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スクールカウンセリング日記〜過剰適応から、等身大の自分へ。

スクールカウンセリングに興味のある方へ

私がスクールカウンセラーとして相談室で行なっている、カウンセリングの一コマの日記です。

カウンセラーには色んな背景があり、学んできた心理学や、経験してきた現場がそれぞれ違うため、相談室という密室で行われているカウンセリングの内容はそれぞれです。また、守秘義務があるので、その様相はあまり知られていません。

そのため、スクールカウンセリングに興味がある方、勉強中の方、初心の方に何か参考になればと、守秘義務・プライバシーを守りつつ、真実を曲げない形で以下、スクールカウンセリング日記として、ソマティック的なカウンセリングの事例を載せました。

からだを扱うカウンセラーは、カウンセラーらしくない?

私は、ソマティック心理学(身体心理学=こころとからだをつなげる)をメインに、療育やボディワークなどを取り入れ、カウンセリングを行なっている、少し変わったスクールカウンセラーかもしれません。

先日、ある中3男子が母親に「うちの学校のカウンセラーは、カウンセラーらしくない」と言っていたそうで、母親が私にそれを伝えてくれました。褒め言葉ですよ、と笑いながら、もちろん私自身も嬉しい気持ちになりました。その後、ずっと、家に引きこもっていた彼が週1回、私のところに通ってくれるようになったからです。「カウンセラーらしくない」それは、彼に取っては安心材料だったのでしょう。

時として、カウンセラーらしいというのは、侵入的・優しすぎる・共感しすぎるなどあるのかもしれません。私も、今回は嬉しい気持ちになったけれど、同時に、自戒を込めてカウンセラーらしい人になってはいけないなと思ったわけです。

カウンセリングは形式ではない。即興の出会い


カウンセラーは、習ってきたカウンセリング的な態度だけではなく、人としてどう生きるか、人とどう出会うかという姿勢を問いかけらているような職業だと思うことがあります。目の前の人にどんな眼差しを向けるか、どう出会うか、どう座るか、そんな仕事です。

「この子は、発達障害か」などと、こちらが持っている枠組みだけで人を見ていくと、出会いに「慣れ」が起こってきます。いつも、初めて会う宝物と出会うように、日々の出会いの中で、いつも即興でありたいと思っています。

さて。今回、スクールカウンセリング日記としてご紹介するのは、学校での過剰適応、家庭内の要求水準の高さ、両親からの期待により、甘えや休息の取り方が苦手だった彼女の事例です。



ケース(事例)の概要

ずっとハイテンションが続いている中1女子。成績も優秀で、委員もたくさんこなして、周囲からも信頼を寄せられている存在だ。

一方で、「自分が頼れるのは、物だけ」と、スマホとミンティアなどの刺激物が手放せない。気分のアップダウンが激しく、よい時はテンション高いけれど、落ちると生きていたくないと思うほどに。

自ら希望して来談した彼女は、話し方も、アニメのキャラクターのようなテンションだった。身振り手振りが多く、ぎゅっと握りしめる手や、首筋に入る力など、交感神経が活性化しているのがよく分かる。

数回のカウンセリングを続ける中で、本当の自分と偽物の自分がいるのだと話したり、どうしても許せない友達への気持ちを整理したり、傾聴と感情の言語化、思考の整理をメインに関係性を築いていった。

「自分の素というのが、どんなのかわからなくなる」と、自分の内面にも触れる会話もあるが、「こうあるべき」という思考の声や脳内のひとりごと(セルフトーク)が多く、思考のぐるぐるにはまっている様子。そのことで脳が疲労している様子も伝わってきた。

ストレスを受けている状況だけではなく、それ以外にも、得意なことやうまくいっていること、心地よいと感じること、好きなことの話なども聞きながら、関係性を深めていった。

関係性の基盤ができてきた頃、いつもの、話がメインのカウンセリングの途中で「少しお話をやめて、今のからだの状態を観察してみよう」と提案した。

すると、背もたれに寄りかかってフーッと一息つき、深い呼吸が入った。寄りかかっている背中を感じてもらうと、「力が入らない」と、そして眼球が寄り目となり「ボーッとする」と。

意識が低覚醒となり、自律神経系が休息モードに入ったことが見て取れたので、そのまま深めてしまうと、自分の世界に入っていってしまうため、引き止めるように「どうかな。私のこと見える?」と聞いてつながりを保った。そして「自分の身体で一番あったかいと感じるところは?」と、よい感じがするところに焦点を当てていこうと質問をした。

手のひらがあったかいとのことだったので、手のひらに集中してもらう。よい感じがすると思いきや、「手に力が入らない」とのことだったので、「手のひら見せて?」と一緒に彼女の手を見る時間を取った。

確かに、握った指が手のひらにつかない。しっかりと握れていない。

自分で自分をケアする方法をやってみようと、片方の手のひらで片方を握る動作を、深呼吸しながら一緒に行った。

さらに、「水筒持ってる?ちょっと水飲もうか」と提案して、水を飲んだり、水筒の硬さや冷たさを感じてもらった。

徐々に意識が覚めてきて、目はしっかりと前を向けるようになった。外から聞こえてくる音をきっかけに、ちょっとした雑談をしたりもできた。

ただ、まだ背中は背もたれに寄りかかっている。この後、現実にしっかりと戻して、友人との会話や日常生活に戻っていくために、さらにもう一段階、覚醒のレベルを上げる必要があると判断した。

そこで、「足の裏が床についている部分に注目してみて」「お尻が椅子に触れている感覚わかる?」と、グラウンディングを促すような声かけをした。

彼女の状態にも注意を向けつつ、私も一緒に、同じように足やお尻を感じていると、からだが横に揺れたくなり、すると同時に彼女のからだも横揺れを始めた。

この時、「私とあなた」ではなく「私たち」になっていた。からだ同志が共鳴をしている、共振の状態だ。しばらくそのままの心地よさで、一緒に過ごしているゆったりとした時間を味わっていた。

彼女の独特の、ハイトーンでアニメキャラクターのような発声は、今はおだやかでゆったりとしたものに変わっている。初めて、彼女の本当の声を聞いた気がした。

「今の声、いつもと違う話し方だね」と感じたことを伝えた。そして、テーブルの上にあった、手触りの良いマスコットを手渡した。「この色、可愛いでしょ。手触りもどう?」と握ってもらった。すると「ぎゅっと握るのはかわいそう。だからこの位の力で握ってあげたい」と、大事そうに優しく優しく、握って離してを繰り返していた。

これまでのように、ぎゅっと握りしめる手になるか、脱力して力が入らなくなるか、という両極端のてのひらではなかった。マスコットを握る手は、”ほどよく”心地のよいものになっているように感じた。

呼吸が深く入り、「こういう自分の素を魅せられる友達は、小学校の頃の一人の友達しかいない」と。

私も、そうか、と。その友達と一緒にいる時の自分ってこんな感じなんだね、とその友人の話を聞く。話は、小学校3年生の頃のものだった。とてもとても可愛らしい表情だった。


彼女は、頑張って大人になることを急かされ、しかも能力の高い彼女はそれに応えられてしまう。実年齢13歳にもかかわらず、大学生かそれ以上のような精神状態だったように思う。

約半年をかけて、ゆっくりと関係性を築き、徐々にからだにアプローチしていく方法でカウンセリングを行なってきた。今後は、月1回の頻度で、自分自身の自分の気分や感情の波乗りをできるようにカウンセリングを継続していく。

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お読みいただきありがとうございました。

不定期ですが、また〜〜!!


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