地頭力を鍛える

日々あふれるような現場の課題対応に迫られる中で、確実にボトムアップで課題解決をしているものの、どうも上司からはこの観点が抜けているといわれる人も多いのではないか?おそらくそれは、「バックキャスティング思考」に目を向けられていないことが一因であり、それについて網羅的にわかりやすく学べるのが本書。「結論から」「全体から」「単純に」というキーワードとともに、「地頭力の定義」とその鍛え方を指南してくれる。

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地頭力とは

地頭力=「結論から考える」仮説思考力、「全体から考える」フレームワーク思考力、「単純に考える」抽象化思考力の3つで構成されている。

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仮説思考力=「結論から」考えることによって、最終目的まで最も効率的な方法でたどり着くことができる。常に最終目的を意識した上で結論から考える癖をつければ、答えのない中で次に何を考えるべきかを逃さぬことができるようになり、足元の課題だけに捕らわれる状況から脱却できる

「全体から考える」ことの最大のメリットはコミュニケーションにおける誤解や後戻りの最小化にある。部分から考えてしまうことで、相手に背景が伝わりにくかったり、全体像をつかめないといったコミュニケーション齟齬が起こりやすくなる。また部分に入れば入るほどに相手の見えない世界になるかつ、まさに問題に対峙している案件になり個人の思い込みや思考の偏りが入り込みやすくなる。

抽象化思考力=「単純に」考えることによって、意思統一が図りやすくなるとともに、1対1対応、その場しのぎ、バケツの穴ふさぎ対応に陥ることを防ぐことにつながる

仮説思考力を鍛える

ポイントは、 どんなに少ない情報/曖昧模糊とした環境の中でも、①仮説を構築する姿勢、 ②前提条件を設定して先に進む力、 ③時間を決めてとにかく結論を出す、を繰り返すことにある。

ここで邪魔になるのは、正解を求めてしまうことである。その思考がある限り、結論を出すにも自信のなかったり、何か突っ込みを受けたときに言い訳がましくなってしまう。

また全貌が見えていない中では、前提を置くことが大切だが、いちいちその前提条件を決めてもらえないと先に進めない人たちがいる。いわゆる「指示待ち族」である。注意すべきは、自分で前提条件を決めて先に進んだ場合には、どんな前提条件を設定したかを他者に対しても客観的にわかるように明確にしておき、前提が異なっていた場合にはいつでも必要なところまで戻ってやり直せるようにしておくことにある。

この仮説思考は「はじめ」からでなく「終わり」から考えること、「手段」からでなく「目的」から考えること、「できること」からでなく「やるべきこと」から考えること、「自分」からでなく「相手」から考えること(例えばコミュニケーションにおいて)など、応用範囲はほとんど無限といってもよいほどになる。

フレームワーク思考を鍛える

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まず視点移動に関して、全体俯瞰ができるようになると、はじめに全体像をとらえた後で部分像へ「ズームイン」の視点移動で考える。一方で「視点の低い」人はまず身の回りのこと、あるいは「とっつきやすい」ところから入って全体に広げていく「ズームアウト」的な視点の移動をとる。後者の場合は、相手が同じような業務を担っている場合には見ている世界が近しいので齟齬が少ないが、対上司や経営層と話す際には、些末な部分になるので、齟齬が発生する場合が多くなる

次が「切断の切り口」と「分類」だが、読んでいてここは2コ1の関係にあると考える。ここで使えるのがフレームワークであり、3Cや4P、AIDMAだったりヒト・モノ・カネ・情報だったりする。

その次の「因数分解」は前の分類の類に依存するところが多く、必ずしも掛け算の関係ではつながらない場合もある。例えば、ヒト・モノ・カネ・情報で分けたとして、ヒト=A1×A2×A3とするには、採用なら採用ファネルの分析で離脱率を追いかければできなくはないが、ここに組織文化の話だったり、退職率の問題が出てくるとその限りではない。(A1、A2、A3の要素に重みづけをして、因数分解することはできなくないだろうけれど)

最後がボトルネック思考である。この中で目に付いたところ、自身の解像度が高いところだけを改善していてもインパクトの大きな仕事につながらない可能性があるのは明白だろう。

抽象化思考力を鍛える

対象の最大の特徴を抽出して「単純化」「モデル化」した後に抽象レベルで一般解を導き出して、それを再び具体化して個別解を導くという3ステップによる思考パターンのことである。

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モデル化というのは、すぐに1対1対応の問題解決に走らないということ。これは課題の緊急度にもよるが、原因分析を1つ上の層で考えること(例えばトヨタのwhy5とかもこれにつながると考える)が肝になる。

また、重要なことに枝葉の切り捨てがある。その分野に詳しければ詳しいほどに些末なことに気を取られてしまい本質的な課題解決につながりにくい、インパクトの弱いアウトプットにしかつながらないことがある。ここでも「全体から」という姿勢を忘れずに取り組む必要がある

パフォーマンスは解像度が低い部分に規定される

最終的なパフォーマンス(成果物)は、分解された1つずつのタスクの解像度の高低に依存する。その意味において、現場での詳細なタスクな理解はある上での本書の理解が重要になる。忘れてはいけないことは部分から入ることの弊害はたくさん説かれているが、部分を理解しなくていいとは一言も言っていないので、そこを取り違えることは防ぎたい

常に、「結論から」「全体から」「単純に」

「エレベーターピッチ」に代表される、短時間で要点を伝えるうえで重要なことは何か。まず、現時点でのプロジェクトの期限内での「落としどころ」(つまり「結論」である)を常に意識しておくことである。同じくプロジェクトの「全体像」を意識していなければならない。そしてそれらを「簡潔に」説明できなければならないという点でまさに地頭力の三要素である「結論から」「全体から」「単純に」考えることに帰着する。

日々、目の前の課題に忙殺されたときこそ、そのキーワードを思い出したい。

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