水面下 vol.1
「湖畔がいいわ」と彼女は言った。
「湖畔?」
「そう、湖畔。湖のほとり。」
「湖か」
「そうよ。興味ないかしら」
「興味なくはないけれど」
「湖畔で、何を」
「そうねえ」
「まあしろなワンピースを着るのよ。そして、洗濯をするの」
「洗濯」
「そう、洗濯」
「洗うのも白い服?」
「ええ、白い服しか洗わないの」
「僕のシャツは洗ってはくれないの?」
「そうねえ」
「まあしろなシャツに変えたら、洗ってあげるわ」
そう言って彼女は息を止めた。彼女が息を止めると、しいんと言う音が耳に迫ってきて、痛かった。
僕はゆっくりと彼女に背を向けた。しばらくして、彼女の吐息が聞こえてきた。
彼女はまっしろと言うところを、やけにゆっくりと、まあしろと言う。
その晩、僕はまあしろな、どでかいシーツの中を泳ぎまわる夢を見た。なんだか自分の身体までがまあしろになってしまう夢だ。
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