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ゆきちか日々の書簡 05 * ゆきこの屈辱

コンポーザー二人の毎日のやり取りを切り取ったもの。きほん何気ない話です。今回は高校のときにどういう音楽を聴いていたか!違いがひどい!!
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わたなべゆきこ
作曲家、ケルン在住、四歳児の母。2008年からオーストリア→ドイツ

森下周子

作曲家、ベルリン在住。2009年からイギリス→ドイツ
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わたなべ:初めて音楽祭を聞きにベルギーに行ったのが高校生の時だったのね。

森下:えっ、早っ!

わたなべ:レストランに入る勇気もなかったから、マックでハンバーガーを頼もうとしたんだけど、それもできなかったんだよ!セットメニューの8番を頼んだはずなのに、ハンバーガーが8つ出てきたの〜。屈辱だよ!

森下:あはは、屈辱って!よく分かるけども(笑)しかも長野の田舎の高校生でしょー?すっごい大冒険だねえ!

わたなべ:そうそう、田舎の高校生を親もよく出したよね。当時泊まってたホテルがあまり治安が良くないエリアで、バスの行き先を間違えてスラム街で降ろされたときは、死んだなって思ったわ。懐かしい。

森下:まじ?わたしその頃フジロックとか行ってたよSonicyouthとかAsian Dub Foundationとか見に!なんだこの違い(笑)20年くらい前のことだよね?

わたなべアルスムジカっていう現代音楽祭だったんだけど、今でもあるんじゃないかな。ベルギー拠点で活動してるIctusアンサンブルを知ったのも、アルスムジカだったな、それもすごく衝撃だった。クールでかっこいい感じの現代音楽に初めて出会った。

森下:うわーーーそれが17歳でしょ?講習会とかすっっっごい数行ってるよね。逆にわたしはimpulsとダルムシュタット一回ずつだけ。ダルムは受講しなくてよかったな〜。

わたなべ:そうなの?

森下:うん個人的にはね。普段から接してる人が多いし、ふらっと顔出すくらいがちょうどいい。ああもうひとつある、シンガポールのやつ!!!あれはすっごい良かったなあ。

わたなべ:2013年だっけ?ヘルシンキの空港で待ち合わせして一緒に行ったね、そういえば。

森下:そうだったね。ゆきこちゃんと旦那さんと、チャンギ空港からタクシー乗って。ハヤ [チェルノヴィン] やスティーブ [タカスギ] と二週間過ごせたのも大きかったな〜。

わたなべ:シンガポールっていう場所も良かったよね。インターナショナルで、英語も通じるけど、アジア人だからって差別されない。宗教含め、異文化共生している場所で、ご飯美味しいし!今思い出すと桃源郷みたい。

森下:わかるー!メインの大通りとかすっごい綺麗でキラキラしてるけど、裏通りとか小汚くて気楽な屋台いっぱいあってさ。ドリアン食べたり、島に皆で遠足いったり。

わたなべ:あったね〜!

(一番下の写真:左手の奥にひっそりとわたなべさんがいます)

森下:通常のアカデミーよりはアジア人率高かったじゃない?だからかな、萎縮しなくて良かったね、ディスカッションとか。やっぱりヨーロッパにいると気を張るもん、言いたいこと伝わらない分かってもらえないことが前提で生活してるし。

わたなべ:そうだね、海外にいると言い方を一つ間違えると生死に関わることもあるし、どうしても言わなきゃならないことを何とか正確に伝えることが第一だから、装飾的な部分は自然と減っていった気がする。

森下:そうかも。

わたなべ:しかも今は娘がいるから、子どもにもわかる言葉でってなると、ますますレトリック使えなくなった。

森下:あーうんレトリック。10年前イギリス行った頃のノートを見かえすと、もう少しポエティックな要素あったのになあ。論文用の文章にどんどんなってる、簡潔さ優先のほう。

わたなべ:でもさ、ちかこの鋭さは英語と日本語両方の思考回路を持ってるからだと思うよ、発言とか聞いてても。

森下:あら、なに急に(笑)でもありがと♡

わたなべ:無駄なものを削ぎ落としていく作業って、並大抵の努力では成し得ない事だと思うんだよ。外国語であるがために言いたいことが言えない状態は、人を一度無に落とし入れるからね。そこから自分の言葉を、真に探していくプロセスに入るのかもしれない。

森下:うん、海外に出る利点のひとつかもねえ。めーーーーっっちゃ大変だったけどねわたしは。

わたなべ:そうなの?

森下:全員英語ネイティブで、アメリカ人オーストラリア人イギリス人男子しかいない!!みたいな環境だったし、あの頃はハダースフィールドなんて田舎の無名大学だったから。しゃべり方忘れて失語症みたいになってたもん。

わたなべ:でもさ、音楽とリンクする部分も大きいと思うんだよ、言語って。装飾的なものは一見するととても美しいんだけど、本質は内部にあるような気がする。

森下:なななな内部??う、う、うん...わたしもそう...思うかな(笑)

(高校のとき、現代音楽なんてぜんぜん知らなかったなー(⁎⁍̴̆Ɛ⁍̴̆⁎) こんなフジロックとか行ってるあいだに、わたなべさんはもう海外の音楽祭行ってたなんて衝撃!)


【これまで】
ゆきちか日々の書簡 01 * チルテレ
ゆきちか日々の書簡 02 * カイロの音楽祭
ゆきちか日々の書簡 03 * 日本エキス
ゆきちか日々の書簡 04 *「個人的」なもの
ゆきちか日々の書簡 05 * ゆきこの屈辱

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ふたりが講師をつとめるProject PPPの三日間のコンポジションアカデミーは2019年は9月2〜4日に開催予定。オンナ作曲家の部屋vol.2、稲森安太己によるゲストレクチャー、Vln&Vcコンサート、グループディスカッションなど。

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Chikako Morishita、作曲家です。ちかこと読みます。https://chikakomorishita.com/

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