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大学入試現代文の道標⑥~C現代文力の高め方(4月~夏休み前 各論3“語彙力について”後編)

皆様こんにちは。

現代文科講師の竹中です。

前回は「語彙力とはなにか」についてお話しました。

今回はその後編として、「語彙力をどのように養成していくか」について述べていきます。

◎名探偵に学ぶ語彙力養成法!

 少し話は変わるのですが、僕はミステリ―小説を読むのが好きです。そこで、ここからは少しミステリー風に述べてみましょう。ここに、とある事件の犯人Xがいるとします。シャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロといった名探偵は、まずは事件「現場」を詳細に分析し犯人Xの痕跡をつかもうとしますね。でも、現場だけでは犯人Xはなかなか特定できません。そこで、彼らは犯行現場を飛び出し、現場の「外」の世界から犯人Xに関わる情報を得ようとします。そして、捜査線上に浮上した複数の容疑者を「比較」し、ついには犯人Xの像を特定していくわけです。

 この名探偵の方法論を、語彙力養成にも当てはめてみましょう。

 ある言葉Xの意味をつかみたい場合、

①「現場」(言葉そのもの)を分析する

②「外」(言葉が用いられている文章)の世界を探索する

③関連語(特に対義語)と「比較」する

という方法が有効です。1つずつ簡単に確認していきましょう。


①「現場」(言葉そのもの)を分析する
 先ほど「コンテキスト」という言葉が出てきましたが、これは「コン」(間)と「テキスト」(言葉によって編まれたもの)の二つの構成要素に分解して、「言葉を取り巻く関係」などの意味と理解できます。「文脈」についても同じ。「脈」とは「脈絡」とおなじく「連なり」を意味する感じですから、「文のつながり、前後関係」などと意味をとらえていきます。このように、その言葉を構成要素にわけて分析し、その基本的な意味をとらえる習慣を身につけることです。


②「外」(言葉が用いられている文章)の世界を探索する
 「現場」だけでその言葉の意味を完全に理解できるとは限りません。そこで、「外」(言葉が用いられている文章)の世界を探索します。例えば、

 「記号の意味は『コンテクスト』に依存する。例えば、「💧」という記号を考えてみよう。この「💧」は、悲しい状況で用いられれば「涙」を意味するし、当惑している状況であれば「汗」を意味する。さらにはドラクエ好きの視点から見れば「スライム」をも含意するかもしれない。このように、記号はそれが用いられる状況により、その意味が決定されるのだ。」

 などのように「コンテクスト」について触れられている文章を探索することで、その言葉の世界(実際の用例、具体的な事例、その言葉の持つ背景など)が見えてきます。(ちなみに、この文章は前回の記事で挙げた「具体例をはさんで主張を伝える」という技術が用いられていますね。詳細は前回の記事にてご確認ください)


③関連語(特に対義語)と「比較」する。
 さらに、関連語と「比較」することで、その言葉の世界をつかむこともできます。例えば、「主観」という言葉の意味を理解するには、「客観」という対義語と比較すると非常にわかりやすくなります。(この「比較」という作業は、物事を思考するうえで非常に重要です。次回に記事にて説明しますね。)

「現場」・「外」・「比較」の3点から、語彙力増強を図りましょう。これらは、入試本番で未知の言葉の意味を類推するときにも有効です。


◎「単語帳」の活用方法(春~夏休み前まで)

 ここまで、語彙力の重要性とその養成方法について述べてきました。ここからは、語彙力養成の具体的の手段について述べていきます。

 まず、「単語帳」を準備しましょう。どんなものでもよいですが、できるだけ先ほど示した養成方法、「現場」「外」「比較」に沿ったものがいいでしょう。つまり、言葉そのもののをしっかり分析して意味が説明されているその言葉に関連する「文章」が掲載されている、関連語句(特に対義語)が紹介されているものが理想です。これらに加え、テーマ別に分類されているものであれば言うことなしです。

 特におすすめの本として、Z会から出されている『現代文キーワード読解』を挙げておきます。単語そのものの解説がもちろん、その単語に関連する文章が掲載されている点、さらに対義語なども絡めて紹介されている点など、語彙力増強の理想形が集約された形となっています。


 次に、こうした単語帳の具体的な活用方法なのですが、最初の時期(4月から夏休み前)までは、あくまで「短い評論読解」を柱にし、単語帳は補助教材として用いていく方法をお勧めします。前回の記事でも扱ったように、この時期の主眼はあくまで「短い評論を読み、段落大意をとること」です。

 よって、次のようになります。

《4月~夏休み前》

①「短い評論問題」を読解していく(段落大意をとりながら)

②その中で出てきた知らない用語を、「単語帳」でさらに確認していき、理解を深めていく。

 実際に文章という道を走りながら、言葉という栄養を適宜補給していく。例えるならこんなイメージでしょうか。

 注意点としては、知らない言葉が出てきたときに「いきなり単語帳で調べない」ということです。まずは文章の中で意味を類推し、文章を読解した後で単語帳を用いて意味を確認、理解を深めていくのです。遠回りに思えるかもしれませんが、すぐに単語帳で意味を調べるのではなく、類推というひと手間を加えることで、よりその言葉の意味が頭の中で熟成します。類推時にも、先ほど示した「現場」「外」「比較」という名探偵の方法論をぜひ実践してみてくださいね。

 

 さて、この記事にて「4月から夏休み」までの勉強法は終了となります。

 次回からはしばらく少し視点を変え、余談という形で現代文の道標を示していければと思います。次回の記事では「比較」について考えてみましょう。

 

 

 



 

 



 

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