見出し画像

大分県のラムネ温泉に感動した話

始まりは10年ぶりの大分旅行

先日、約10年ぶりに大分県に行ってきた。10年前に行った時は、親友と2人で九州一周旅行中であった。まだ大学生だったこともあり、鈍行列車を乗り継いでは格安宿に泊まるという男二人の貧乏旅行だったのだが、唯一事前に調べていた温泉が臨時休業というヒキの弱さを発揮してしまった。そのため「クソ狭い漫画喫茶でパワプロした」以外の記憶が何も残っていない。今回は、絶賛有給消化中の妻が「ちょっと1週間、温泉行ってくるわ」と大分県で温泉めぐりを楽しんでおり、羨ましくなった私も週末から参加するという完全な便乗旅行で、約10年ぶりに足を運ぶことになった。

画像1

直前まで仕事に追われていて何も情報収拾できなかったのだが、妻から事前に案内されたルートを頼りに、東京から飛行機とバス2本を乗りついで、どうにか目的地にたどり着けた。言われた通りに一つ一つ辿っていっただけなのでもはや子供の遠足だったが、何も調べていない後ろめたさよりも、ありがたみが勝るようになったから、年をとるのもいいものだと思う。

なお、今回滞在したのは長湯(ながゆ)という場所で、読んで字のごとく多くの温泉が密集している街である。夕方に長湯に到着した頃には、すでに5日滞在している妻が現地ガイドのごとく詳しくなっており、紹介されるがままに様々な温泉を堪能してしまった。

金曜夕方から日曜午前で、合計6箇所の温泉に7回入浴するという大変に湯に行く(ユニーク)な経験だった。折角なのでセンスのない駄洒落で湯冷めしないうちに、大変に気に入った「ラムネ温泉」という温泉を紹介させていただきたい。なお、ガチで温泉レビューをやっている温泉フリークの人にはマジで怒られそうだが、どうか温かい目で読んでやってほしい。温泉だけに。

ラムネ温泉とは

大分県は竹田氏にあるその温泉は、ラムネ温泉という妙な名前。この旅行で、唯一2回入った温泉である。お湯は外湯と内湯で2種類あるのだが、いわゆる露天風呂の外湯が炭酸泉(1Lに1000mg以上の炭酸ガスが溶け込んだ超高濃度の炭酸温泉)。内湯が炭酸水素塩泉(1Lに1000mg以下の炭酸ガス)の2種類。

この外湯が非常に変わったお湯で、まず32度と温度が低い。しかも外なのでなんならお湯に入っても、最初は少し肌寒い。ところが、お湯に入ってしばらくすると体の内側からじわーっとあったかくなってくる。理屈上は、「体内に吸収された炭酸ガスが、血管を拡張して血液の流れをスムーズにする」らしいのだが、これがとんでもなく気持ちが良い。ちなみにこの外湯に入っていると、炭酸ガスの濃度が高いため、体に尋常ではないくらい小さな泡がつく。さらにお湯が無色透明なので、これが「ラムネ温泉」の名前の由来になっているらしい。

一方、内湯は普通に40度以上あるのだが、これも最高に気持ち良い。いわゆるイメージ通りの「良い湯」である。色は濁っているが、体の外からもがっつりあったまることができる。とにかく、この内湯と外湯のコンビネーションが、病みつきになるレベルで良い。外湯に入る⇨肌寒く感じる⇨だんだん体の芯が熱を持ってくる⇨内湯で全身を同時にあっためる。この繰り返しである。個人差はあると思うが、外湯に入ると最初は肌寒いこともあり、のぼせにくいような気がする。なお、外湯の近くには小さいながら綺麗なサウナもあるので、サウナマニアの方にも自信を持ってお勧めできる。

画像2

このラムネ温泉は、所々にある看板やデザインも大変に脱力系で良い。建築は、東京都江戸東京博物館の館長、藤森照信氏。ロゴやキャラクターデザインは南伸坊氏(この記事のサムネイル写真がそのゆるキャラ)。比較的しっかりデザインされていた施設だけれど、地元の人がひっきりなしに訪れていて、観光施設ではなく地元に愛される温泉になっているのは素晴らしいと思う。個人的に入浴券を買ったあとに、お庭のようなところを通って、お風呂へ向かうのだが男湯と女湯の分岐を示す看板が、突然のぶっ込み感があって最高だった。

画像3

その他の長湯温泉たち

ラムネ温泉以外にも、5つの温泉を楽しんだので、一言ずつ感想を。

万象の湯

内装は非常に広々としていて綺麗。お湯も源泉掛け流しで、とても気持ちよかった。お昼のバイキングが、フレンチスパニッシュという謎のジャンルだったが非常に美味で満足度が高かった。内装もモダンなので快適に滞在したいなら、一番おすすめ。

御前湯

長湯温泉エリアのシンボル的なお湯らしい。古めかしいながら3F建てで、1Fと3Fにお湯がある。日替わりで男湯と女湯が入れ替わるよくあるシステムらしい。ちなみに、建築は象設計集団。

テイの湯(大丸旅館)

画像4

「その昔、テイさんという女将が、夢に出てきた老人の言う通りに掘ったら温泉が出たよヒャッホー」という花咲か爺さん的な由来を持つお湯。大丸旅館はとても格調高い旅館のようで、当然ヒャッホー的な落ち着きのない輩は自分を除いてはいなかった模様。なお、露天風呂はこじんまりとしているものの非常に気持ち良い。

長生湯

ここは温泉フリークではない自分にとっては、違う意味でインパクトのある温泉だった。入り口で怪しいコイン投入口に200円を入れると、回転扉が動いて入れる自動ドア。受付もスタッフも存在しない無人風呂。当然内風呂のみで外の景色もほぼ見えないので、まるで修行僧が入るかのような気分だった。人口が少なくなった温泉地の未来は、もしかしたらこんな感じかもしれないとよからぬ想像をしてしまい、朝からやや寂しい気持ちになった。

クアパーク
着いて最初に入った温泉のため、もはや写真がないのだが、水着着用で入る露天風呂が温水プールのような作りになっていてちょっと面白い。水着不要の内湯も気持ち良いし、近くには綺麗なレストランも併設されていて、味もそこそこ美味しい。ちなみに建築を坂茂建築設計が手がけていて、建物自体も凝った作りになっている。

ということで一度は行くべし、ラムネ温泉

これまで国内を旅行するたびにちょこちょこと温泉に入ってきたけれど、その中でもラムネ温泉は、間違いなく人生ベスト5に入る最高の温泉だった。もし大分県に行かれる機会があれば、是非足を伸ばすことをお勧めしたい。(というか、自分がもう一回行きたい)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?