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たぶん一生埋まらない『ブランド広告』と『キャンペーン広告』の溝について

そごう西武の正月の広告が賛否も含めて話題ですが、これは『ブランド広告』として正しい形です。 ただ奇をてらった「飛び道具で炎上する広告」とは一線を画しています。




理由は、炎上した広告があった時に、必ず『コーポレートアイデンティティ(CI)』を確認します。 CIに沿っていればいいし、CIと矛盾するなら、やっていけないと判断しています。

今回のそごう西武なら、すべて理念体系に沿っているからです。

企業理念
『想像以上の提案で、お客さまに発見を。』

ミッションそごう・西武の「使命」

お客さまにとって新鮮な気づきの場であり続ける
私たちの使命は、そごう・西武という場を通じ、お客さまに、気づき・発見・出会いをご提案することです。お客さまの暮らしを豊かな、愉しさに満ちたものにすることが、私たちに課せられた役割だと考えます。

ビジョンそごう・西武が「めざす姿」

お客さまに未来を提供できる集団
私たちそごう・西武は、つねに未来に目を向けます。お客さまとマーケットの変化から目を背けず、お客さまの日々の暮らしに、新しさをご提供できるよう、学びと挑戦を続ける、勇気の集団であることを目指します。

バリューそごう・西武が「大切にすべきこと」

冒険しているか
編集しているか
文化をつくっているか

かつて、そごう・西武の発展の原動力は、新しい切り口と新鮮な提案でした。その精神を受け継ぎ、私たちは常に冒険心を心に灯していたいと考えます。そして、お客さまに訴えかける編集と、新しい生活者文化の創造を大事にしていきます。

『ブランド広告』はダレのためのもの?

今回の広告に対して「売上とどう結ぶつくのか?」「ポエム」「KPI」とマーケッターの方などにディスられていましたが、『ブランド広告』のターゲットは「ユーザー」だけでなく、『市場』『取引先』『社員』『社員の家族』もターゲットに入っています。 もっと大きく言うなら『社会』も入ります。

これは、普段のブランディングで使ってる『ブランド戦略MAP』です。
目的は、どのレベル感で、伝える相手やメッセージ抽象度も変わってくるので、その整理のためです。

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①サービス to C :ユーザーの課題に対して、どんなソリューションをいくらで提供するか

②ブランド to B:ブランド独自の提供価値の認知と体験、市場で独自のポジション、企業に対して競合との比較になった時に判断材料、競合社員に対しての自社の独自の価値、判断基準の宣言

③コーポレート to 社会(世界):社会の中での自社の存在意味(アイデンティティ)

目的やレベル感によって、変わってきます。

今回は『ブランド広告』は、目的は合っているし、サービスの訴求でもないし、ブランドだから明確な自社の価値観を訴求する事も間違っていません。

「キャンペーン広告」と『ブランド広告』の違いnoteにまとめたものなので、興味がある方は。

『ブランドステートメント(宣言)』

「ブランドメッセージ」「ブランドステートメント」と言われますが、
ユーザーやカスタマー向けもありますが、『自分たちの独自の価値(スタンス)』の文字通りに宣言です。

新聞という公益性が強いパブリックな存在に、元旦に出す意味は、読者が思う以上に重たいです。

今回の反響で「数字化できない」など声もありましたが、マーケッターに多いと思いますが、それが悪いではなく、むしろマーケッターとして当たり前だと思っています。

伝えたいのは『ブランディング』を理解していない、経営者の「ブランディングで売上が上がるの?」と一緒で、ブランディングへ投資をしていないから、いつまでも「安さ」「キャンペーンを打ち続ける」「クリック単価」勝負で、競合と同じ土俵で戦い続けて疲弊しています。 *安さやクリック単価の戦い限界があり、最後は人にしわ寄せがくるだけ

さらに『ブランド広告』から、『質(エンゲージメント/共感度』が高い、優良顧客(単価ではなく共感度が高い)リーチや、獲得にもつながっていきます。

伝えたいこと、あくまで『目的ありき』で、それを理解せずに、それぞれのスタンスと違う=否定しても、新しい価値を生まれません。

最後に自分が好きな『ブランド広告』を紹介します。
ブランドは「機能+情動」とも言われますが『情動=感情や心が動いた体験』は、「機能=便利=利害」を超えて、人の心に残り続ける価値を認知してみていただきたいです。

「女性が大学(学ぶ)」ことへのメッセージです。 潜在的なユーザーに訴求かもしれませんが、卒業やもちろん、学びたい女性にとって「神戸女学院大学」と手段をとらなくても、強いメッセージになります。

車業界の中でもHondaさんの広告はブレないです。
最後の「きのうまでのHondaを超えろ。」は、自分たちに言っていることです。

東京海上日勤のブランド広告も好きです。

普通なら「保険=ユーザーの不安訴求」を考えますが、『保険』そのもののアイデンティティ、大航海時代に挑戦するため、何かあった時に『保険』のアイデンティティまで立ち戻っているからです。

なお、そごう西武と同じよう話題になったNetflixの正月広告ですが、本国の「人の睡眠時間を奪う」から、自分たちで自ら「テレビと競合」にしてしまった悪手です。


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