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【絵日記】こんなコロナなご時世ですが#こんコロ2021

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2021年4月25日から、「こんなコロナのご時世ですが2 #こんコロ2 」を連載します。 2020年春、緊急事態宣言発令を受け、mokumoku studioはこの未曾有な時間を…
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2021年6月の記事一覧

【絵日記#こんコロ-DAY67】 Nude

文 掛田智子 絵 ちから 真夜中にふと目が覚めて 自分が何者かわからない時がある 女性で 東京に住んでいて 広島出身で 掛田智子という名前であること しばらくすると自分自身について思い出して いかに命というものが 時というものが 人生というものが 奇跡みたいなちいさなちいさなピースに乗っかっていて いつしか無くなったり消えたりする そんなイメージがおしよせて ノーメイクだし 自我という鎧を着ていない私に 容赦なく対面する わたしがこの場所で このからだで このすがた

【絵日記#こんコロ-DAY66】 雨に付随する良いこと

文 掛田智子 絵 ちから 会議の嵐の1日が終わって 外に飛び出した 傘を持たずに わざと傘を持たずに 雨が心地よい どうか私を濡らしてくれ どうか私を冷やしてくれ 手を広げる 顔に水をひとつぶひとつぶ感じる 化粧がおちる どんどんふれ 散歩している犬を見かける 近づいて思いっきり顔をくっつけて 雨に濡れた犬のにおいを嗅ぎたい衝動にかられる 飼い主ににおいを嗅いでも良いか許可を得たらよいか 今はしとしとと まだほてった思考回路と火曜日に 落ち着きなさいというように

【絵日記#こんコロ-DAY65】 まちのコーヒー豆

文 掛田智子 絵 ちから 西荻の近所に 愛すべきコーヒー豆のお店がある おじさん1人で切り盛りされていて いつも忙しそうに ちょこまかちょこまか動いていらっしゃる コーヒーを焙煎している時は あたり一帯に香ばしい香りがたちこめ 熱を感じる店に入ってみると 焙煎ハイになったおじさんが いつもより愛想良く応対してくれる ありがとした ありがとした 私たちに繰り返し告げる 今日は夏のブレンドを豆で200g そして水出しアイスコーヒーもいただく 氷を入れても ミルクで割

【絵日記#こんコロ-DAY64】 掛田智子、生理について語る

文 掛田智子 文 ちから 私は生理を人生何度体験したのだろう 小学校の頃、「生理」という言葉をパブリックで発することさえ禁じられていた風潮の中 クラスの女の子と情報交換していたら あまり大きな声でその話題をお話してはダメですよ 先生に注意された なんでだろう 今でもわからない なによりも自分の身体の変化が面白くて そして誇らしくて クラスが真っ二つに分けられて 生理のある人にだけ 生理の教育があったな あたかも残りの半分に聞かれては恥ずかしいことみたいに 今回も精

【絵日記#こんコロ-DAY63】 手を伸ばしても届かないけれども

文 掛田智子 絵 ちから 雨が降り始める時が好きだ 予期せず始まるシネマのように ぽつ ぽつ ぽつ  ぽっぽっぽっぽぽぽぽぽぽぽぽぽ 曇り空があたかも もう待てない もう我慢できない しびれをきらして漏らし始める 天から数えきれないしずくを落とす 人々はあわて 洗濯物を取り込む 早足で目的地に向かう いろとりどりの傘を広げる となりの葉っぱは 待っていたわけでも 望んでいたわけでも 嫌んでいたわけでもなく そのしずくを受け止め ぱっ ぱっ ぱっ ぱぱぱぱぱぱぱぱ

【絵日記#こんコロ-DAY62】 分かち合えない痛み やっぱりいっしょの時間

文 掛田智子 絵 ちから 他者の痛みはわからない でも想像はできる 想像しかできない 想像じゃ追いつかない 想像するが大切 想像なんてしてほしくない 私の痛みわかったふりしないで 私の痛みなんてわかるはずない 私の痛みわかってよ 少し想像してみてよ 私が見てるものと 私が感じてること あなたが見てるものと あなたが感じてること 交わるのが ほんの一瞬でも

【絵日記#こんコロ-DAY61】 硬いアボカド

文 掛田智子 絵 ちから 先日大きなアボカドを2つ購入した アボカドやキウイの熟れ具合を見極める目利きだと自負している しかし昨夜ナイフを入れてみると硬い シャリっと感のあるまだ硬いアボカドだった アボカドとサーモンをわさび醤油であえて 丼物にしようと思っていたのに 夢破れた よし 焼く そう決めてオリーブオイルとガーリックを炒め アボカドを投入 グリルしたアボカドと生のサーモンはとてもよく合うではないか 今日はもうひとつのアボカド 硬いともう知っていた シャリ

【絵日記#こんコロ-DAY60】 風呂上がりアイス

絵 掛田智子 文 ちから 突然子供の頃に食べた  銀紙に包まれたアイスが食べたくなった バニラ味があったかな パリパリチョコみたいなのもあったと記憶する 今でもあるのかな 銀紙に包まれているなんて 四角くて長細くて お風呂上がりにおばあちゃんにもらったな 美味しかったな また食べたいな 子供の頃に大好きで 突然思い出して食べたくなることがあり 今でも手に入るものであれば食べることがある 名前は何と言ったか バニラアイスとチョコがミルフィーユ状に折り重なっていて 包丁

【絵日記#こんコロ-DAY59】 私という磁石

文 掛田智子 絵 ちから フリーランスとして仕事をしていると いや ある意味どんな立場であっても 同じことが言えるかもしれない みんなから申し合わせたかのように 同時にご連絡を頂くことがある ある時は スマホもパソコンも送受信ボタン押してみても 受信ボックスは登録してるニュースレターだけ まわりはしんとして 世の中で私だけが忘れ去られたような 気分になることさえあるのに ありがたいありがたい ご依頼は全てありがたい 私を思い出してくれてありがたい わざわざ連絡く

【絵日記#こんコロ-DAY58】 犬のアジェンダ

文 掛田智子 絵 ちから 実家の犬、キャバリアのきりんはよく吠える 散歩の際、ほかの犬とすれ違う時 宅配が来る時 隣の家の屋根にカラスがとまったのが見えた時 先代の犬、キャバリアのちょうすけがあまりにもおとなしかったので 両親も手を焼いている プロに相談し、トレーニングを受けようかと考えたらしい だけれど、吠えてはならないと決めたのは人間たち 人間たちのルールに犬を適応させようとしている きりんは理由があって吠えている 犬だから吠えて表現している それを奪う権利は人

【絵日記#こんコロ-DAY57】 それでも私は美しい

「それでも私は美しい」 文 掛田智子 絵 ちから 私は自分の裸体を観察する 自分の身体は絵画の大切なモチーフであるし 自分の表現媒体でもある ここ数週間か直視できなかった 自分に意識を向けられていないし 自分を思いやった食事も運動もできないばかりか 自分の身体を酷使していて とてもじゃない鏡に自分を映して向き合えなかった 半年ぶりにマッサージに行った そこは裸になり施術士の方に見立ててもらう 一緒に自分の裸体を観察し めぐりが滞っている場所や コリを見つけていく

【絵日記#こんコロ-DAY56】 まあるくやわらかく

文 掛田智子 絵 ちから はぁここ半年全く自分に意識を向けられてなかったな 以前はルーティンだったヨガや瞑想さえもできなかった 3分でも自分の中心に意識を集めて 呼吸を耳を澄ませることができなかった 比喩的には ずっと息を止めて身体をこわばらせて うっぷうっぷと溺れそうになりながらも 自分が自分を押さえ付けていたかんじ 外的要因はいくらでも考えられて やれコロナだ やれ引越しだ やれ仕事だ 今までもなかった話じゃない 前歴がありすぎる 無理するのとても得意なわたし

【絵日記#こんコロ-DAY55】 手術したよ

文 掛田智子 絵 ちから 相方からメッセージが届いた 「手術したよ」 え どういうこと 1週間前から化膿していた部分がひどくなり 予定していたよりも早く病院に行く事になった そしてその場で手術をすることになったらしい 麻酔をしていたもののかなり痛かったと かわいそうだ 本当にかわいそうだ それでも早く治療してもらえてよかったね 先延ばしにしていたらもっと痛みが大きかったかもしれない 今日は奇しくも 母も白内障の手術から退院した 2人とも今日は髪が洗えないしお風

【絵日記#こんコロ-DAY54】 明日はロングスカートをはく

文 掛田智子 絵 ちから これは珍しいと買った 明日初めてお目見えするロングスカート 漁業網の柄である はげしい 漁業の躍動感があふれる柄だ 今週の金曜日という日を飾るに相応しい 高層ビルに入っている 六本木のオフィスに行く 私は明日 漁業網の描かれたロングスカートをはいて