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映画「シング・ネクストステージ」感想

 一言で、アニメの作画と声優の歌は凄かったです。ただ脚本はハピエンではあるものの、結構突っ込み所満載なので、細かい点を気にしなければ、お祭り映画として楽しめます。

評価「B-」

※以降はネタバレを含みますので、未視聴の方は閲覧注意です。

 第一作目「SING/シング」にて、ショーで大成功を収めたバスター・ムーン一座、本作は5年後からスタートします。
 地元のニュー・ムーン劇場は毎日満員御礼になるほど、人気になりました。しかし、バスターには「さらなる野望」があったのです。
 ある日の公演、エンターテインメントの聖地レッドショア・シティーからスカウトウーマンのスーキーがやってきますが、彼女は途中退出します。バスターは、彼女に「三流のショーね」と言われたことで落ち込みますが、元歌姫ナナに励まされ、仲間達とレッドショアに向かうのです。
 レッドショアのクリスタル・タワー劇場、ここにはジミー・クリスタル社長が牛耳っていました。一座は、どさくさに紛れてオーディションに参加しますが、即座に落とされてしまいます。しかし、グンターが「伝説のロックスター、クレイ・キャロル」の名前を呟いた瞬間、ジミーの表情が変わりました。それを見逃さなかったバスターは、思わず「クレイを出演させる」とハッタリをかましてしまうのです。
 「クレイの出演」を条件に暫定合格を貰った一座、しかしクレイは妻を亡くして以来、15年間も表舞台に姿を現していませんでした。一座は、彼を探すことと、ショーを完成させること、両方を同時進行させますが…

1. 動物の動き方は凄く「リアル」で良い。

 Illuminationアニメのクオリティーの高さは相変わらずトップクラスです。動物の毛のリアルさや、ヌルヌルとした動きを3DCGで表現したのは流石でした。恐らく、実際の人間ダンサーの動きをアニメに取り入れていたと思います。
 また、動物の行動や習性をうまく取り入れていました。柔軟性の高いカメレオンだから狭い場所でも入っていけるとか、夜行性のメガネザルだから、暗いところで掃除をするとか、そういった描写からは、人間社会の「適材適所」を感じました。
 ちなみに、オーディションで見た「朱鷺の和太鼓集団」は、もしかして日本をイメージしてくれたのかなと思いました。音が大きすぎて座席が揺れたり、ストップブザーの音が聞こえなかったする描写には、思わず笑いました(笑)。

2. 声優の歌は凄い。

 本作は、原語版も日本語吹き替え版も、声量は半端なく凄いです。また、キャストにもかなりお金がかかっています。
 例えば、原語版のバスター役はマシュー・マコノヒー、アッシュ役はスカーレット・ヨハンソン、クレイ役はU2のボノなど、有名俳優や歌手を多数起用しています。
 日本語吹き替え版でも、一作目からの登場人物は続投されています。内村光良さん・MISIAさん・長澤まさみさん・スキマスイッチの大橋卓弥さん・斎藤司さん・坂本真綾さん・田中真弓さん・大地真央さんなど。※尚、前作にも出演した山寺宏一さんは、本作で別役で出演しています。 
 また、本作からの参加した声優には、SixTONESのジェシーさん・アイナ・ジ・エンドさん・akaneさん・大塚明夫さん・木村昴さん・井上麻里奈さん・山下大輝さん・林原めぐみさん・佐倉綾音さんらがいます。そして、シークレット扱いだったクレイ役はB'zの稲葉浩志さんが吹き替えていました。
 このように、出演者がとにかく豪華です。皆様も、名前を知っていたり、一度は声を聴いたことがあったりすると思います。そのため、鑑賞中に「中の人」を予想するのも楽しいかなと思います。

3. ディズニーのオマージュ?対抗ネタはチラホラ見られる。

 本作は、「不思議の国のアリス」や「美女と野獣」、「ファンタジア」などのディズニーアニメの「オマージュ」が沢山ありました。※見方によっては「対抗ネタ」とも取れます。
 映画冒頭のショーは「不思議の国のアリス」でしたし、クレイの「引きこもり」については、まんま「美女と野獣」の「野獣」でした。ということは、アッシュが「美女」だったでしょうか?敢えて言うなら、「ガストン」がジミー・クリスタル社長でしょうか?横暴な性格でパワハラな点が。バスターを「突き落とそう」とするシーンは、まんま「ガストン」でした。※最も、ジミー・クリスタル社長が怒りの矛先を向けているのは、バスターであって、クレイやアッシュではないところは、「美女と野獣」とは異なります。
 また、動物たちのバレエレッスンは、「ファンタジア」みたいでした。カバのチュチュやワニの暴走を思い出しました。
 さらに、「ミニオンズ」や「ペット」など、他のIlluminationアニメの「オマージュ」や「友情出演」はあるので、そこを探すのも楽しいかもしれません。

4. ミーナの恋愛エピソードは可愛い。

 ミーナは「恋する乙女」という役柄を与えられますが、シャイな彼女はそのイメージを中々掴むことが出来ません。「恋する乙女」というのは、飽くまでも「仕事の役柄」なんですが、「実際に『恋』しなきゃうまくいかない!」という方向に追い詰められてしまうのは、ちょっとやり過ぎだなぁと思いました。そんなときに出会ったのが、アイスクリーム屋のアルフォンゾでした。2人が恋に落ちるのは、やや「唐突」な展開でしたが、ミーナとアルフォンゾに関しては、「うまく行ってほしい」と思えるカップルでした。

5. 「二世の子供」あるある?が描かれている。

 ジミー・クリスタルの娘ポーシャは、とにかく自由奔放でワガママ、誰にでもタメ口を聞くブッ飛んだキャラでした。この辺は、「二世の子供」あるあるネタの一つなんでしょう。※ただ、これが「ステレオタイプ」の描き方になると危険なんですが。
 しかし、そんな彼女が実は「バスター一座を救うキーマン」になっていくのです。彼女は、一見すると「扱いにくい」存在でしたが、バスターはそんな彼女を掌で転がしながらも、隠れた才能をうまく引き出したのかもしれません。

6. 飽くまでも、「お祭り映画」として観るなら楽しい。

 本作は、エンターテインメントをこれでもかというほど詰め込んでいるため、飽くまでも「お祭り映画」として観るなら楽しいです。
 一方で、エピソードを詰め込んだ割には、どれも「薄く」て「詰めが甘い」ので、そこが気になる人は気になるかもしれません。
 例えば、以下の点は「引っかかり」ました。

・スーキー、最初はあんなにバスターを疑っていたのに、なぜ助ける気になったのでしょうか?流石にクリスタル社長が横暴過ぎたから?※常識的に考えれば、スーキーの言っていることは間違っていないし、バスターの方が「非常識」なんですよね。

・クレイが15年間の引き籠もり生活から抜け出すキッカケとなった、アッシュの「説得」はもう少し見せてほしかったです。あれだと、「アッシュが若い女性だからオファーに乗った」ように見えてしまいます。(そういうことを意図している訳ではないのはわかりますが。)

・ポーシャが毒父(ジミー・クリスタル)から「解放」される経緯はもう少し丁寧に描いたほうが、わかりやすかったです。彼は、何だかんだで「娘思い」の父親で(方向はズレているのでかなり不快でしたが)、ポーシャもそれに甘んじていたので、「お互いが離れたい」間柄ではなかったように思います。
 だから、父の逮捕後にポーシャが全くショックを受けておらず、ラストでアッサリとバスター一座に馴染んでいるのはちょっと「不思議」でした。ポーシャは嫌いなキャラではないですが。

・クレイがあの世界の「スター」であることをもっと視聴者に示した方が良かったと思います。例えば、週刊誌に秘密裏に撮られるとか、今でもシングルやアルバムが売れるとか、番組で特集が組まれるとか。キャラは「彼がスター」だとわかっていても、視聴者はわかっていません。だから、「キャラが『凄い』と言うから凄い人」という立ち位置にも見えてしまいました。

・クレイと生前の妻のエピソードの一つは見たかったです。その方が、彼がどれだけ彼女を愛していたかがわかります。彼は本番前に緊張し、ステージに立つことを躊躇います。しかし、アッシュが彼の歌をカバーしたとき、「妻の霊」がクレイの隣に現れます。そういった演出は正直「既視感」がありました。「良い」演出でしたが。

・ロジータ、流石にホテルに子供達を放つのは駄目でしょう。躾できてない子供達が暴れ回るのは最悪でした。まぁ、こういう滅茶苦茶な演出は、アメリカ映画にありがちですね。

・ジョニーのバレエの師匠のクラウス、まさか本番まで乗り込んでくるとは思いませんでした。彼の「鬼指導」にはパワハラ臭がしたので、腹が立ちました。(そういう憎たらしい役を演じた山寺宏一さんは流石でした。)しかし、辞めたジョニーにそこまで執着しますかね?結果的には彼を認めますが、直前まで彼をボコボコにしたい魂胆が透けていたのが嫌でした。

・ラストのジミー・クリスタル社長の「逮捕劇」も、何だか「唐突」でした。彼、何だかんだで、バスターにチャンスは与えていました。(「ハッタリ」を見破っていたかは不明ですが。) 勿論、「殺コアラ」は流石に駄目ですが。

 上記以外にも、「引っかかる」描写は多くあります。ただ、それらが物語を「ダメにする」レベルかと言われると、そこまででもないかなと思います。

 前作も本作も、基本的に「バスター一座の『都合が良い』ように物語が進み、彼らが成功して終わる」という、先が読める展開が続きます。このようにスタートとゴールがわかっているので、所謂「お約束」の展開が好きな人か、予め「答え合わせ」がしたい人向きの作品だと思います。

 どうも、Illuminationアニメは「脚本力が弱い」と思います。「シンプルで良い」といえばそうなんですが。本作も「ミニオンズ」も、キャラは「個性的」で印象に残りやすいんですけどね。

7. 曲が多すぎて、表現過多。物語に緩急がない。

 本作も音楽映画なので、沢山ヒット曲が流れます。しかし、前作と比較すると、明らかに曲を流し過ぎなので、正直「煩い」と感じる瞬間もありました。10分置きに色んな曲が流れるせいで、全体的に「表現過多」になっており、物語に緩急がなくなっているように感じられました。
 そして、あまりにも「曲が多すぎる」ので、鑑賞後はほとんどの曲が「印象に残らない」のが残念でした。本当に、声優さんの歌声は素晴らしいのに、勿体なかったです。

8. バスターのキャラは、「相変わらず」なので、賛否両論あるだろう。

 バスターは、前作も本作も相変わらず、「ハッタリで綱渡りする劇場支配人」です。彼の上昇志向は強いものの、突拍子もない発言や行動で皆を振り回します。でも、結局「何とかなって成功を手にする」のです。
 そんな彼を、「無計画・無責任・尊大だけど空回っててウザい」と思うか、「型破り・無鉄砲・ラッキーマンなエンターティナー」と取るかは人それぞれだと思います。
 私は、苦手ですね。少なくとも、「一緒に働きたくはない」です。(好きな方すみません。) だから、彼の「性格や行動」には、結構イライラさせられました。ノープランなのに、「熱意」だけでは人は動きません。
 結局、彼は「周囲のフォローありき」の人だと思います。「彼自身の性格や才能が周囲を動かす」というより、「運のツキや周囲の人」に恵まれているのでしょう。果たして、彼はそれに気づいているのでしょうか?正直、「裸の王様」感は否めません。
 以上より、彼の性格や行動は、手放しでは絶賛できませんが、他のキャラについては、まぁまぁ良かったです。 シンプルに子供から大人まで楽しめる作品ではあります。

出典:
・「シング・ネクストステージ」公式サイトhttps://sing-movie.jp/sp/

・「シング・ネクストステージ」公式パンフレット

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