クリティカル・チェーン

プロジェクトとは

一般的に言えば、「目的」「資源」「納期」の三つのバランスをうまくとりながら実行する一連のタスクのこと。

プロジェクトが遅れる原因

プロジェクト・リーダーによる非公式の原因・理由
1:もともと非現実的なスケジュールを会社側に押し付けられた
2:あまり信頼できない業者でも、コスト優先で使わざるを得なかった
3:再三の指摘にもかかわらず、現地工場での従業員の採用、トレーニング開始が遅すぎた
プロジェクト・リーダーの下で働くスタッフによる非公式の原因・理由
1:業者の進捗状況レポートを信頼しすぎた
2:委託業者に対する管理・監督が甘すぎた
3:プロジェクト・スタッフは、負担が大きく、緊急の問題が発生するたびに、次から次へと仕事を移動させられた
4:作業調整のための無駄な会議が多すぎ、実際の作業の妨げになった

またこれらが特定できても、現場は仕事が多すぎて問題に対処する時間がほとんどないということが多い。

ありがちで筋の悪い打ち手

始められる最も早いタイミングで始める
同時進行しなければいけない作業が増えて、プロジェクト・リーダーは混乱する。同時にたくさんのことに手をつけたら、何を先にやったらいいのか神経を集中することができなくなってしまう。結果、優先順位を取り違える可能性が出てくる。では遅く始めればいいのか?遅く始めると、今度は優先順位をつけることができなくなる。
プロジェクトの差配に力を入れる
もしひとつのパスがなかなか前に進まない時に、他に作業を進めることのできるパスがあればそちらのパスを進めることがあるが、いくら他のパスでがんばったとしても、結局、遅れているパスを最後は待たないといけない。
大量のバッファーを設ける
誰しもプロジェクト様の経験がうまく進まなかった経験があるので、自分のプロセスはバッファーを設ける傾向にある。ただし、以下の理由からすべてのプロセスにバッファーを設けることは無意味である。

①学生症候群・・・期限までに時間的な余裕があるとつい他のことに手が出て、結局、ぎりぎりになるまで作業に着手しない傾向をいう。時間はあるのだが、ぎりぎりになるまで着手しないから、結局、予定の期限には間に合わなくなる。

②掛け持ち作業(マルチタスキング)の弊害・・・ 複数のプロジェクトを担当していて優先順位が不明確だといずれのプロジェクトにも「均等に」時間を割かなければならなくなる。ひとつずつ集中して片づけていくのに比べ、掛け持ち作業は段取りのロスや待ち時間のために所要期間が大幅にかかる。

③依存関係・・・作業同士が依存している時、ひとつの先行作業が遅れるとそれがどんどん波及してくる。

クリティカル・チェーン思考

では、どうすればプロジェクトはよりよく進むのか。

制約条件を見つける
制約条件は2種類ある。ひとつは物理的なもので、例えば、ボトルネック 需要を満たすだけの十分な生産能力を持たない機械や設備など。この場合、いちばん弱い輪を強めるということは、ボトルネックのキャパシティを増やすことを意味する。
もうひとつは会社の方針が適切でない、間違っているような場合、実はこれも制約条件になる。この場合は、方針を変えなければいけない。
他のすべてを制約条件に従属させる
どうがんばっても、ボトルネックで10個以上加工できないのであれば、非ボトルネックでそれ以上やっても意味がない。
制約条件の能力を高める
制約の原因となる部分についての人を投下する、設備を強化する、マルチタスクをなるべく避ける、特定スキルが必要なパートについてはあらかじめその人材の工数を確保する、などを行う。

クリティカル・チェーンとしての打ち手

作業ごとの期限設定はしない・・・プロジェクトの納期を守るためにはなるべく細かく作業ごとに期限設定するという傾向があった。ただし期限を設ければ、学生症候群が起こる。したがって、期限設定はせずに、期間のみを提示する。作業が回ってきたらすぐに着手し、終わればすぐに申告する、というやり方にする。こうすることで、無駄な時間の消費をなくせる。このためには、「リレー走者」と呼ばれる組織のカルチャー変化が必要となる。
余裕時間は必要なところに集中する・・・個人の時間見積もりは余裕を持たないぎりぎりの時間、つまり「厳しそうだが、やればできる」時間にする。削った余裕はプロジェクト全体の余裕、「プロジェクト・バッファー」として集中する。集中する効果で、プロジェクト・バッファーは削った時間のおよそ半分ですむ。残りの半分は期間短縮に寄与することになる。このやり方では個人には余裕はないので遅れる確率も半分はある。したがって、遅れても恥じない、責めない組織カルチャーへの変化が前提となる。
資源の競合は計画段階で解消する・・・プロジェクト内、あるいは複数プロジェクト間のいずれにおいても資源の競合(同一担当者の掛け持ち)は、計画段階で解消する。

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