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丁寧に創られた料理は、見ているだけで笑顔になれる。

 ある日のダイニングキッチン九曜杏(熊本ホテルキャッスル)。

 オーダーしたのは、チキン料理のランチだった。真っ白なプレートでチキン料理がサーブされた。シンプルだが、ソースの掛け具合といい、可愛い野菜の組み合わせや彩といい、料理人の優しさが伝わってきた。

 デザートも、とても可愛らしくレイアウト。赤と黄色二種のソースがアーティスティックに添えられ、中央のベイクドケーキの存在が際立つ。ほんのちょっとしたことなのだろうが、食す前に鑑賞する「時」を与えてくれる。

 以前、ザ・リッツ・カールトン東京「ひのきざか」の元統括料理長が言っていた通り、「盛り付け」は料理の重要なファクターであり、その「盛り付け」で、その料理人のアーティスティックさのレベルが露呈する。

 また、国内和食の最高峰と言われる吉兆での盛り付け+演出で、「蓮の花びらと蓮の葉」の前菜のカラクリに腰を抜かしたことがあった。霧吹きにて細かい水滴を施した蓮の葉。箸を付ける一瞬の振動により、葉の周囲から中央へ細かい水滴が融合し、滝となって流れ落ちるものだった。

 丁重に創られた料理というものは、料理人のハートそのものであり、特に「盛り付け」は客人との静かなるバトルのトリガーになっている。料理人は、暖簾の隙間からこっそり客人のリアクションを覗き込み、グーを握っているのかも知れない。

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