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ホテル文化に学ぶ

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取材先はザ・リッツ・カールトン東京、帝国ホテル東京、ホテルオークラ福岡、グランドハイアット福岡、熊本ホテルキャッスルなど。食文化発信基地としては、最高の食事処を選んでいるので、何… もっと読む
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#脇宮盛久

『豊穣の秋たけなわ 再会の宴』に舌鼓。

 数十年ぶりの旧友(山本順司医師/東京大学医学部卒)との再会。その宴を飾ったのは、『豊穣の秋たけなわ 再会の宴』(脇宮盛久料理長作/熊本ホテルキャッスル 個室 細川)。  学生時代と変わらぬ、互いのトークスタイル。旧友は開口一番、「よく二人で話していたよね。僕は受け身で10聴いて、1話す感じだった。」と。  筆者としては、そんなにお喋りの自覚はないが、彼にとってはそうだったようだ。数十年ぶりの会話は、数十年前と同じペースで、色んな思い出が湧き出してくる。  彼は、防衛医

脇宮盛久の世界(6)・・・『焼物』

 金目鯛と赤茄子錦繍焼き 山芋とろめんソース 銀杏 零余子 海胆 裂き松茸 紅葉芋 ざくろ茗荷  器も素晴らしいが、これはアートである。器の中央にちょろんと盛ってあるが、食材が何が何やら分からぬほどの造形美に見入ってしまった。  お味のほどは、言わずもがな。流石に、脇宮盛久流の会席料理である。

イギリスから友来たる。・・・娘の一言に、腰抜かす!

 数年前に、突然Messengerに電話が掛かってきた。イギリスの友人からである。念願の日本旅行で熊本にも立ち寄りたいので、是非会いたいとの事。  あまり沢山食べれないけれども、日本食が希望だと言う。そこで、熊本ホテルキャッスルのマネージャーに連絡を取り、同ホテル1階奥座敷『細川』を予約することにした。  日本人であれば何も心配することなく、さっさとメニューを考えるが、果たして刺身などを9歳の娘が食せるかどうかが問題だ。しかし、折角、東京から南下して熊本へ来るので、熊本の

脇宮盛久の世界(5)・・・『煮物』

(牡蠣西京煮 水晶絞り 海老芋 小蕪 黄金たもぎ茸)  透明なフィルムを紐で結んであった。火傷しないように、サラッと解ける紐。開くと、牡蠣の風味がパッと広がり、食欲を唆る。  牡蠣は牡蠣でも西京煮。そこに小蕪と黄金たもぎ茸が添えてあり、土台に海老芋。全ての食材が互いに邪魔をせず、繊細な融合を見せてくれた。  熱々にサーブされたので、最後まで冷めることはない。いやはや、西京焼きや西京煮が大好きな筆者なので、最後の一滴まで啜ってしまった。

脇宮盛久の世界(4)・・・『造り』

<皮剥肝巻・中とろ・ごま鯖の造り>  これは、絶句するほど、旨かった。三種の刺身に、三種の割橙酢、土佐酢、ごまだれが添えられ、一つ一つの刺身の最高の味を引き出していた。  贅沢な造りだが、特に、皮剥肝巻は圧巻であった。

脇宮盛久の世界(3)・・・『小吸椀』

 先ず、器に描かれた鈴虫に目が行った。羽根のところは貝殻を施してある。和食らしさが漂う、小さな椀。蓋を開けると、中央に盛り付けられた吸い物の主役たち。  『菊花蓮根饅頭 蕪擂り流し仕立て』という、小吸椀。名残鱧射込み、松茸、菊菜、柚が食材として使われており、絶妙なる吸い物であった。  会席料理の中では、この吸い物が命であると考える。何故なら、職人の腕の高さが、この小さな椀に凝縮されているように思えてならないからだ。  最後の一滴まで飲み干し、器やその蓋をじっくりと拝見し

脇宮盛久の世界(1)・・・『先付』伊勢海老どんぶりジュレかけ

 会席料理『豊穣の秋たけなわ 再会の宴』の最初にサーブされた『先付』。独特な器の上で伊勢海老が主人公として、金箔が添えられている。  今宵のディナーは、脇宮流の『宝石箱』が飛び出してきそうな予感。  お味の程は、伊勢海老の香ばしさと甘みが口の中に広がり、一口で食すのが勿体無いほどのものである。 ※脇宮盛久料理長:黄綬褒章及び現代の名工受章者

温かい『粥』が腑に染み渡る・・・『鱶鰭東寺粥』

 昨夜、旧友と数十年ぶりの『再会の宴』を楽しませて頂いたが、最後の〆として『粥』が振る舞われた。  『鱶鰭東寺粥』(桜海老、おこげ、軸三つ葉)に香の物が付いている。熱々の『粥』に、トッピングされた桜海老の上に、優しくとろみにのあるフカヒレを注ぎ込む。実にシンプルだが、とても複雑な味の融合を楽しめる逸品であった。  幼い頃は、風邪気味で体調悪ければ、すぐに『粥』を作ってもらい、体の芯まで温まり、バスタオルを首にぐるぐる巻きにして、ぐっと我慢の子であった。しかし、このようなお

素麺は、大盛り三把でしょ!?・・・とても素麺を食べたくて注文したランチ。

 先ほどの「秋刀魚は、三匹でしょ!?」に続く、ワガママランチ「素麺は、大盛り三束でしょ!?」。  脇宮盛久料理長(熊本ホテルキャッスル)も、いい加減に迷惑だと怒るかも知れないが、とても素麺が食べたくてオーダーした大盛り素麺だった。  完全炭水化物ランチとなったが、薬味とつゆ、そして素麺の喉越しで決まる。これは、これはとツルツル入る素麺だったが、「また、宜しく願います!」と小声で伝えておいた。

秋刀魚は、二匹でしょ!?・・・ダイニングキッチン九曜杏にて

 写真下は、以前、脇宮盛久料理長(熊本ホテルキャッスル)に無理を言って、秋刀魚二匹のランチで食した時のもの。  さっぱりレモンとピリッと大根おろし。芳ばしい焼き立ての秋刀魚を頬張ると、幸せ全開!よって、手前のご飯は一気になくなってしまう。  最近の秋刀魚は昔と比べれば、とても小さくなってしまった感がある。この秋刀魚は脂ののりが良く、香ばしく、塩味もばっちりと、最高だ。  次回は、「秋刀魚三匹お願いします!」とは、恥ずかしいので言わないことにするが、さっぱり和食のランチは

料理写真は、全て記憶に残る。・・・瞬間的に香りや食感、味、そして笑顔を思い出す。

 時折、取材した料理写真の整理をしながら、気に入った写真を適当に選び、『極上グルメ百選』にまとめることがある。  左上から右へと進むと、1)ザ・リッツ・カールトン東京 『日本料理ひのきざか』の鉄板焼の野菜、2)同じく蝦夷鮑、3)同じく蝦夷鮑の料理、4)熊本ホテルキャッスル 四川料理 桃花源の乾燥アワビのステーキなどと、何処の誰が使った食材で、どのような料理だったかを直ぐに思い出す。  人間の記憶とは、その時の『美味』の刺激の度合いによって左右されるのかと勝手に思っているが

ダイニングキッチン九曜杏・・・熊本ホテルキャッスル(連載その6)

<ダイニングキッチン九曜杏の和食>  脇宮盛久料和食理長(熊本ホテルキャッスル)は、熊本県を代表する『和の匠』と言っても過言ではない。  今回は、グランドメニューを一つ一つ紹介するよりも、これまで食した中で、強く記憶に刻まれているものを中心に、ランダムに掲載したい。  若く(50代)して、黄綬褒章や現代の名工を受章した匠として、その腕のほどは、繊細且つアーティステックであり、常に、サプライズ。  誕生日やほか記念日に、是非、同料理長の『特別料理』を頂けば、至福の極みど

日本人に生まれて良かったと、思う瞬間。パンや洋食が続くと、和食を前にホッとする。

 写真上は、熊本ホテルキャッスル ダイニングキッチン九曜杏の天ざる膳である。筆者用にカスタマイズされたもので、グランドメニューのそれよりやや軽めで、おにぎり1個にその日の具が特徴だ。  先ず、ざる蕎麦を頂く。冷たいざる蕎麦と雖も、できるだけ早めに食す方が旨い。最初に塩だけで蕎麦を食し、それから、わさびバリバリにしてツユで食す。結構盛ってあるが、食す時間はほんの数分。  それから、塩をチリっとまぶした天ぷらを齧り、次におにぎりを頬張る。天ぷらのサクサク音と同時に油が口の中で

恵まれている国内食文化。ホテルや食事処が賑わえば、経済が回り、再び幸せな時が戻ってくる。

 筆者の口癖は、「ホテルは文化発信基地」である。  ホテルのホテルと言われる、国内ホテル旧御三家の一つ名門「帝国ホテル」。筆者はファンの一人と勝手に思っているが、同ホテルが約130年(1890年開業)前に、列強の仲間入りのシンボルとして開業し、我々庶民に対して、欧米文化は勿論のこと、日本の新たな文化発信基地として、重要な役割を果たしてきた。  歴史と伝統を誇る高級ホテルは、我々庶民にとっては、些か高嶺の花的存在でもあるが、時には、紳士淑女が集う、質高きホテル文化を学ぶこと