私にはあなたの思いが分からない|Coldplay X BTS『My Universe』

Coldplay X BTS - My Universe (Official Lyric Video) 

Coldplay X BTSの「My Universe」を聞いていた。翌日が休みだから、意味もなく張り切って夜更かしをした午前4時。1日の締めくくりにその日配信されたばかりのその曲を。

ベッドの中で聞く「My Universe」は明るい中で聞いたときとは少し表情が違っていて、いっとう心地よかった。全身がイヤホンをはめた耳の方に向けて集約していき、そのまま夜にぽんと浮かびそうな気さえした。

でもその夢みたいに甘い時間は、耳に飛び込んできたSUGAのラップによって唐突に叩き切られた。昼間にはそんなこと感じなかったのに、突然ものすごく悔しくなって涙が出た。私にはSUGAの思いが分からない。

BTSを知って、すぐに心を惹かれたのがSUGAだった。というよりは、SUGAのことが気になってBTSを見るようになったと言っても過言ではない。クリエイターとして新しい音楽や言葉を生む人であるということが最大のフックだった。

これまで海外のアーティストや俳優に入れ込んだことがほぼない私にとって、好きな人の話す言葉が分からないというのは初めての経験だった(好きな俳優はいるけれど、英語圏の人であったのである程度は理解できる)。特にSUGAは、BTSの他のメンバーたちと比較すると母国語以外の言語への関心が低そうに見える。

言葉を扱うクリエイターを好きになったのだ。その言葉を知りたいと思うまでに時間はかからなかった。学び始めた私が文字と音、意味まで覚えた最初の単語は、산들바람(そよ風)だ。SUGAの作った歌を歌いたいという思いが原点だったから。少しずつ勉強して、SUGAの作った歌を通しで歌えるようになったら良いな。歌詞は調べればすぐに分かるし、単語の意味はひとまずどちらでもいいや。そう思っていた。

薄暗い部屋のベッドに潜りながら、でもやっぱりそれじゃ足りないんだと思い知った。SUGA本人の言葉から、声から、直接思いを受け取りたいと強く思った。以前YouTubeで日本語が堪能な外国人が「日本語を知らない頃は自分の一部が欠けているような気がしていた」と言っていた、その言葉の意味が初めて少し理解できたような気がした。

言葉が通じなくても分かり合えるなんて甘い。ましてや顔が見えない状況で。言葉が分かっても思いが分からないことなんてざらにあるのに、言葉が分からなければ思いが分かるはずがない。間に何も挟むことなく思いを受け取りたいのなら、まずはせめて言葉が分かるようにならなくては。

夜中にいつまでも起きていると感じる脚のだるさがやってきて、そろそろ眠らなきゃと思ったけれど、頭が冴えて冴えて眠れなかった。

どこでもドアみたいに、このドアを通ったら私が韓国語を理解できる世界に行けないかな。でもそんなものはどこにもなくて、自力で前に進むしかない。ならば私は飛行機で、それが無理なら新幹線で、あなたの思いに辿り着く。

「My Universe」のSUGAのパートの歌詞、どうやらすごく良いらしい。でもこうなったらもう日本語訳を調べないぞ!と意味のない意地を張ってみる。待ってろ、と吠えてみる。何年かかるか分からないけれど。嘘。今すぐ行くから待ってて欲しい。

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