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大物の鯉を釣ったのは良いが・・・

 筆者が中学校2年生の時の出来事。前置きが長くなるので、ご了承願えればと。

 父の趣味の一つが釣りだったので、幼い頃から釣りとなれば、前日に餌の準備するのは我々子供達の役目だった。

 恋釣りはバクダン釣りなので、他の釣りよりも材料集めは大仕事。赤土、粟や小麦粉、サナギ、ビスケット、日本酒など、兎に角いろんなものをスリコギで粉にしたり、練ったりして、バクダン釣りの餌(団子)が完成するのである。

 餌を丸めていると、サナギの油などの香ばしい匂いと共に、酒の香り、粉の匂いが混じり合った、何とも表現するには難しい匂いが部屋中に漂うのである。手はベタベタと、サナギ臭が纏わりついている。

 また、バクダン釣りの釣り針は、6本以上の束となっており、鯉の餌となる団子を分銅型に整形し、それを包み込むように釣針を一本ずつ刺して埋め込んでいく。

 釣り場では、竿とリールで投げ釣りとなる。道糸に10号ほどの鉛玉を取り付け、束になった釣り針で団子の餌を包み込み、対岸手前の鯉がいそうなところに投げて、竿を立て、鯉が餌に食い付くのを待つことになる。

 ある日曜日に、鯉釣りに出かけることになった。そこは宮崎県延岡市を流れる清流五ヶ瀬川である。この川は鮎梁(あゆやな)で人気の川であるが、筆者が陣取ったところは、鯉は釣れないと言われた場所であった。

 しかし、せっかく前日に大きな団子を作ったのだから、大物を釣りたいものである。釣竿を2本立てて、鯉の引きを我慢強く待っていたが、竿先が揺れることはなく、鈴も鳴らず、静かなものだった。

 一匹も釣れないでは洒落にもならない。しかし、あまり遅くまで釣りはできないので、片付けようとした矢先、右側の釣竿の先が弓形にしなり、鈴が鳴り止まず。道糸は千切れそうにピンと張り、水面を前後左右に動き出した。

 釣竿をグッと持ち上げ、立てた状態にて、リールを巻くが、かなりの手応えと重みを感じながらも、なかなか手元に獲物が近づいてこない。そこでリールを巻くのを止めると、ジッジーと勝手に道糸が引っ張り出される。

 30分ほど水面下の獲物と戦った末に、ようやく足元近くまで獲物を引っ張ることができたのだが、思ったよりも大物である。タモ網を持っていなかったので、どうやって大物を土手に上げるか、さあ大変だ。

 結局、川の浅瀬のところで水に入り、両手で抱き抱えるようにして釣れた鯉を土手に投げやったのである。生まれて初めて釣った、大物の天然鯉。

 釣果は一匹だったが、大漁気分。自宅に持ち帰り計測すると、体長は65cm、重さ4.5kgの大物だった。鯉の唇は人間の赤ちゃんほどの大きさがあり、鱗1枚の直径は十円玉とほぼ同じ大きさであった。

 家族だけで食すには大物すぎるで、知り合いを呼んで、自宅で鯉三昧の食事会を催し、鯉こく、刺身などが十数人前できたと記憶するが、キンキンに冷えた鯉のあらいは最高に旨かった。

 勿論、大物の鯉を捌く前に魚拓を撮っていたが、宮崎の新聞社に情報がが流れたのか、後日、「五ヶ瀬川で大物の鯉が釣れる!」といった感じのタイトルで、その魚拓を持って笑顔の筆者(中学生)が新聞記事として掲載されたのである。

 それから1ヶ月くらい経ったろうか。再び、延岡市の五ヶ瀬川の同じポイントへ足を運んだのだが、釣りをするスペースが全くない。実は、その新聞を読まれた人たち(大人)なのか、何十人もバクダン釣りに来ており、二十数本の釣竿が川沿いに立ち並んでいた。

 残念!(苦笑)


▼ChatGPT-4oによる感想

このエッセイは、筆者の中学生時代の思い出として、釣りの経験を細かく描写しています。以下に、エッセイの内容とその感想を述べます。

内容の要約

エッセイの始まりは、筆者の父親が釣り好きであり、子供たちが釣り餌の準備をする役目を担っていたことから始まります。特に鯉釣りでは、多くの材料を使った「バクダン釣り」の餌作りが大仕事でした。その後、筆者が宮崎県延岡市の五ヶ瀬川で大物の鯉を釣り上げたエピソードが描かれています。長い時間と労力をかけて釣り上げた鯉は、自宅で計測したところ、体長65cm、重さ4.5kgの大物でした。家族や知り合いと鯉料理を楽しんだ後、地元の新聞に掲載されたエピソードも紹介されます。しかし、後日再び同じ場所に訪れた際には、多くの釣り人で溢れかえっていたというオチで終わります。

感想

細かな描写と臨場感

筆者は餌作りの過程や釣りの準備、そして実際の釣りの様子を非常に詳細に描写しており、読者にその場の雰囲気や匂い、感触を伝えています。餌の匂い、釣り場の静けさ、鯉との格闘の手応えなど、五感に訴える描写が秀逸です。このような細かな描写が、読者に臨場感を与え、まるで自分がその場にいるかのような感覚を抱かせます。

家族との思い出

釣りという趣味を通じて家族との絆が描かれている点も、このエッセイの魅力の一つです。筆者が子供の頃に父親と過ごした時間、兄弟と共に餌作りに励んだ思い出が、家庭の温かさや家族の協力の大切さを感じさせます。特に、家族全員で釣りの成果を楽しむシーンは、家族の結束力を感じさせます。

自然との対話

筆者が釣りを通じて自然と向き合う姿勢も、このエッセイの重要な要素です。静かな川辺で鯉の引きを待つ時間や、自然の中で大物を釣り上げる興奮が、生き生きと描かれています。自然との対話を通じて得られる喜びや達成感が、筆者の成長や内面的な充実感を伝えています。

思いがけない結末

最後に、新聞記事が原因で釣り場が混雑するという思いがけない結末が描かれており、少しのユーモアとともに、予期しない結果に対する筆者の驚きが伝わってきます。このオチがエッセイ全体に軽やかなリズムを与え、読者に対しても笑顔を誘う効果を持っています。

総評

このエッセイは、筆者の中学生時代の思い出を通じて、家族との絆、自然との対話、そして予期しない結果に対する驚きとユーモアを巧みに描写しています。細かな描写と臨場感、家族との温かいエピソード、自然との向き合い方、そして軽やかなオチが融合し、読者を引き込み、楽しませる力を持っています。釣りの経験を通じて得られる多くの学びや喜びが伝わってくる素晴らしいエッセイだと思います。

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