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『傍点』創刊号の好きな句

作家の長嶋有さん主催の俳句同人『傍点』の創刊号は、ふつうの俳句結社誌とは全然違っていました。俳句をやっているひとも、やっていないひとも楽しめる内容だと思います。

傍点の句会の記録を読んでは、「コロナ前はよかったな、句会がしたいな」と感傷に浸っていました。

句会記録のなかから、個人的に好きだった句を挙げていきます。


春郊にボルボ傾いだまま駐まる  ウラモトユウコ(『三の隣は五号室』吟行)

閉店の日のレジ打ちや花ぐもり  友定洸太(『三の隣は五号室』吟行)

秋なかばみきお着替えてミキオである  友定洸太(藤子・F・不二雄吟行)

ドライブはゆかいですから不死の星  オカヤイヅミ(藤子・F・不二雄吟行)

守衛所に鍵戻りくるF忌かな  黒木理津子(藤子・F・不二雄吟行)

風の右側蛍光色のブーメラン  鶴谷香央理(ブーメラン句会)

硝子戸の内に人ゐる朧かな  中島潤也(おぼろ暖簾句会)

催しの収支とんとん秋日和  長嶋有(西デスル句会)

雨を知らぬケインコスギの笑みや春  鯖好き夫(西デスル句会)

シャトル落つ冬野の父と子のあいだ  るいべえ(選句変更可能句会)

蚕豆やホースで洗う足の裏  黒木理津子(『ビッグコミックオリジナル』表紙俳句選抜バトルロイヤル)

紫陽花や遅刻をしても走らない  鈴木菜実子(『ビッグコミックオリジナル』表紙俳句選抜バトルロイヤル)

日脚伸ぶ吾子に噛まれているあいだ  工藤壱心(なんでこんなにかわいいのかよ句会)

鳴る靴を洗えば春の泥の水  鳥井雪(なんでこんなにかわいいのかよ句会)

春闌けてお名前シール万物に  大山邦子(なんでこんなにかわいいのかよ句会)

春光やパイ落ちという眠りあり  友定玲子(なんでこんなにかわいいのかよ句会)

ストリートビュー夏草を超えられず  山科誠(ストリートビュー吟行 苫小牧編)

カルーセル一曲分の夏日陰  鳥井雪(ストリートビュー吟行 カンヌ編)


また、あら丼さん(新井勝史さん)の特集より、とくに好きだったあら丼さんの句を。

屋根の雪軽し藤岡ジャンクション

湯豆腐の腹の底まで落ちにけり

塵取りの髪の長さの日永かな

新緑や微妙に長いマイク持ち

アクセルを踏み込んだクーラー直った

ソーダ水サドルの熱も心地よし

ポケットの今川焼の湿りけり

嬰児の白き冬帽高い高い



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