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【歩く】

『しあわせ』は言います。

「私は、ずっと此処には居ません。」と。

「なぜですか。」と聞くと

「私がずっと此処に居ると しあわせだということを忘れてしまうからです。」

そう言い残して、しあわせは何処かへ消えてしまいました。

行くあてもなく歩いていると

『哀しみ』と出逢いました。

どこから来たのか尋ねると

しあわせから来たことを教えてくれました。

いつまで此処にいるつもりか聞いてみると、

「今は何も分かりません。これが全てです。」 と言うので、それ以上、何も聞けませんでした。

次に会ったのは『憎しみ』でした。

どうして、そうしているのか尋ねると

しあわせを奪われたからだと言います。

その後ろを、しあわせがすっと通り過ぎるのが見えましたが、 私はそのことを憎しみには言えませんでした。

『恐れ』との遭遇は一瞬でした。

どこから来たのか尋ねると

「分からない。」と言ったまま

『怒り』の方へ行ってしまいました。

哀しみと出逢った反対側の空から

『よろこび』が降りてくるのが見えました。

どこへ行くのか聞いてみると、

コツコツ自分を待っている所へ行くだけだと

教えてくれました。

私は、また『しあわせ』に会いたくなりました。

どこへ行ったら会えるのか分かりません。

会えないかもしれません。

通り過ぎてしまうかもしれません。

待ってみようかとも思いましたが、

私は歩くことにしました。


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