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映画「ブレット・トレイン」感想

 一言で、日本や伊坂幸太郎氏へのリスペクトがなく、全てがダサくて安っぽいご都合主義の三流脳筋アクション映画でした。元々、整合性を求める映画ではないにしろ、これは許容範囲外で、賛否両論なのも納得です。 

評価「E」

※以降はネタバレを含みますので、未視聴の方は閲覧注意です。また、全く褒めてないので、絶賛の方&読みたくない方はバックしてください。

 本作は、伊坂幸太郎氏の小説「マリアビートル」を基にした、デヴィッド・リーチ監督によるハリウッド映画で、東海道新幹線をモデルにした列車の中で繰り広げられる戦闘を描いています。映倫のレーティングはR15+で、バイオレンスシーンが多めとなっています。※ちなみに、「マリアビートル」は、「グラスホッパー」の続編で、こちらも2015年に邦画が公開されました。

・主なあらすじ

 舞台は東京。久しぶりに仕事に復帰した、世界一運の悪い殺し屋のレディバグは、「謎の女性」から電話越しに、「東京発・京都行の超高速列車『ゆかり』の車内よりブリーフケースを盗み、次の駅で降車する」というミッションの指示を受け、東京駅から乗車します。
 一方で、殺し屋のキムラは、息子の渉に大怪我を負わせた者に復讐するため、見舞いにやって来た父のエルダーにその旨を伝え、東京駅から「ゆかり」に乗車します。車内にて、木村は「真犯人」を突き止め殺そうとするも、逆に返り討ちに遭い、協力するハメに。
 実は、先程の「ブリーフケース」の持ち主は、殺し屋コンビのタンジェリン(ミカン)とレモンで、彼らも「とあるミッション」により、「ゆかり」に乗車していました。
 レディバグは彼らの会話を盗み聞きし、ブリーフケースを探し出して、品川駅で降りようとします。しかし、その瞬間、彼に恨みを持つウルフが乗車し、戦闘になります。レディバグは、何とか彼を退けましたが、ここで降り損なった事により、ブリーフケース争奪戦に巻き込まれていくのでした。
(公式サイト・Wikipediaページより引用。)

・主な登場人物

 本作の登場人物は、ほぼ全員が「殺し屋」です。また、原作とは異なり、近年のハリウッド映画らしく「ポリコレ」を意識したキャスティングとなっています。

・「レディバグ」(演: ブラット・ピット)
 本作の主人公。「幸運を運ぶてんとう虫」という名前に反して、何かしら不幸が降りかかる不運な男です。久しぶりにミッションを受け「ゆかり」に乗車しますが、とんでもない目に遭います。

・「キムラ」(演: アンドリュー・小路)
 本名は木村雄一。息子の渉を何者かに半殺しにされ、その復讐のために「ゆかり」に乗車します。

・「プリンス(王子)」(演: ジョーイ・キング)
 外見は、全身ピンクコーデの可愛らしい女子学生ですが、中身は狡猾で悪魔のような性格の持ち主です。洞察力の高さと強運を武器に、レディバグやキムラを翻弄します。

・「タンジェリン(ミカン)」(演: アーロン・テイラー=ジョンソン)
 殺し屋コンビの片割れで、白人系の男性。「とある男性」の護衛とブリーフケースの見張りのため、「ゆかり」に乗車しました。

・「レモン」(演: ブライアン・タイリー・ヘンリー)
 殺し屋コンビの片割れで、黒人系の男性。「きかんしゃトーマス」好きで、人をキャラクターに擬えます。レディバグとは何らかの因縁があるようですが…?

・「エルダー(長老)」(演: 真田広之)
 キムラの父で渉の祖父。「運命」を語りたがる剣の達人です。米原駅にて乗車し、ある人物と再会します。

・「ホワイト・デス(白い死神)」(演: マイケル・シャノン)
 本作のラスボス。世界最大の犯罪組織を率いる冷酷非道な男。沢山の部下とともに京都駅にてレディバグ達を待ち受けます。

・「ウルフ」(演: バッド・バニー)
 メキシコNo.1の殺し屋の男性。レディバグに強い恨みを抱いており、品川駅にて襲いかかります。

・「ホーネット」(演: ザジー・ビーツ)
 毒使いの殺し屋の女性。東京の動物園から毒蛇を盗み、自らは着ぐるみに入って「ゆかり」に忍び込みます。

・「サン」(演: ローガン・ラーマン)
 「あの人物」の息子。タンジェリンとレモンと共に行動するも…

・「モモもん」
 テレビ番組「モモンガ テレビキッチン」の人気マスコットキャラクター。東京2020のキャラクター、「ソ○イティ」にかなり似ています。

・謎の女性(演: サンドラ・ブロック)
 レディバグの依頼人で、本名はマリア。彼とは電話越しに会話し、動向を見守ります。

・超高速列車「ゆかり」
 モデルは東海道新幹線。静岡駅と米原駅に停車したので、恐らく「こだま」か「ひかり」に近い感じでしょう。

1. 色んな映画の要素を詰め込んだ「闇鍋映画」である。

 本作は、色んな映画の要素を詰め込んだ(というかパクった)「脳筋闇鍋映画」です。
 デヴィッド・リーチ監督の過去作品には、「デッドプール2」・「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」などがあり、本作もこれらに続くド派手なアクションエンターティメントとなっています。鑑賞中も、これらの作品の要素を強く感じました。
 また、悪党だらけの血なまぐさいバトルは、アメコミDC映画の「スーサイド・スクワッド」風で、真田広之の殺陣は「モータルコンバット」、新幹線バトルと富士山は「マトリックス レザレクションズ」でした。
 他にも、極道の描写は、「アウトレイジ」などの邦画のヤクザ作品を、レティバグが新幹線のウォシュレットに引っ掛かる下りは、「テルマエ・ロマエ」を、「ホワイト・デス」の部下の格好は、「逃走中」のハンターを思い出しました。鬼の面を被っているのも、まるで「桃太郎」かとツッコミました。
 しかし、これらも小道具的にしか感じられず、新たな視点を授けられるような感じではなかったです。

2. エセ日本映画なのは承知の上でも、日本や伊坂幸太郎氏へのリスペクトが感じられない。

 本作は、日本を舞台にしながらも、日本感がまるでない、「エセ日本映画」です。正直、こういう作品は今までも沢山あるので、それを承知の上で観ました。しかし、それを以ってしても、本作からは最初の5分の時点で日本へのリスペクトが全く感じられませんでした。

 まず、未だに日本のイメージが富士山・芸者・温泉・ニホンザル・鬼・刀・お辞儀・おもてなしなのは、本当にステレオタイプですね。所謂、「アメリカから見た日本」ってこうなんでしょうね。
 また、登場した物や場所の扱いも酷く、特に、JR東海と京都、きかんしゃトーマス、東京2020のキャラクター、東京の動物園に関してはガッカリでした。
 そして、「ゆかり」の車内は、座席や照明がいやに派手で、まるでホストクラブやキャバクラみたいでした。ちなみに、車内乗務員も金髪なのは何故?
 ちなみに、伊坂氏の「マリアビートル」は未読です。しかし、伊坂先生の小説は、バイオレンス描写はあるものの、ここまで下品ではないと思います。残念ながら、本作からは伊坂氏の「い」の字も感じられませんでした。
 しかも、いつの時代が舞台なのかもよくわからなかったです。エキストラの乗客の派手な格好や挿入歌のリリース時から、バブル時代かなと思いましたが。それなのに、「ゆかり」は現代型なのも、終始不自然でした。
 さらに、挿入歌は、場面毎にガンガンと流れていたものの、ビー・ジーズの「ステイン・アライブ」(本作では女王蜂のアヴちゃんがカバー)と、坂本九の「上を向いて歩こう」(SUKIYAKI)しか印象に残らなかったです。後は、カルメン・マキの「時には母のない子のように」と、麻倉未稀の「ヒーロー」は調べてわかりました。それにしても、使うタイミングおかしくないですか?
 極めつけは、富士山の場所ですね。本作では、名古屋を過ぎて初めて見えましたが。

3. 全てがダサくて安っぽく、基本ツッコミしかない。

 本作は、本当に上記の題のように感じる点ばかりで、所謂「低予算映画」ではない筈なのに、終始チープさが漂っていました。
 まず「ゆかり」自体がCGやセット感丸出し、各車両の内装の違いも雑すぎて、明らかに「別撮り」しているのがバレバレでした。
 また、登場人物・字幕・コードネーム・戦闘描写も、全てがとにかくダサく、スタリッシュさがまるでありませんでした。特に、コードネームなんて、ゲームで名前設定するみたいなノリで付けてそうです。※一部は「マリアビートル」からの引用なのは知っていますが。
 そして、エキストラの演技も酷く、終始カタコトの日本語なので、アジア系の方かな?と思いました。彼らも、戦闘が始まってからは、ほぼ「透明人間」になっていました。運転手も車掌も乗客も、たまに茶々を入れる人がいるくらいで、あまりにも異常事態に気づかなすぎるのは、疑いを通り越して、もう滑稽でした。下手したら、最初から全員レディバグの睡眠薬飲んでたんですかね?
 さらに、戦闘にて魚や寿司を落とす、女の子の人形を奪ってバラバラにする、街を壊すのは酷すぎます。最も、食べ物を粗末にする描写はどの作品でも許せませんが。

4. ほぼ三流以下の俳優達の演技を見るのがキツい。

 本作の俳優達は、ほぼ三流以下の演技力しか感じられず、観るのがキツかったです。まともな演技が出来ていたのは、真田広之くらいでした。
 特に酷かったのは、キムラ役の日系人俳優のアンドリュー・小路でした。とにかく棒で、英語も日本語も聞き取りづらく、駄目な方のキアヌ・リーヴスを彷彿とさせました。後は、「モータルコンバット」のコール・ヤング役のルイス・タンとどっこいどっこいの大根役者でした。
 ブラット・ピットは、今回はカッコよくなかったですが、もう58歳にしては動けていたと思います。(もうすぐ還暦なんて信じられないですが…この人に然り、トム・クルーズに然り。)
 王子役のジョーイ・キングは可愛いですが、「レオン」のマチルダや、「キル・ビルVol.2」のGOGO夕張の下位互換的なキャラでした。インテリヤクザ設定の割に泣き落としとハニトラばかりで、怖さが見えず、父と兄との確執も取ってつけたような感じでした。まぁ、女子だから死なないかな~と思ってたら…こう来たとは。
 タンジェリンとレモンは、凸凹コンビで、何だかんだで憎めなかったです。しかし、タンジェリン、走行中の新幹線に掴まって、ガラスを素手と指輪で割れるの凄い怪力ですね~
 モモもんは、全く可愛くなく、如何にもアジア某国で作られるようなパチもんキャラでした。
 真田広之のアクションは流石で、終始凄みがありました。「モータルコンバット」でも、ここだけは良かったのを思い出しましたが、もうこのイメージが定着しつつあるのでしょうか?
 マイケル・シャノンは、サングラスなしの内田裕也というイメージでした。世界最大の犯罪組織のボスという割には、ショボすぎです。しかも、このご時世に「あの国」の殺し屋を持ってくるのは、いい度胸ですね。まぁ、昔から冷戦時代の国を題材・ネタにした作品はたくさんありますけど。
 マシ・オカは車掌役でしたが、終始ちょい役なのは勿体なかったです。鉄道側にも、「スパイ」や「戦闘要員」がいたら面白かったのにと思いました。
 福原かれんは車内乗務員役でしたが、金髪ウイッグが浮いていて不自然でした。それにしても、ホーネットに殴られて気を失ったのは気の毒でした。
 サンドラ・ブロックの使い方が勿体ないです。たとえ、カメオ出演だったとしても。ちなみに、ブラピとは「ザ・ロストシティ」で共演したのですね。
 上記より、キャスティングも、所謂「エセ日本ハリウッド映画」に出そうなメンバーばかりで、真田広之は殿堂入り、マシ・オカ、福原かれんは常連になりつつありますね。そういえば、本作に浅野忠信はいなかったなぁ。個人的には、キムラ役は浅野忠信が良かったです。
 後は、嘔吐や吐血シーンが多いのが気持ち悪かったです。目から血が噴出したシーンは、下手なホラー映画やゾンビ映画かと思いました。

5. 脚本もお粗末で、(元々整合性を求める作品ではないにしろ)何を見せられたのかサッパリ。

 上記で設定や演技について書きましたが、それらと同じくらい脚本もお粗末でした。何もかもザルで、基本ツッコミしかないので、どこまでそれに耐えられるかの我慢大会でした。予告編の時点で「脳筋アクション映画」・「エセ日本映画」だとわかっていたので、ハードルをかなり下げて観ましたが、それでも、偏差値がマイナスに振り切るくらいの映画でした。

 まず、大体「銃社会」ではない日本にて、銃を中心としたアクションをやるのに無理があります。そのため、終始その設定が浮いてしまっていました。※最も、原作がそうなので、ここは映画でも同じですが。
 また、人の生死のタイミングがご都合主義過ぎます。アッサリと死ぬキャラと、死ぬべきタイミングで死んでないキャラがいるのには失笑しました。明らかに、ブラット・ピットと真田広之は生き残ることが最初からバレバレでしたね。しかも、あの傷で木村と、レモンは生き残れたのも奇跡すぎます。まぁ、レモンは防弾チョッキ着ていたからでしょうが。
 そして、動物園から盗まれた蛇がひたすら這い回るだけで、都合よくレディバグに襲いかかるのは草でした。しかも、彼が「予め血清を打っていたから助かった」というのはもう大草原でした。
 もう、子供を助けたいなら他所でやってほしかったですね。無関係の他人を巻き込んだ時点で皆同罪です。あの後、レディバグ・キムラ親子・レモンが全員逮捕されたら笑っていたかもしれません。
 最も、こういう作品に「整合性」を求めるのは些かオカシイかもしれませんが。

6. こういう作品は漫画・アニメ・ゲームでやったほうがいい。

 本作について、漫画・ゲーム・アニメならまだしも、実写でやる内容ではないです。※決して、前者を下げるつもりはありません。
 所謂、「おバカアクション」と「雑な日本」が好きな人には向いているのかなぁと思いました。後は、現状に不満を溜めていて、スカッとしたい人とか。
 作品の酷さでいったら、「シン・ウルトラマン」とどっこいどっこいかな。まぁ、「『ゆかり』でのバトルが一貫していた」点は、こちらに軍配が上がりそうです。

出典:
・映画「ブレット・トレイン」公式サイトhttps://www.bullettrain-movie.jp/

※ヘッダー画像は、映画館のポスターより引用。

・映画「ブレット・トレイン」公式パンフレット

・映画「ブレット・トレイン」Wikipediaページhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3

・小説「マリアビートル」Wikipediaページhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AB


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