[仮面浪人]背中を押したひとこと

基本が全くできていないことに気づき、まだできることがあるんじゃないかと思い始めた5月。

それでも、もう入学している以上、大学を辞めて受験しなおすという選択はすぐにはできませんでした。

ただ自分の中では「もう一年挑戦したい」という思いがあり、迷っていた理由としては経済面の申し訳なさと、本当にもう一年やれるだけの気持ちがあるのか、という二点があったからです。

経済面で言うと、私立大学なので入学金と前期の授業料で80万円ほど。言ってしまえばこれを捨てるようなものです。高いのは言うまでもありません。

もう一年やれるだけの気持ちがあるのか、という懸念があったのは、現役時代、気持ちの揺らぎを幾度となく感じていたから。絶対にここに行くんだ!という時と、別にどこでもいいんじゃないか、という時とで振れ幅があり、それで勉強をさぼるとかそういうことはありませんでしたが、現役と違い学校という決められた時間や境遇を同じくする仲間がいない状況で、どれだけ自分が踏ん張れるのかという不安がありました。

やりたいという気持ちと、それ以外の気持ちの中で揺れ動きながらも、浪人するにせよしないにせよ「どれだけ基本ができていなかったのか」は知っておきたいなと思い、英語だけでなくほかの教科に関しても基本問題を解いてみたりしていました。するとまあ、できない問題の多いこと。

そんなある日。リモート授業であることをいいことに、教習所に通い詰めていた私は(運転に向いてないことを早々に悟ったので、早く終わらせたかった)、たまたま待合室で中学からの友人に出会います。

彼は中学3年の時に塾で知り合いました。友達の友達だったことがきっかけで仲良くなり、塾の帰りにテスト一週間前にもかかわらず友人たち5人で雪合戦をしたりと、楽しい思い出があります。5人の内私含め3人は同じ高校に進んで、それから大学生になってそれぞれ地元を離れたりしながらも、集まってご飯に行ったりなど大切な友人の一人です。

彼含め友人たちは私が立命館に進んだことは知っていました。
待合室で日本史の問題集を開いていた私に、
「もういっかい受験しないの?」と一言。

久しぶりーとか元気ー?とかそういうのではなく、開口一番にその言葉。
そして「迷ってる」と答えると、次のように言われたのです。

「迷ってるならやった方がいいんちゃう?後悔するで」

ああ、そうかも。

その時ただただ単純に、そう思った。

やらないよりやった後悔とか、後悔にはいろいろな名言があります。迷ってるならやった方がいいという言葉も、聞き慣れた一言です。世界にたくさんある名言に、確かにそうだとうなずくことはありました。ですがそのどれにも、私の背中を押すほどの力はなかった。

でも、大切な友人がくれたそのありふれた一言だけが、ぽんっと私の何かを動かしたのです。

その後いくらか世間話をしたりして、別れ際「元気出してや」とも声をかけてくれました。ただただうれしかったのを覚えています。今年の春、帰省した際にみんなでご飯に行ったとき、この時にくれた言葉のお礼を言うと、「笑顔が笑顔じゃなかった」とのことでした。あの日会わなければ、今の私はなかったかもしれません。感謝してもしきれないです。

これをきっかけにして、本格的に仮面浪人について調べ始め、計画を立て、母に話し、父に話し、休学の手続きをし、、、というようになります。
またそれは、それぞれ別のお話で。

最後まで読んでくださりありがとうございました。また。

大屋千風









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