各国議会、IPUおよび委員会の相乗作用および交流の強化を促進することにより、子どもの権利の保護への強化に関して議会を支援することが可能である。

10.子どもの権利の促進および保護に関して議会が有している上記の法的・実際的可能性を考慮し、議会は次のことをするべきである。
● 子どもの権利の実施に対するホリスティックなアプローチを発展させること。
● 主としてまたはもっぱら子どもの権利について扱い、立法機関の活動全体における子どもの権利の主流化の調整および子ども議会の支援も担当する議会委員会を設置すること。
● 委員会の勧告の実施に貢献するなどの手段により、条約に基づく締約国の報告プロセスに積極的に参加すること。
● 子どもの権利の全面的実現を確保するために必要な措置を特定しかつ実行すること。これには、▽立法分野における措置、▽条約の3つの選択議定書の批准および留保が付されている場合にはその撤回、▽国家予算の編成における子どもの権利を基盤とするアプローチの活用、▽行政府の監督(子どもが収容されている施設を訪問することおよび司法府との関連で司法の全般的運営を支持することを含む)、および、▽条約で保障された権利の実現の空白に対処するためのあらゆる適切な措置への着手が含まれる。
● 子どもの権利の促進および保護を拡大するための国家的努力を調整する目的で、行政府との交流を増進させること。
● 議会の活動、とくに子どもたちに直接影響を与える決定への子ども参加を促進するためのツールおよびしくみを発展させること。
● 子どもの権利を促進し、かつ条約および子どもの権利に関する子どもたちおよび一般公衆の意識啓発を図るため、有権者、メディアおよびソーシャルネットワークに働きかけること。
● 締約国報告書において、条約実施への議会の議会の関与ならびに議会が遭遇した具体的な課題および機会についての情報を、この主題に関する独立のセクションを設けるなどして提供すること。

11.国際的・地域的政府間機関には、議員間での子どもの権利の促進および保護のために自らのプラットフォームを活用することが可能である。

12.委員会とIPUは、この声明の実施を支援するため、可能かつ有用である場合には議会に対してそのための援助を提供するなどの手段により、協働していく決意を表明する。

13.IPUは、その経験と能力を活かし、条約およびその選択議定書の実施を監視するという立法機関としての義務を議会が履行することを支援するとともに、議会と委員会との交流を促進するための枠組みを設けることができる。

14.委員会は、IPUとの交流および会合を促進し、かつIPUが行なう関連の活動について委員会が常に把握できるようにするための担当者を委員会内で指名することにより、IPUとのパートナーシップを強化してきた。

ジュネーブ、2022年8月29日

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