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大学入試現代文の道標⑤~C現代文力の高め方(4月~夏休み前 各論3“語彙力について”前編)

 皆様、こんにちは。

 現代文科講師の竹中です。

 これまで、以下の道標について一つずつその勉強法を見てきました。

〈4月〜夏休み前までの道標〉
 ①まずは「読む力」!=短めの評論から始める
 ②「読める距離」を伸ばして行く!(文→段落→全体)
 ③「読む」ための語彙力を増やす!

 今回は、4月から夏休み前までの道標の最終講です。

 テーマは「語彙力」についてです。

 この前編では、語彙力養成についてお話する前に、まずは「語彙力」とはそもそもどういうものなのか、そのことについて考察したいと思います。

◎「語彙力」とは?

 語彙力養成についてお話する前に、まずは「語彙力」とはそもそもどういうものなのか、そのことについて考察したいと思います。たとえ、一文の構成などをしっかり見抜けていたとしても、そこで用いられる言葉の意味が分からなければ、当然文意はとれません。例えば、次の一文を見てみましょう。

(例)色の意味は、「コンテクスト」で決まる。

 この一文、主語も述語も明確で、文の構成そのものはすっきりしていますね。しかし、「コンテクスト」という言葉の意味を知らなければ、その文意をとることはできません。 

 ちなみに、「コンテクスト」とは一問一答形式の用語集では「文脈」と換言されていることが多いです。とすると、先ほどの例文は

(例)色の意味は、「文脈」で決まる。

 と言いかえられます。

 先ほどより少し内容が明らかになりました。でも、もしかしたらまだ少し違和感を覚える方もいるかもしれません。「文脈」を文字通り「文の続き具合」と捉えてしまうと、

(例)色の意味は、「文の続き具合」で決まる。・・・・? 

 となります。ここでの違和感の原因は、この文の主題である「色」と、「文」の関わりが見えづらい、無関係なものに見えてしまうというものでしょう。

 もしこのような違和感を抱いてしまうとすれば、それは「コントラスト」=「文脈」という訳語をただ覚え機械的に当てはめているだけで、「コントラスト」あるいは「文脈」という言葉の意味を理解できていないということになります。

 そう。語彙力とは、ただ単に訳語を覚え当てはめる力ではありません。その言葉の基本的な意味がきちんと理解できているか、使われている文に応じてその意味を柔軟に当てはめることができるか、そうした力を指すわけです。

★「語彙力」= 言葉の基本的な意味を理解し、場面に応じて柔軟に当てはめることができる力

 ちなみに、「コンテクスト」あるいは「文脈」の基本的な意味とは、「言葉と言葉の間にある関係」という意味です。そこから、言葉を取り巻く「状況」「前後関係」など、幅広い意味で使われるようになります。

 こうした基本的な意味をおさえたうえで、先ほどの例文に当てはめてみましょう。すると

(例)色の意味は、「状況」で決まる。

 という意味だとわかるはずです。ここまでくれば、先ほど違和感を覚えた方でも「あ、なるほど!」とその文意がとれた状態になるのではないでしょうか。(同じ緑という色でも、信号の緑であれば「進め」を意味しますが、「緑を大切に!」などの標語であれば「自然」を意味する、つまり、色の意味はそれが用いられる状況で決まる、ということです。)

 今回はここまでです。次回の記事ではそのような「語彙力」をどのように養成していくのかについて書いていきます。


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