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人間が働くよりも、お金に働いてもらった方が裕福になっていく世の中の仕組み

フランスの経済学者、トマ・ピケティが2013年に出版した「21世紀の資本」という本は、世界中の人達に大きな影響を与えました。

トマ・ピケティは、過去300年分という莫大なデータを用いて、不動産や株式などの資産運用から生み出される収益の伸び率は、会社などで自分の時間を切り売りして働く労働者が生み出す収益の伸び率よりも大きいことを証明したのです。

具体的な数字でいくと、株式などの資産から生み出される収益は年間約4〜5%上がっているのに対し、給料としてもらう労働収入の伸び率は年間1%ほどしか伸びておらず、世の中の仕組みとして、庶民が一生懸命働くよりも、お金持ちが資産運用した方が稼げるようになってしまっています。

トマ・ピケティは、これをr (資本収益率) > g (経済成長率)という式で表しました。

労働賃金の伸び率よりも、資産運用の伸び率の方が大きい。

例えば、100万円の金融資産を持っている人は、それだけで年に4万円の増収になりますが、資産を持っていない人が一生懸命働いても、賃金の伸び率は年に1万円ほどと言うことになります。

つまりは、資産を持つ者は、このシステムの中でどんどん豊かになり、資産を持たない者は、どんどん貧しくなってしまうのです。

考え方は人それぞれかと思いますが、よく取れば、人間が働くよりもお金に働いてもらった方が裕福になれるということですし、悪く取れば、資産を持つ者と、持たない者の格差はどんどん開いていってしまうということになります。

また、近年では、労働者の賃金は下落傾向にあり、労働者は目の前の生活を送っていくことだけで精一杯で、資産をつくる余裕がないという話もあります。

実際、トマ・ピケティがr > gで指摘したように、年々、富裕層と呼ばれる人達はどんどん増えている。

フォーブスが初めて富豪ランキングを発表した1987年では、億万長者は世界に約140人程度でしたが、2018年には2000人を超えて約15倍に増加し、2017年から2018年の期間では2日に1人の割合で億万長者が生まれているのだと言います。

2011年には、民衆が集まって「ウォール・ストリートを占拠せよ!」というデモが起こった背景などを考えても、労働者たちは、現在の格差がどんどん広がっていくという現状に少しずつ気づき始めているのでしょう。

21世紀は、20世紀と比較すれば、世界的に経済の成長スピードが落ちていく時代です。

経済が低成長であれば、新しく生まれる資本も少なくなり、インフレも起こりにくため、昔から存在している資産の価値は高いままになります。

さらに、21世紀のどこかで世界は人口が減少するフレーズに入り、人口が減少するとg (経済成長率)はさらに低くなっていくのです。

富裕層はどんどん増えていき、格差はどんどん広がっていく。

トマ・ピケティは過去300年の中で、戦争と大不況があった時というのは、資本家と労働者の格差が縮小傾向にあったと指摘しています。

大きな戦争があったりすると、資産に課税されたりするため、格差は縮小傾向に向かいますが、逆に大きな外圧がなければ、格差はどんどん拡大していくということでしょう。

トマ・ピケティは、この格差がどんどん広がっていく流れを止めるために、資産の量に応じて資本に課税する「累進資本税」を提案しています。

日本やアメリカでは所得の高さに応じて、課税する「累進所得税」が採用されていますが、21世紀は所得以上に資産による格差がどんどん広がっていってしまうため、資産に課税した方が良いという考え方です。

トマ・ピケティは、格差そのものを否定しているのではなく、自らの努力で生まれてしまう格差はOKですが、親や先代の人達から資産を受け継ぐことで生まれる格差は望ましくないと考えています。

所得ではなく、資産に課税することによって格差の広がりを防ぐ。

現在では、富裕層は資産をタックスヘイブンにどんどん移してしまうため、世界の国々が協力して資産に課税する制度を作らなければ、格差はどんどん広がっていってしまうとトマ・ピケティは述べている。

世界でどんどん広がっていく格差の問題は、僕たち個人ではどうしようともありませんが、資産を持つ者と、持たない者の差がどんどん広がっていってしまうことは、心のどこかに留めて置く必要があるのでしょう。



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