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うたそら参加まとめ(2021年)

千原こはぎさんの短歌誌「うたそら」、1号から5号まで参加させていただきました。何か新しいことをはじめてみたいというタイミングでちょうど創刊していただき、隔月で8首・過去作OKというのも気楽に挑戦できて大変ありがたかったです。
ここに自作をまとめておこうと思います。

秘密のおはなしアワード

この星の副音声が聞きたくて月をくるくる裏向きにする

切り分ける前の記憶がちょっとだけあると語った苺のケー

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19年の沈殿

アイドリングの震えが強いこのバスの風邪が早めに治りますよう

せめて夢の中ではマイルを貯めようと思うが意外なほどに飛ばない

奥の人が停車ボタンを押すことでおまえの発射をスタンバイする

右は暗闇、左は光、なーんだ 京成線が切り裂くふたり

いいですと言った女がそのままのキャベツを持って歩く駅ビル

駅ナカと言っているけど明らかに外 店主には見えているんだ

お客様、ホームにガムは吐かないで ガム

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タオルのまなざし、スウェットの街

赤ちゃんと同じくらいにやわらかいタオルをつくりタオルをそだてる

こんにゃくを凶器になるほど凍らせてもう後戻りできぬ食感

自由研究でアイスの実を植えた庭が今では箱アイスです

たんぽぽの綿毛みたいに一斉に風に運ばれていくスニーカー

いかの漕ぐ自転車ならば見た感じ観覧車にも近い気がする

ひとりでも居心地のよいフードコートはある ひとり客の隙間で

LOVEをロベと読んでいた頃まだぼくは本物にし

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ひとり部屋 / transform

ひとり部屋

雨と嘘、嵐とキスの舞い上がる夜、部屋干しをしてやりすごす

憲法の前文みたいな日本人だな俺はってだらけるソファ

世界中のスポーツを観る 何もない日を何もない日にしそこねる

着ない服を捨てて残ったハンガーが無駄無駄無駄と踊り狂って

洗い物したらアイスを食べるって俺の拳を奮い立たせる

transform

腰痛の中で寝がえりするようにそろりそろりと勇者一行

QRコードを何度かざ

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毎日の食生活

焼き鮭を食べさえすればしあわせと気付いているのに気付かないふり

道端にガリの袋が落ちている お寿司の頃のわたしの記憶

居心地のよい店ばかりなくなってケンタッキーすら奪われるのか

アイスから通知が来てもまだ夏は若干顔をのぞかせただけ

お茶碗がとても静かに割れたからまた新しい私が食べる

五種類のチーズを使用しています 舌を五股に分けて味わう

こんなことしてる間にもう裏か 表の攻撃という名の

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