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窓口対応の正解みたいなもの

窓口に客が来ていた。
収入印紙を求めて来たようだ。

若い係員が応対している。

「パスポート用ですか?」

うちの窓口は、パスポート用の収入印紙のみを販売している。
それ以外の収入印紙は、郵便局まで行ってもらうことになっている。

この客は、契約書用の収入印紙を求めているようだ。
窓口で応対する係員を怪訝な表情で見つめている。

思わず割って入った。

『ここではパスポート用しか販売していないんです。
 申し訳ありませんが、最寄りの郵便局までお願いします』

お客さんの目を見ながら、郵便局の大雑把な場所と共に伝える。

客は納得して、礼を言って去っていった。

応対していた係員の女の子に、伝える。
『あの客は、契約書用の印紙を求めていたから、
 郵便局を案内した方が良いよ』

不満そうに係員が言う。
「私もそうするつもりでした…」

ああ、まぁそうだろうな。

たぶん、放っておいても係員は同じことを言ったのだろう。

上手く言えないが、応対に心が入っていない感じがしたのだ。
あの客は応対に怒り狂うタイプではなさそうだったが、
何か嫌な感じがした。

係長がしゃしゃり出る場面ではなかったようにも思えたが、
出なきゃいけない気がした。
俺の勝手な思い込みかもしれないが、お客さんは満足げだった。
どのみち断るのだが、誠意、みたいなものを伝えないといけない。

あのまま係員が同じセリフを伝えたとしても、
心が通わないまま、微妙な空気になったと思う。

証明のしようもないが、たまにこういうことがある。
相手の求めているものがわかる、っていうと気持ち悪い奴みたいだが。

窓口対応の正解など知らないが、たぶん間違いではない。

はず。

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