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岡田由季句集 『中くらゐの町』

岡田由季さんの第2句集。
平易な言葉で書かれたシンプルな句が多い。それだけでなく、俳句を作る上での作者の目の良さを感じる句ばかりだ。

例えば
秋灯の芯となりたるバレリーナ
法螺貝の素の音の出る春隣

「秋灯の芯」や「素の音」といった言葉のキレがすごくて憧れる。

真夜中のテニスコートの梅香る
冬の月旅に少しの化粧品
県庁と噴水おなじ古さかな

あるある!と思うだけでなく、現代の都市生活の句として新鮮な切り取り方がなされている。

水鳥に会ふときいつも同じ靴
集まらぬ日の椋鳥の楽しさう
鳰の背をこぼれ鳰の子泳ぎだす

作者と鳥との近さを感じる句もよい。

一方で、
食堂に死角の席やぼたん雪
吠ゆる犬見つめ返して日の盛
きちかうや反物のまま五十年

といった作者の感性が生きた、ちょっと変な句に一番惹かれた。

句作に行き詰まったときや、リラックスしたいときに、この句集を何度も読み返すと思う。


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