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破壊的イノベーションの条件を確認する

 先日、「破壊的イノベーション」について学ぶ機会があった。ただ、定義がすごくあいまいに感じられた。「その業界にとって新しいことをやればそれが破壊的イノベーション」かのように感じられた。だが、クリステンセンが提唱した「disruptive innovation」とは、そんな”単純な”話ではなかったはずだ。そこで今回は、クリステンセンの論文を紐解きながら、「破壊的イノベーションとは何か?」という点を、改めて整理したい。

※以下の記事は、下記の論文を多分に引用している。英語が堪能な方は、下記の論文を読んでいただいたほうが、学びは多いと思われる。そんなのは面倒くさい、という人は、ぜひ下記の”概要つまみ食い”的な記事をお楽しみいただきたい。

破壊的イノベーションが生まれる段階

 まず、「破壊的イノベーションが唱えられる文脈」を確認しておきたい。既存企業は、基本的には「より多くの・高品質のものを求める」「利益率の高い」顧客のことを第一に考える。まずまずの品質なものを低価格で売るよりも、高品質を高価格で売ったほうが、より多くの利潤を得られるからだ。この方式で既存企業が利潤追求を行った結果、市場には「忘れ去られたセグメント」が出現する。市場としては存在するのに、企業にとっては「優先度が低い」セグメントであるがためにケアされず、人々は不満を抱えたまま、もしくは、我慢して最適でない代替策を採用しているままになっているー。こんな環境が、破壊的イノベーションが成立する素地となる。

 そのような状況にあって、新規のーそしてしばしば小規模のー企業が、「忘れられたセグメント」のニーズを満たす商品を開発し、投入する(それはしばしば低~中品質であり、低価格である)。その結果、忘れられたセグメントにいた人々は、既存企業が提供する過剰品質な製品ではなく、新規企業が提案した新商品を採用する。このようにして、新規企業の新規参入が成立するのだ。

 しばしば既存企業は、この新規企業の参入を過小評価しがちだ。多くの場合、「自社の顧客にとっては競合商品ではないから」といった理由で、新規企業を競合とみなすことは少ない。しかし、時の流れとともに品質の改善が進むと、これまで「忘れられたセグメント」のニーズを満たしていた商品が、「主流の人々」のニーズをも満たすようになる。その瞬間、新規企業は、既存企業のマーケットに入り込む。既存企業はその段階で初めて新規企業を「脅威」と認識するわけだが、もう遅い。「主流の人々」は、「高利益を生み出す上流顧客」向けに作られた商品よりも、「必要十分な機能と価格を提供してくれる」商品のほうを選ぶー。以上が、破壊的イノベーションがたどる道筋だ。

 上記のストーリーを再度整理しよう。破壊的イノベーションが成立するためには、3つの段階がある。

①市場において、まだ満たされていない(=忘れられたセグメントの)ニーズを満たす
②最初の商品は、市場の主流セグメント(を顧客とする企業)には競合とみなされない程度の(低品質・低価格な)商品である
商品の改良により、主流セグメントに選ばれるようになる

 ある”イノベーション”が”disruptive(破壊的)”であるためには、上記3つの条件を満たす必要があるのだ。軽率に「破壊的イノベーション」を叫ぶ前に、丁寧に条件を確認していきたいものだ。

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