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蒼海12号 すきな句

ちょっといろいろ忙しくて遅くなってしまったのですが、蒼海12号すきな句です。

蒼海12号は2021年6月発行。掲載はおもに冬の句です。

池田澄子さんの10句寄稿もあります。


山笑ふ山肌削り取られつつ  堀本裕樹

削り取られてもなお笑っている山。山の擬人化がちょっと可笑しく、ちょっと切ないです。

水掬うように仔猫を抱き上げし  池田澄子

仔猫の軽やかさが伝わってきます。


続いて巻頭6名の句より引用します。

連れ立つて来て探梅のひとりかな  関谷恭子

連れ立ってやってきても探梅はひとりひとりで楽しむもの。花見との違いですね。

銃声のごとき部長の大嚔  国代鶏侍

「銃声」だなんて過激な比喩ですが俳諧味があってうまいです。

春待つや虫ゴム換へる猫車  穐山やよい

「虫」「猫」と動物が隠れているのも楽しい仕掛けです。

ぎゆつと引くマーカーの赤しづり雪  杉本四十九士

季語の斡旋のうまさよ。

夢に得し句もあたためて初湯船  板坂壽一

夢で得た句をさらに湯船のなかで推敲するのですね。

組む足の卓に擦れたるおでんかな  武田遼太郎

この視点がまさに俳句です。狭い店だとわかります。


ほかにも好きな句がたくさんありました。

続編は思ひのままに冬銀河  福嶋すず菜
霜の夜や駐輪場にゆるき坂  山岸清太郎
日の中の塵の上下や春近し  山口ち加
焼き芋屋塞ぎし駅の出口かな  牛尾冬吾
蜜蝋の竹のにほひや寒稽古  河添美羽
紅梅や舌に汁粉の豆の皮  瀬名賀慎
水槽の底に這ひをり冬の蠅   つしまいくこ
父が抜け母が抜け福笑かな  中村想吉
春永や懐紙に綴る自由律  福田小桃
宇宙語る中年ふたり根深汁  森沢悠子
冬薔薇やボトルキープの墓石めく  霜田あゆ美
湯気立てや芳名録の他人たち  土屋幸代
膝掛けの滑り落ちたる電話かな  さとう独楽
マークシートめくセーターの編み図かな  村上瑠璃甫
シンバルの全力の音山笑ふ  加藤ナオミ
夢は見しままを語れず寒椿  犬星星人
ぶらんこの空に近づく呼吸かな  会田朋代
父酔ひて説く狐火の美しき  五戸真理枝
制服の襞に折り込む冬日かな  髙木小都
祈ることばかり重ねし日記果つ  筒井晶子
かんかんと旗鳴る勤労感謝の日  登坂由希
大いなる瞼閉ぢゆく如く雪  福田健太
くちづけに息継ぎのある聖夜かな  加留かるか



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