【読書】神神の微笑
キリスト教の宣教に日本にやってきたオルガンティノ~日本の神々に出くわしてした彼は、宣教より日本を好きになることを選んだのかもしれない。
日本が好きで日本人にも慕われたという、戦国時代にやってきたイタリア人宣教師のオルガンティノ。
ただ、芥川竜之介は、オルガンティノは、何度も日本を離れたいと思い、日本に馴染めず戸惑っている様子を、あえて描写している。実際のオルガンティノは76歳で死ぬまで、その半生を日本での布教活動に捧げた。
芥川は、どんなに異質なものを日本に持ち込んだところで、それはすべて日本に呑み込まれてしまうのだ…ということを強調したくて、オルガンティノをそのように描いたのかもしれない。記録によれば、およそ40年もの間、日本で暮らしたことになる。もちろん故郷イタリアに、帰りたいと思ったことは幾度もあっただろうが。
しかし確かに、オルガンティノは、日本人にもよく溶け込んで宣教したが、結局、秀吉の時代からは禁教となり、細々とした活動しかできなくなった。そして現代になってみると、日本では宗教はまったくの自由だし、日本人は宗教に対する偏見が少ない方だと思うし、キリスト教の音楽に至っては、多くの人が美しいと感じるだろうし、好んで教会で結婚式を挙げたりもする。それでも信者がそれほど増えているとも思えないわけだから、日本での宣教は成功しなかったということなのだろう。
オルガンティノの前に現れた老人は、「日本は、外国からどんなものが入ってこようが、日本風に作り替えてしまう」といった。また老人は、「日本は古くからいる神々が守っている」とも言った。本にはそこまでの結論は書かれていないが、結局、オルガンティノ自身も、日本化されてしまったのかもしれない。
ここ最近、グローバリズムのネガティブな面が露わになってきたことで、ナショナリズムというのを見直す国々が増えている。日本もそうである。しかしだからといって、情報も物も人も、今更交流を無くすのは無理だろう。だとすれば、あらゆるものを受け入れながらも日本化してしまうこの国の資質とは、なかなか優れたものに違いない。
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