鈴木総史句集 『氷湖いま』
鈴木総史さんは平成8年生まれ。「群青」同人「雪華」同人。
まず、櫂未知子さんの序文、佐藤郁良さんの跋文、橋本喜夫さんの栞文の熱量(愛情)がすごいです。
佐藤郁良さんによると、総史さんは「人懐っこくて気の置けない男」「こちらのグラスが空いていればすぐに注いでくれるかわいい男」。(貴重な人物です。)
昨年の星野立子新人賞の授賞式で、櫂未知子さんが総史さんのことを「チャラい男でしょ、ふふふ」とうれしそうに紹介していたことが印象に残っています。
就職により北海道へ移住したことが総史さんの俳句にとって大きな転機になったとのこと。櫂未知子さんが総史さんの俳句を「誤解をおそれずにいえば『洗練された風土詠』」と書いていて、なるほどと思いました。
力強い句が並ぶ句集です。逆編年体の作りも面白く、読ませてくれます。
とくに好きな12句。
亀の子の背にさびしらの星の柄
どぶろくの瓶の吹雪を飲み干しぬ
衣装よりまぶしき埃聖夜劇
白鳥のあかるさに湖暮れきらず
残雪や監獄に馬太らせて
ためらはず踏め樏の一歩目は
春闌くや湾も黒酢もきらめいて
点眼や蚊が刺しにくる耳の裏
さざなみは船に届かずカーディガン
沸き立つてこその鍋焼饂飩かな
虫籠を湖の暗さの物置より
みづうみを傷つけてゆくカヌーかな
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