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国・地方自治体向けの子ども参加の手引(欧州評議会)

欧州評議会「子ども参加アセスメントツール」チャイルドフレンドリー版〉〈欧州評議会「子どもの参加アセスメントツール」の効果測定指標〉に続き、CP4E(ヨーロッパのための子ども参加)に掲載されている資料を紹介します。

★ Council of Europe: Let’s decide together! - Guide to meaningful and effective engagement of children in decision-making processes (written by Raluca Verweijen-Slamnescu, Independent Consultant, June 2023)
https://rm.coe.int/let-s-decide-together-guide-to-meaningful-and-effective-engagement-of-/1680abb33e

「いっしょに決めよう!‐意思決定プロセスへの意味のある効果的な子ども参加の手引」と題するこのガイドは、次のような構成になっています。

国・地方レベルにおける意思決定プロセスへの子ども参加のための舞台設定
第1章:国・地方当局における意思決定プロセスへの意味のある、包摂的かつ安全な子ども参加の前提条件

 ‐支援的な政策・法的枠組み
 ‐関連する研修および職能開発機会
 ‐子ども集団の多様性に関する認識
 ‐専用の財源
 ‐支援的なセーフガーディングの枠組み
第2章:子どもが意思決定に関与できる領域、トピックおよび活動
第3章:意思決定プロセスに子どもの関与を得るための活動の計画
第4章:意思決定プロセスに子どもの関与を得るための活動の実施
第5章:フィードバックの提供および意思決定プロセスへの子どもの関与の評価
第6章:意思決定プロセスへの子ども参加におけるセーフガーディング

 各章ごとに具体的な注意事項が掲げられており、付録として自治体・国の当局向けの自己評価ツールも用意されていますが、機会があればあらためて取り上げます。

 今回の「手引」では子ども参加の具体例もいくつか挙げられていますので(pp.8-11)、今回はそこから抜粋して紹介しておきます。引用部分(グレーの囲み)は原文を訳出した箇所です。


フランスの「子ども議会」

 1994年から開催されているフランスの「子ども議会」(Parlement des enfants)については、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン国内事業部が立憲民主党「子どものためのほうりつ」意見交換会のために作成した資料(2021年7月29日付、PDF)に概要が掲載されているので(p.13)、画像を引用します。

 子ども議会による提案をもとに法律が制定されたケースとしては、上記資料で紹介されている「児童虐待行為の防止および発見に関する学校の役割の強化を目的とする2000年3月6日の法律第2000‐197号」のほか、次の3つが挙げられています。

・きょうだい間の絆の維持に関する1996年12月30日の法律第96‐1238号
・親のケアを受けていない子どもが家族審議会(conseil de famille)に参加できるようにすることを目的とする1998年5月14日の法律第98‐381号
・とくに学校用品の購入の際に世界中の子どもの権利を尊重することを奨励する1999年6月9日の法律第99‐478号

アイスランドの「子ども会議」

 アイスランドの子どもオンブズパーソンには、1年おきに国レベルの「子ども会議」を開催する法的義務がある。会議は法的に開催しなければならない行事で、十分な資源が確保されているので、遠く離れた地域からやってくる子どもたちも参加でき、また会議の運営および出席する子ども(11~15歳)の支援の面で専門家による良質な支援も提供される。多様性と包摂をさらに確保するため、弱い立場に置かれた集団に属する子どもたち(たとえば長期の病気を患っている子ども、障害のある子ども、移住者としての背景を有する子ども、LGBTQI+の子どもなど)のために一定数の席が留保されており、これらの子どもを支援しているNGOは会議に子どもを派遣できる。子どもたちは会議の企画やファシリテーションにも関与する。会議の前にあらかじめ決められるトピックはない。子どもたちは、自分たちにとっての優先課題であるトピックを3つ選び、グループに分かれて同じテーマについて話し合うことができる。

ポルトガルの「若者参加型国家予算」

 ポルトガルには若者参加に関わる関心と行動の長い歴史があり、1976年以降はそれが同国の憲法にも盛りこまれている〔平野注/憲法70条に若者についての規定があり、若者団体の促進・支援についても定められている〕。ポルトガルは、国家支出に関して市民が発言権を持てるという実験を世界で最初に行なった国のひとつであり、参加型の一般国家予算を策定してきた。若者参加型予算は、民主的参加プロセスのひとつとして2017年から実施されているものである。14~30歳の子ども・若者が公共投資事業の提案と決定を行なうことができ、当局はそれを実行に移す責任を負う。提案がふさわしいと考え得るテーマ領域は、教育(フォーマル/ノンフォーマル)、就労、住居、健康、環境および持続的開発、統治および参加、平等および社会的包摂などである。提案において尊重されなければならない基準としては、▽上限は10万ユーロ、▽インフラの建設はともなわない、▽支援サービスはなし、▽複数の自治体にまたがっている、▽国内に位置している、▽技術的に実行可能である、▽政府のプログラムまたは公共政策の諸分野で継続中の事業およびプログラムを妨げないというものがある。これまでのところ、参加型若者予算を通じ、▽運動障害のある人々に適したスポーツ器具を提供するインクルーシブなスポーツリソースセンター(アレンテージョ地方)、▽土着の動植物の再導入を通じたリベイラ地方の森林回復事業、▽パテイラ湖における歩行者区画再建・動植物観察空間創設事業などに資金が提供されてきた。参加型若者予算は、教育省およびポルトガル若者・スポーツ機関が監督し、財務省が資金を提供している。

 その他、▽学校給食プログラムのあり方をめぐる全国的協議への子ども参加(フィンランド)、▽家庭裁判所に子どもにやさしい環境をつくるための子どもアドバイザリーグループの設置(イングランド〔英国〕)、▽アイルランドの「意思決定への子ども・若者参加に関する国家戦略」(2015~2020年)とコーラナノーグ(地方子ども・若者評議会)、▽ユニセフ(国連児童基金)が支援する「子どもにやさしいまちイニシアティブ」(CFCI)、▽コソボにおける「コミュニティ成績表」などの取り組みが紹介されています。

 このうちアイルランドの取り組みについては以下の投稿でも取り上げていますので、ご参照ください。

-〈アイルランド「子ども・若者参加戦略」
-〈アイルランド「意思決定への子ども・若者参加に関する国家枠組み」概要(1)
-〈アイルランド「意思決定への子ども・若者参加に関する国家枠組み」概要(2)

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