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連載の途中ですが…とある別れの記録(3)

不思議と涙や、悲しみに支配されることが無かった。

“その日”が今日であることにはとても驚いている、という感覚と、あっさりしたものなんだな、というあきらめの気持ちがまじりあう。

“その日”が近づいていることは、私も、姉も、母も、みんな覚悟していて、

でも、

もしかしたら椅子に座って食卓を一緒に囲むくらいのことはあるかもしれない、と期待もしていた。

 “もう一度一緒に食卓を囲みたかったな…”

そんな思いが、

 “目の前のひと品ひと品をしっかりと味わいたい”

というせり上がる衝動につながったようにな気がする。


2皿目 菜の花と帆立、ポン酢のジュレ

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3皿目 濃厚な小粒の牡蠣と鬼おろし

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4皿目 アワビとレンコン薄衣あんかけ 木の芽

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にぎり 春烏賊

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にぎり 鱚

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にぎり 中とろ

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にぎり あなご

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にぎり ホタテ

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赤だし 海苔 

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海苔巻き 鰯 

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にぎり 雲丹

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にぎり 鯛

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にぎり 車海老

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海苔巻き 穴子巻き

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淡路の旬を味わいながら淡路島にいることを忘れてしまいそうになる美味の流れ。

そして、

宙に漂う父と一つ一つの味をやりとりした晩餐の記憶となった。

一緒にその場に居たMさんと、一口を共にしつつ、感嘆しつつ、目を閉じて父の存在を感じつつ、

 “おとうちゃま、雲丹好きだったよね。にぎりでって珍しくない?”

 “ああ、雲丹やったら何貫でもいけるで。”


食いしん坊な父は、私が今日美味しいものを食べることをきっと知っていたに違いない。

あの日没後の昼と夜の交じり合う空の色に心を奪われながらも、予約時間に間に合うように急いでいたあの時間、

18時40分に父の魂は肉体から旅立ったと聞いて、

その後、父はこちらに向かっていたのだと、私の中の物語が成立した。



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