見出し画像

GLOBISの乱読帳 2022年1月 ~大学院スタッフ編~

グロービスの様々な部門の書き手が毎月書籍を紹介します。今月はグロービス経営大学院に昨年ジョインし、日々受講生のサポートに奔走している大学院スタッフ3名(近頃のおやつはもっぱらみかんの尾郷、寒い冬は熱燗に限る伊藤、レバニラ炒めに革命が起こった日下部)編です。

新しい年は気持ちよく、志高くはじめたいもの。読書でいいスタートダッシュを切ってみませんか。

『世界は夢組と叶え組でできている』

著:桜林 直子 出版社 ‏ : ‎ ダイヤモンド社
(推薦者:尾郷)

「やりたいことはなんですか?」という質問を投げかけられると、私はいつも少しだけドキッとしてしまいます。やりたいことがないというわけではないけれど「絶対にこれがしたい!」と胸を張って言えるものなのかがわからない。そのまま「そもそもやりたいことってなんだっけ……?」と悩みこんでしまうループに、何度も陥ってきました。

受験や就職活動、会社での目標設定など、社会のなかで過ごしていると、思った以上に“やりたいこと”を誰かに伝える機会があります。どことなく、やりたいことが明確にある人や、夢に向かって進むことがよしとされる風潮がありますが、やりたいことがないことは残念なことなのでしょうか?

同じようなモヤモヤを抱えている方に手に取っていただきたいのが本書です。

本書には“やりたいことがない人”である作者自身が、「“やりたいことがある人”と“ない人”がいるのはなぜか、“やりたいこと”がない人はどうしたらいいんだろう?」という問いを考え続けた思考の軌跡が綴られています。

やりたいことを考えることが苦手な理由や、自身の過去の選択をじっくりとひも解くなかで作者がたどり着いたのは、行き先やゴールを決め、そこに向かって地図を見ながら進むことができる“夢組”と、過去を材料に進み、振り返ったときに気が付いたら地図ができている“叶え組”がいるということでした。

夢組と叶え組の間にあるのは考え方の違いであり、年齢や状況によって、自身のなかの夢組モードと叶え組モードも変化していく可能性があるもの。だからこそ、根っこにある自分の性質や、いまの自分がどちらのモードなのかを理解してくことが前に進んでいくためには重要になります。

自分がどちらの性質を強く持ち合わせていて、どちらの考え方でいると納得感をもって前に進んでいけるのか。やりたいことの種を、どうやって自分の中で育てていくことができるのか。軽やかに記された作者の考え方と対話しながら、自身の“志”についてじっくり考えるきっかけをくれる一冊です。

『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』

著:松本 健太郎 出版社:毎日新聞出版
(推薦者:伊藤)

あなたは自分の中に潜んでいる悪や欲望に気づいていますか?
そして、その悪や欲望が、気づかぬうちに自分の意思決定に影響を与えていることを知っているでしょうか。

近年、人間がいかに「合理的でない」存在かを実証する学問が、ノーベル経済学賞を続々と受賞し、注目を浴びています。それが「行動経済学」です。

データは事実ですが、真実とは限りません   (P.13)

こう語る著者は、実は、データ(=事実)絶対主義であるイメージを持たれがちの「データサイエンティスト」です。
本書ではデータサイエンスの観点から、データから見える「事実」ではなく、データの裏に潜む人間の「悪」と「欲望」が最終的に生み出す「真実」の見つけ方を、認知心理学や行動経済学を交えて教えてくれます。

ここまでを読んで「データとか学問とか、なんだか難しそうだな……」と思ったそこのあなたも、ご安心ください。確かに近年急増している行動経済学の知見を紹介する書籍は、学問的な知識がなければ読みにくいものが多くあります。しかし本書は非常に身近な社会現象を題材に説明しています。本書で扱われているテーマの一例を以下に挙げてみましょう。

・なぜ「サラダマック」は売れなかったのか
・「M-1グランプリ」はなぜ「炎上」したのか
・「カイジ」が人々をざわつかせる理由
・「上級国民叩き」突然の大流行
・「FACTFULLNESS」はなぜヒットしたのか  などなど

どれも「そんなことも行動経済学で説明することができるんだ」と思えるようなテーマとなっています。

こうした、まったく知識のない方でも読みやすい話題を通じて得られるのは、データを理解する方法だけにおさまらず、マーケティングなどにも通じる「洞察力」です。

膨大なデータを眺めて『次のヒットは確率的にこれ』と予想するよりも、人間の悪の側面を眺めて『こういう煩悩は誰もが持っているからヒットしそう』と予想する方が、よほどヒットする確率が高い  (P.25)

著者のこの言葉を導く知見の一端を、是非本書から得てみて下さい。

『Good Luck』

著:アレックス・ロビラ、フェルナンド・トリアス・デ・ベス 訳:田内  志文 出版社:ポプラ社
(推薦者:日下部)

新しい年を迎え「今年こそは仕事も趣味も全力投球するぞ」と意気込む人は多いのではないでしょうか?かくいう私もそのひとりです。

そんな新年の1冊目におすすめしたい本が本書、『GOOD LUCK』です。
私は父からすすめられて手に取りましたが、最近なんだかツイてない、という人には是非読んでみてほしいと思います。

この本によると、運と幸運は、まったくの別のものなのだそう。運は人間の力ではどうすることもできないが、幸運は自分の手で作り出すことができるのだといいます。この本ではそんな幸運を手にするための「下ごしらえ」について、物語を通して知ることができます。

物語は、魔法のクローバーを探す2人の騎士が、それぞれどんな行動をするかを追っていきます。2人の行動を自分と照らし合わせていると、一方の魔法のクローバーが育たない原因を知ろうとしない騎士の姿に、自分が重なりはしないかと不安になります。自分はこれまで、できないことの言い訳を探してはいなかっただろうか?仕事への意欲だけでなく、成果を求められだして焦った社会人2年目の自分の姿が特に思い起こされ、胸にグサリときました。
また2人の騎士は、同じ人物から情報を引き出せるか、協力したいと思わせられるかによって至る結果に大きな差がつきます。何気ない日常生活での振る舞いを思い返すきっかけになるのではないでしょうか。

加えて、もうひとつ注目していただきたいのが、あとがきです。
あとがきには「筆者が本を書くのに要した時間は8時間だが、構想を練るのに3年を費やした」と書かれています。みなさんは「たった8時間で書けたのか」と思うでしょうか、または「3年もかかったのか」と思うでしょうか。筆者曰く、前者は運の訪れを待つ者たちのこと、後者は幸運への下ごしらえをできる者たちのことだそう。この本を読み終えた後にあとがきを読んでいただくと、みなさんもきっと3年かかることに注目したくなると思います。

みなさんと私のこれからが幸運に満ちますように!Good luck!

@(・●・)@  @(・●・)@  @(・●・)@

いかがでしたでしょうか。みなさんも読書を楽しんでください!
GLOBIS知見録にもぜひアクセスを!!