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これからの人生は余生なんだ、とマナミは二十歳のときに思う。20年間特に命に関する物理的な危険も精神的な危機も訪れず、生きてこられたのだから。かつて大人になる前にこの世を去る子どもがたくさんいただなんて、今ではあんまり想像できないけれど、でも今の状況の方が長い歴史で見ると「イレギュラー」なのかもしれない。16歳のときになくなったカンザキくんの机が、なぜ自分のではなかったのか、マナミは二十歳になっても答えなんて見つけられなかった。余生、それは神様から与えられた、偶然でしかないほんの少しの贈り物。なんてセンチメンタルかそうでないかわからないことを、マナミはぶどうの飴玉を口の中で転がしながらぎゅっと手のひらに押し込めた。

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