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金魚掬い 第二話(1)

夏が近づくと、滅法体力の方は衰える。その日も余りの暑さに、只々閉口していた。

菜々美は夏祭りを楽しみにしていた。「お母さん、絶対一緒に行きましょ」あんなに弾けるような笑顔を向けてくれていたのに、行けない旨を伝えるとふいにその瞳が揺らいだ。

でも、さすがだ。一旦下を向いたかと思うと、すぐに顔を上げて、こう言った。

「大丈夫、ばあばと言ってくるから」

もうあの子の真ん丸な瞳は、揺らいでいなかった。

いつのまに、あのような強さを身に着けてしまったのだろう。年相応に、振舞ってくれてもよかったのだ。

胸が痛んだ。

そのような菜々美を見たことにではなく、そのような振舞いをあの子にさせているであろう、自分に対して。

せめてもの慰めに、浴衣を着たいと言ったあの子に着付けを施してあげた。この浴衣は、私が幼少期に着ていたものだ。鏤められた金魚は少し色あせているけれど、布地はしっかりとした重さを手のひらに残している。

ひらひらと風になびくであろう、子供用の帯をぎゅっ、と締めてあげ、できたわよと声をかけると、菜々美はくるっと振り向いて小さな身体で私を包みこんでくれた。

「ありがとう、お母さん」

そう言う菜々美の仕草は、余りにも無垢なものだった。

美代子さんと手を繋いで出ていく菜々美を、玄関先まで見送った。菜々美は、美代子さんによく懐いている。

あの小さな手を握りしめているのが私だったら。どんなにいいだろう。……

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