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蒼海23号 好きな句

蒼海23号は2024年4月刊行。

招待作品は、俳句が浅川芳直さん、短歌が睦月都さん(現代歌人協会賞受賞おめでとうございます!)、詩が岩佐なをさんです。

〜 その他のみどころ 〜
・堀本裕樹主宰の作品が20句→50句に大幅増量
・歌舞伎吟行レポートおもしろい(「金のミルク」にまで「カブいてるねえ」と仰る主宰)
・能吟行レポートおもしろい(主宰が美女に変身)
・蒼海鼎談おもしろい(短歌をやってみたくなる&小説を書いてみたくなる)
・蒼海リレーエッセイが今回も名エッセイ

雪に顔滅多打ちされ富士遠し 堀本裕樹(「夢中にて」)
息白く中勘助を語りをり 同
天狼と息を合はせてをりにけり 同

水仙の黄は目に重し会議室 浅川芳直(「福の豆」)

書き仕事に肩まで埋もれゆく夜を文字ふりはらひ湯を沸かしたり 睦月都(「Picaresque」)

以下、会員作品より好きな句

歯ブラシの毛のかがやきも台風圏 早田駒斗
秋風や石のトーガに石の傷 塚本櫻𩵋
錆びるてふ鉄の時間を銀河濃し 山口ち加
霜降や岩のやうなる父の靴 すずきなずな
対岸へ移り住みたる秋の蝶 種田果歩
芋虫のふんばつて空見上げをり 河添美羽

一本に旗のまきつく寒さかな 武田遼太郎
藁塚は敵の陣地となりにけり 福嶋すず菜
夭折にかなふ盆花なかりけり 鈴木トモオ
無花果を食べて地球に酔っている 浅見忠仁
その日よりすとんと秋になりにけり 朝本香織
身に入むや標本めける水煮缶 小谷由果
肘までを喉(のみど)と思ひ梨を剥く 佐復桂
柊咲く中の見えない喫茶店 澁谷洋子
秋の蚊に喰はれるままに参拝す 白山土鳩
育休の先生も来て運動会 杉澤さやか

秋蝶のごとく書棚を巡りけり つしまいくこ
脚長く設へ父の瓜の馬 中村たま実
横に居て天の川ほど遠き人 中村想吉
おのれさへおのれに遠く秋扇 福田健太
電気屋も八百屋も廃れ草の花 曲風彦
素面では寄越さぬメール蓼の花 森沢悠子
こんなにも光るすすきが飛べぬとは 加留かるか
透くやうでゐて冬瓜の色籠る 紺乃ひつじ
弾みたる林檎の皮の螺旋かな 坂本厚子
木犀や主治医の胸の二色ペン 杉本四十九士

蝶渡る無題のつづく展示室 後藤麻衣子
屋上に運動会の紙吹雪 日向美菜
税務署の大菊三本仕立てかな 加藤ナオミ
父の墓ひとり洗うて十年かな 平林檸檬
燈火親し数学はるか昔より 犬星星人
ふと折れる蜻蛉の軸やすぐ戻る 古川朋子
わが会社西瓜のやうに売られけり 守本卓実
女たちそれでそれでと湯ざめせり 霜田あゆ美
傷つけず傷つかぬやう懐手 柘植麻子


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