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父親は子育ての「知識なし」??

「子育ては、技能もなく、知識もなく、外部の手助けもない状態でいきなり車を運転するようなもの」

私は保育と子育て支援での実務経験があり、このような表現を子育て支援の場で聞いたことがある。
これはもちろん父親の子育てにもあてはまる。むしろ、現代は父親の方が支援の面で危機的な状態にあると感じている。

産業医・産婦人科医・医療ライターの平野翔大氏は著書『ポストイクメンの男性育児 妊娠初期から始まる育業のススメ(中央新書ラクレ)』で現代の父親を苦しめる要因を「知識なし・経験なし・支援なし」の「三重苦」と表現している。
これには私も大いに共感する部分が多数あった。今回は私の経験を交えて「知識なし」について話していく。

父親の子育て「知識なし」と聞くと、父親の子育てへの意識の低さを指摘する声が上がりそうだが、決してそうではない。社会構造的に父親は子育ての知識を得る機会が少ないのだ。

性教育の遅れ

日本の性教育は諸外国に比べて遅れている。
今は高校で性教育を学ぶ機会が確保されているが、今の親世代が小中学生の頃は、性について義務教育で学ぶ機会が乏しかった。
私がまさに性教育を十分に受けてこなかった世代である。高校の時に出産現場のビデオを授業で見る機会があり、多感な時期の自分はそれを見るのが正直辛かった思い出がある。子宮口から赤ちゃんが出る様子をリアルに撮影されていたのだが、今思うと特に前置きもなくいきなりそのビデオを高校生に授業で見せるのはやや配慮に欠けていたと思う。

私のような経験が他にもあるかは不明だが、今よりも性教育が遅れていたことは確かだ。その中で、十分な性への知識を持たずに親になるケースは少なくない。

妊娠・出産・育児情報の偏り

妊娠・出産・育児の情報は女性からのものであることが多く、母親に届くようにデザインされているものがほとんどだ。
妊娠から子どもの未就学期までの時期には、助産師や保育士などが子育て世帯に関わることになるが、日本では助産師は女性しかなることはできず、保育士は未だに女性が大多数を占めている。
その中で、男性向けの子育て情報は特に少ない。男性向け育児雑誌ではファッショナブルな育児グッズの紹介と、育児の本質とはそれた「デキる」父親像を主張する文が並んでおり、見ていて辟易してしまう。

特に子育て支援の場では男性目線の情報発信が少なすぎる。

それは実際に子育て支援の現場に入る男性の少なさが影響している。
政治に女性が不在の状態では多様性に欠けることと同じで、子育て支援においては男性不在の状態が子育て支援の広がりに歯止めをかけてしまっている。
私は保育と子育て支援の研修などを通していくつかの園や支援センターを見てきたが、やはり男性の数は少ない。男性目線の情報がか細くなってしまうのは当然と言える。

子育てを学ぶ場に行くことへのハードルの高さ

母親は妊娠すると数週間に一回、産科に通い、産婦人科医や助産師の診察を受ける。妊娠期間中には集団での「母親教室」があり、そこで出産・育児の基本を助産師から学ぶことができる。出産後の入院期間にも沐浴などの実技指導を受けることもでき、退院後も定期的に心と体のケアを受けることができる。
一方で父親はこれらの支援の場に同伴することはできるが、「支援を受ける」主体はあくまで母親である。

父親はどちらかと言うと、「支援をする」側に立つことが多い。

また、父親が支援の場に同伴できるとはいえ、男性が健診などの場に行くことにはハードルを高く感じることも多い。
私も支援者の立場で健診の場に同行したことがあるが、授乳スペースに誤って近づかないようにしたり、不審に思われないように振る舞ったりと、その場に入るだけで多くの配慮が必要だった。
そもそも健診にしろ両親教室にしろ、有休などを使って時間を確保しない限り父親が参加することはできない。そして「母親」「両親」を対象にした教室はあるが、「父親教室」は存在せず、男性が父親になるための学ぶ場は少ないのが現状だ。

父親のための場がほしい

様々な要因で父親が「知識なし」の状態になってしまっているが、これを改善できる方法はあるはずだ。

私は、父親が子育てについて主体的に学べる場所を作りたい。
具体的な案があるのでそれはまた次回に。

それでは


さよならあんころもち またきなこ!


こそだてパパのわ『ちくわ』 坪田

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