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叔母の娘さんのケース コロナ禍での看取り

 次の義父関係の用事は四月九日です。

 ここで箸休めに、私の義母のケースより先行して起きていた、叔母の娘さんの『義母』のケースをお話ししましょう。

 伝聞なので、ライトに終わります。

基本の設定として

「義母のケース」で度々登場する義母の妹、『叔母 L子』は、三度結婚し、三度離婚しています。

 叔母には二人の娘さんがいます。長女夫妻は別の県に在住。叔母は今、私の家から車で30分ほどの距離にある、次女Eさん一家と同居しています。

 Eさんは年齢も、私と同じくらい。息子さん二人と娘さんがひとりいて、息子さん達は独立し家を出ています。ご主人は職人さんで、わりと休みに融通が利く様子。

 Eさんの仕事は、コロナ禍でダイレクトに影響を受けた職種です。出勤とリモートワークが週に半々の生活です。

私がそれを聞いたのは

 2月16日。その日私はお休みで。

 鯛ノ浦の誕生時で、天野喜孝氏が描いた法華経画が公開展示されていると聞き、車を走らせていました。途中、叔母の家のそばを通るので、「あ、叔母さん一緒に行かないかな」とちらっと思ったのですが、風の強い日だし、急な話だし、迷惑かなと、連絡しないまま。

 帰宅途中にラインで叔母から「今入院しています」と連絡があり。

 この日初めて、私は叔母が、大腸ガンの病巣が「破裂して膿んでいる」話を聞きます。腫れが収まったら22日に手術、とのこと。

 義母の葬儀関係が一通り終わって、帰ってきた日に叔母に会ったのは、先々週の話で。とても元気そうにしてたのに。

 このとき、この報告と一緒に、「義父母関係の書類等を渡したい」との連絡がありました。

 普段義実家と疎遠なわたしたちに代わって、義父のケアマネさんと話をしていたのは、叔母でした。おかげで、ほぼ歩けない(歩かない)にもかかわらず、義父は在宅で介護を受けながら不自由なく暮らしています。

 一方で、介護施設に入った義母の連絡先として、叔母と夫は情報を共有し、必要なものを揃えたりは叔母が率先してやってくれていました。

 それを今後は、全て私たちに引き継ぎたい。必要な書類は娘のEに渡してあるから、時間があるときに受け取って欲しい。とのことで。

 緊急入院、その原因がガンと言うことで、身辺の整理を本格的に考え始めたのでしょう。私たちもこれ以上甘えるわけにはいかないと、以降はEさんと日付等を打ち合わせることで了承しました。

 一方、実母と同じ大腸ガンということもあり、不安に過ごしていた最中。叔母が手術を終えた、四日後の26日。私の夫に、叔母の娘Eさんからラインが入ります。

「私の夫の母が亡くなりました」

衰弱は突然に

 Eさんのご主人は、二人兄弟の次男。義兄は近くの賃貸住宅で、最近再婚した女性と二人暮らしをしています。

 Eさんの夫の父親はもう亡くなっており、典型的な田舎の一軒家である『実家』には、Eさんから見て義母一人が住んでいました。Eさん夫婦が叔母と同居しているので、主に様子を見にいくのは義兄とその奥さんだったといいます。

 この義母が、ある日、なんらかの弾みで転び、背中を強打して、動くのが不自由になりました。正確な日付は判りませんが、時期的な流れから一月の半ばの話と推測されます。

 痛みで起き上がるのが辛い、と言う状況なのに、義兄夫婦は忙しさのあまり、病院に連れて行くことを怠りました。身動きが辛い状態の義母のために、朝夕は食事を届けに行くのですが、食事の世話までは出来なかったようで。

 目の前のテーブルに置かれても、起き上がれない義母は取りに行くことも出来ない。で、置いていった食べ物が手をつけられていないのも関わらず、義兄と義兄妻は、次の日も食べ物は運びはするものの、食べさせもしなければ、前日のものを片付けもしない。そしてそのことを、弟夫婦であるEさんにもEさん夫にも連絡していない。

 たまたま様子を見にいったEさんが見たのは、無意味にテーブルに置かれた果物等と、体の痛みでろくに動けず寝たきりの義母。

 リモートワークで自由がきいたこともあり、Eさんはまず病院に担ぎ込み、そのまま義母は入院。しかし、数日放置されていたこと、入院しても動けないことで、義母は認知症を発症。

 日中は体が痛いと寝たきりなのに、夜は徘徊が見られるようになったとのこと。これではそのまま退院させるわけにもいかず、かといって自分たちも面倒は見られず、義兄夫婦は当てにならない。Eさん夫も頼りない。

 Eさんが駆け回り、なんとか、費用が安い、グループホームを近くに見つけ、退院後はそこに預かってもらう算段をつけ、退院。

「ところがね、義兄って、自分じゃなにもしない癖に、しゃしゃってくるの」

 と、私が叔母の顔を見にいった2月3日、たまたま在宅していたEさんが、疲れ果てた様子で愚痴りました。

「義母がホームに入ったって義兄から聞いて、(年配の)親戚が『見舞いに行きたい』って言うんですって。で、その入居先を夫に聞いてきたのね」

 Eさん夫も、詳しくは知らなかったから、馬鹿正直にEさんに訊ねる。そして怒られる。

「このコロナ騒ぎの中で、面会なんか出来るわけないじゃない! 無理矢理面会なんて行かれたら、せっかく見つけたホームなのに追い出されちゃうよ! 向こうにも迷惑がかかるからやめてくれって、私が義兄に直接喋ったわ」

 わかる! なんで年寄りって、今の状況考えないで、見舞いだ葬式だとかで集まろうとするんだろうね! とお互い意気投合してしまいました。

 ていうか、手を出さないなら、余計なこともするな義兄。私もハリセン持って殴りたい。Eさんと一緒に前後から挟み撃ちしたい。

 ……その義母さんが、施設で亡くなったというのです。よりによって、叔母が入院中に。ガンで手術した、その直後に。

「母(叔母)から預かっている書類は、(玄関先の某所に)入れておくので、時間があるとき取りに来て下さい。私はこれから、葬儀やらの手続きで家にいられないので」

「それと、このことは母(叔母)には言わないでください」

 そして、Eさんは、叔母の入院中に、義母の葬儀の手続きも、参列も、こなすことになったのです。

田舎の葬式は大変

 最初の「義兄夫婦が使えない」話を聞いて、私は最初、「揃ってここもDQNなのか」と思っていたら、ちょっと事情が違うようで。

 義兄が使えないのはその通りとして、義兄の妻は、最近再婚だか結婚したばかりで、あまり関係が義母と深くなかったようなのです。

 それで、動けない義母にどれだけ手出しすればいいのか判断がつかずにいたところを、Eさんが発見したらしい。

 葬儀の時も、義兄の妻なのに、親戚の顔もろくに判らない状態。結局、葬儀に絡む親戚とのやりとり、式場での挨拶なども、Eさんがほぼ頑張ったそうで。

 叔母が退院する前、受け取った書類の不足を発見し再度訪問に行った際に、たまたまお会いしたのですが、その時は葬儀自体は終わっていて、

「これから義実家を片付けなきゃいけないの。昔ながらの立派な家に一人で住んでたから、あちこちから正体不明のものが出てくるのよ。もうなにから片付けていいか」

 賃貸の一角、3LDKだかなんだかよくわからない古い間取りのうちの義実家でも、義兄が死んだときはトラック頼もうかと思ったくらいゴミが出たのに(こまめな往復でなんとか処理しましたよ)、一軒家とか気が遠くなりそう。

 Eさんが、頼りにならない夫をなんとか指揮し、片付けに入ったあたりで、叔母が退院します。自分の入院中の事態に、叔母も驚いた様子です。そして叔母は、開腹手術後の身で、家事もままならない。無理に動くとEさんに叱られる。

 この、あまり動けない期間に一度、私は叔母の顔を見にいっています。その時のEさんは、

「義姉(義兄の妻)がいい人でよかった。義兄は権利の話しかしないけど、義姉は、遺産分でまず土地を早いうちに更地にしてしまったほうがいいよ、お金だけ分割するとあの人は使ってしまうよって、言ってくれて」

 気は利かないけど、分別はある人なんだなぁ。ていうか、そういう人でも、変な男に捕まるのだなぁ。

 そして結局、動くのはEさんなわけです。

そして、うちの義母へ

 手術を終えて退院した叔母は、抗がん剤投与に向けて、ポートを作る必要がでてきました。そのポート作りのため、2月23日から一泊二日の予定で入院。

 ところ、予後が不安だったらしく、一泊延長し、25日までの二泊三日になりました。

 そのまさに真ん中の日、叔母の姉である、私の義母が死亡。

 緊急連絡先を変更していなかったため、第一に連絡の行った私の夫が仕事中で連絡が取れず、叔母の家に連絡が入り、

 たまたま家にいた叔母の娘、Eさんがその一方を受けて、私宛に「施設に連絡して下さい」の連絡が入ります。

 叔母が入院中に、書類の受け渡しの連絡をする必要から、ラインで友達登録をしていたのですが、まさかここで役に立つとは思いませんでした。

 叔母は、同じ月、それも同じように入院中に、身近な知り合いが二人、死去したわけです。

 その後、義母の葬儀後の諸々、証券がどうこうで話を聞きに行った4月2日。

「義兄は、(実家の)家と土地を自分名義にしてくれればいいよ、って言うんだけど」

 現在は取り壊す話ではなく、名義を変える話になっているようですが。

「別に、渡すのはいいの。でも、あの人達が住むわけじゃないから、ほったらかしになるのは目に見えてるじゃない。で、そのままで何年かあとに、義兄になにかあったら。それが困るの!」

 お金にだらしない義兄のことだから、現金で貰った分は先に使い切ってしまうだろう。価値のあまりない土地と家だけ残されて、義兄が死んだりしたら困る。

「別にあんなのはあげたっていいから、その土地と家に関しては、一切私たちには迷惑をかけないって言う、証書を作って貰おうと思って」

 これが、義母のケース9で出てきた、「弁護士」「公正証書」の話になるわけです。人間相手も面倒なのに、不動産もあるって、大変だ。

 Eさん、今の仕事の前は、保険のセールスレディだったとかで、相続関係にも知識があったのが幸いしたようです。

 未来に降りかかるかも知れない火の粉の、火種になりそうなものを早いうちに消しておく。確かに大事な知恵ですが。

 今だって大変なのに、未来の心配もしなきゃいけないのか。とほほだよ。

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