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顧客の価値形成プロセス No.2 「アフターコロナ・ウィズコロナ時代の価値共創マーケティング」を読んで

 先週に引き続き、読んだ論文の要約・感想・疑問をツラツラと書いていくことにする。

論文の要約 - 企業は価値共創のために連合するべき

 本論文では、価値共創マーケティングを、「消費プロセスで直接的相互作用によるサービス提供を通じた顧客との共創によって文脈価値を高めるマーケティング」としている(論文筆者の過去論文から引用する形だが)。(余談だが、この下地には、「市場での交換価値ではなく、利用を通じて生まれる文脈価値あるいは利用価値」を重視するサービス・ドミナント・ロジックがある)

 価値共創マーケティングは4C (contact, communication, value co-creation, value in context)によって説明・分析される。つまり、いかに顧客との接点を構築し(contact)、顧客との相互作用的なコミュニケーションを交わし(communication)、それが顧客にとっての価値の共創(value co-creation)につながる必要があり、結果として文脈価値に至る(value co-creation)ということだ。

 この論文では、一例として島村楽器を挙げている。島村楽器は、「楽器を販売する」ことではなく、「顧客のミュージックライフ」すべてを価値創造プロセスとして定義し、音楽に関する様々な顧客との接点を構築し、コミュニケーションを図っている。

 コロナ禍によって、人々の価値創造の方法が、より多様化・複雑化・高度化した、と、本論文では主張する。それに伴い、顧客が企業に対して求める”ナレッジ・スキル”もより多様化・複雑化・高度化した結果、求められる”ナレッジ・スキル”が、個別企業で対応可能な範囲を超えるのではないか。これが、本論文における問題提起である。

 解決策として、この論文では、「企業や地域コミュニティが連帯することで、顧客の多様化・複雑化・高度化した要請にもこたえられる」と提唱し、例として、コスモス・ベリーズのローカルプラットフォームを挙げている。

感想と疑問 - 企業の連帯方法、顧客同士の価値共創

 一企業ですべてを解決しようとするよりも、企業や地域コミュニティと連合することで、より多様な・複雑な・高度な顧客の”お困りごと”を解決できる存在になり、結果として、顧客との共創を生み出せる、という結論は、納得感のあるものだと思った。一方、どのような企業の連合方法が、より顧客との価値共創につながるのか(買収~一時的な連帯まで)、という疑問も残った。おそらく、産業や、顧客が望む価値共創のパターンによっても異なる気がする。

 ところで、この論文では、締めくくりに、「個別企業の範囲を超えるナレッジ・スキルを提供するほかの仕組みが生まれる可能性」ついても言及されている。だが一方で、「顧客同士でナレッジ・スキルを交換し合う仕組み」にも注目するべきではないかと思う。

 この論文では、「お困りごと相談窓口」として、ローカルプラットフォーム(個別企業の集合体)を位置付けている。だが、例えば、何か困ったことがあったとき、とりあえずGoogleで検索したり、Twitterで何か解決策が呟かれていないか検索したり、信頼できる友人に訪ねたり、ということが、最初の行動ではないだろうか?

 もちろん、考え方として、「●●で困ったときにはまず思い出してもらえるようになる」という方針を掲げて、contactとcommunicationを強化していくのは一案だ。だが、一方で、contactとcommunicationは、顧客と企業、という両者でのみ行われるのではなく、顧客と(潜在)顧客の間でも行われるのではないだろうか。企業が顧客との価値共創を望むときに考えるべきは、「企業⇔顧客」というバイの関係ではなく、「企業⇔顧客⇔顧客」というマルチの関係であるように思う。もちろん最終的な「価値の共創」は、顧客と企業の2者によって行われる。が、value co-creationに至る前工程のcontactとcommunicationにおいて、顧客同士の関係性は無視できないと考える。それらを含めて全体を考えることが、マーケティング従事者には求められているように思う。

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