原発性副甲状腺機能亢進症で手術した話

原発性副甲状腺機能亢進症
を知っている人はどれだけいるのだろうか。

これは数千人から数万人で1人しか罹らず、罹患者のほとんどが50代であり、20代で発見されるのはかなり稀らしいという病気である。

たまたまこの病気が見つかり、手術をすることができたため、記録として残しておきたいと思う。


原発性副甲状腺機能亢進症とは、甲状腺の裏(違所性の場合があるからその限りではない)に4つある米粒くらいの臓器、副甲状腺の内の1つが腫瘍化し、PTHホルモンと呼ばれるホルモンを過剰に分泌する病気である。

PTHホルモンは血液中のカルシウムを管理するホルモンであり、このホルモンが過剰分泌されることにより、血液中のカルシウムを骨に送ることができなくなり、また骨から血液にカルシウムを吸収する。
よって、血液中のカルシウムが過剰になり、高カルシウム血症を引き起こす。

高カルシウム血症を引き起こすと、倦怠感、便秘、喉の渇き、食欲不振、頭痛、筋力の低下
などが起こる。
また、骨からカルシウムを吸収することにより、骨粗鬆症になったり、尿管結石になったりする。

高カルシウム血症自体は無症状の場合も多いため、骨粗鬆症が起きてから高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症が見つかる場合も多い。

根本的な治療は腫瘍化している副甲状腺を摘出することである。

というのが、今回先生に教えていただいた内容だ。

※聞いた内容なので、正確には下記のサイトを参照してください


では、こんな稀な病気がなぜ見つかったのか。

きっかけは2022年2月に受けた健康診断に遡る。

その際、左目の視力が著しく低下しているのが見つかり、眼科で検査を受けたところ、視野が狭くなっており、大学病院で精密検査をすることになった。
MRIなど数ヶ月かけてたくさんの検査をしたが、原因が分からず6月に視神経炎疑いという診断がついた。
(私の視神経炎はストレス性のようなので今回の病気とは関係なく、あくまできっかけです)

その後、夏頃から食欲が落ち、9月中旬にはすんなり5キロくらいのダイエットに成功した。

夏バテや多忙で食欲がないのかと楽観的に考えていたが、涼しくなっても食欲が戻ることはなく、10月くらいから酷い倦怠感に悩まされた。
仕事中もふらふらし、帰宅したらすぐに寝るような生活が続いた。
その頃から酷い便秘が始まった。もともと便秘がちで薬を処方してもらっているのだが、1か月くらい続き、どの薬を飲んでも効かない状態。
便秘が続いているので胃の調子もおかしくなり、内臓が動いてないような感じがした。
また頭痛も酷く、毎日数回頭痛薬を飲んでいた。

普段からPMDD(月経前不快気分障害)で体調が良い日が少ない私だが、それにしても今回の体調不良は酷く、1週間時短やお休みをいただいた。
年始から始めているインターンも量をかなり減らした。
1週間のお休みの後は
インターンのイベントが翌週末にあり、それに向けて記事の執筆のスケジュールが立て続けにあり、
もちろん仕事も通常通りである。

しかし、良くなることはなかった。

その状況に不安を感じていた復帰前日、日曜日の深夜、
どうしようもない暑さと激しい頭痛に襲われ、いきなり顔の左側が酷く引き攣り、上半身が痙攣し出した。(これも極度のストレスだったようです)(別の病院で見てもらったところ突発性ジストニアという脳神経系の病気でした。2022/5/6追記)

さすがにこれはまずいと思い、脳神経外科を受診した。
脳のMRIに異常は無く、問題ないということだったが、視神経炎疑いという診断が数ヶ月前にあったことから、当日中に大学病院で検査するようにということになった。
大学病院では多発性硬化症を疑われ、検査入院が決まり、即PCR検査をして、水曜日から入院した。

そして入院時の血液検査でカルシウム値が異常に高いことが判明、PTHホルモンの検査をしたところ、こちらもかなり高い値を示し、副甲状腺機能亢進症の検査をすることになった。

という流れである。

改めて徹底的に検査してもらった結果、視神経炎も多発性硬化症も全く問題なかったのだが、最初の視神経炎疑いという診断がなければ高カルシウム血症、今回の病気が見つかってなかったと考えると年始から大学病院に通った時間は無駄ではなかったと今さらになって思う。


退院後、11月中に検査をした。
原発性副甲状腺機能亢進症の検査は血液検査の他に、副甲状腺の場所を把握するためにCT、超音波、MIBIシンチというものが用いられた。
また骨密度測定も行われた。

CTでは造影剤を使って検査をしたのだが、造影剤を点滴ではなく勢いをつけて投与するため、全身に暑さを感じ、血が回っているのを感じた。

MIBIシンチは核医学と呼ばれる検査で、薬を投与して写真を撮り、その後3時間置いて再度写真を撮ると、PTHホルモンを出している箇所が黒く残るというものだった。
この薬がものすごい不味く、注射で投与しているのにえぐみや酷い匂いを感じた。
何よりも辛かった瞬間である。

骨密度測定では上半身は20代の平均値よりは低いものの正常値であったが、足が危険値ではないもののかなり低下していた。

12月4日、PTHホルモンの値が高いということで覚悟はしていたが、副甲状腺機能亢進症という診断がつき、左下の副甲状腺を摘出する手術を行うことが決まった。
治療薬が無いため、カルシウム値が低くなればということで手術まで骨粗鬆症の薬で対応することになった。

後日、念のために腎臓などに腫瘍がないかお腹の検査をしたが問題ないとのことだったので、原発性副甲状腺機能亢進症と確定診断がおりた。

1月2月でインターンでエストニアに行き、帰国後に再度血液検査を受けて、今度は点滴でカルシウムを下げつつ、4月12日に手術を受けることが決まった。


点滴でカルシウム値を下げると、今までなかった食欲が一気に出てきて、常に空腹状態になった。
美味しいものをお腹いっぱい食べられることが嬉しく、お酒も嗜み、食べたかったいろんなものを食べた。

その結果、1か月で5キロ弱太った。
手術をして正常になるということはこういうことなのだと思った。


そして手術。
月曜日に入院し、火曜日に手術。手術は14時から。
全身麻酔のため、当日の0:00から固形物を食べることが出来ず、10:00から水が飲めなくなった。

手術室までは歩いて行き、自分で手術台の上に寝た。手術室は思っていたよりかなり明るく、何やら陽気な音楽がかかっており、ドラマとは全然違った雰囲気だった。

私の副甲状腺は甲状腺に埋まっていたため、摘出にかなりの時間を要したらしい。
摘出後に癌かどうかを判断する病理検査、また取り出した副甲状腺でPTHホルモンが下がっているかを判断する為の血液検査も含めて、手術時間は5時間弱かかった。

傷口と止血?した点滴の箇所が痛く、何度か痛み止めを点滴してもらったが、1番辛かったのは喉が乾いていたことだったと思う。

数時間後には酸素マスクが外れ、6時間後から水が飲め、翌朝にはお粥とお魚の朝ご飯が普通に出てきた。
朝は明け方に点滴してもらった痛み止めが効いており朦朧としていたが、昼間には尿道カテーテルも抜け、普通の生活に戻った。

手術翌日とその翌日はとても元気で、今すぐ退院できると思っていた。
しかし、その日の夜くらいから低カルシウム血症の症状がかなり酷く出始めた。

PTHホルモンを過剰に出していた臓器を摘出するため、残った臓器が正常に働くようになるまで時間がかかり、その間に低カルシウムの状態になるらしい。

朝昼晩のカルシウム剤と1日数回ナースコールを押して頓服のカルシウム剤を持ってきてもらった。

同室で甲状腺科の手術を同日に受けた人は早々に退院して行ったが、私はかなりカルシウム値が低下していたため、当初の予定退院日になっても全く目処がたたなかった。

土曜日に同室の人が全員退院か部屋を移動し、そのまま退院まで個室状態になった。
そこからは非常に快適な入院生活を送ることができた。

朝の採血以外は何も予定がなく、カルシウム値が低いだけの患者なのでナースさんも全く見回りに来ず、消灯は毎日23時だった。
その後も処置灯とかつけてても何も言われず、イヤホンをつけずにテレビやYouTubeを見ていた。

月曜日にようやくカルシウム値が正常に戻り、火曜日に退院する事ができた。9日間の入院生活だった。

カルシウム値は正常値に戻ったが、薬を飲んでの正常値であるため、しばらくはカルシウム剤を朝昼晩寝る前に飲み、頓服も出ている状態ではある。
しかし、これで晴れてこの病気は治り、骨粗鬆症のリスクを減らすことができたのである。


元気になれば傷口とかは気にしないという考えだが、とても綺麗に手術をしていただいた。
何例も執刀している良い先生らしく、また甲状腺科の大先生もかなりの名医らしく地元の大学病院にこんな素晴らしい先生がいてよかったと思う。

傷口はこんな感じ。溶ける糸なので抜糸もない。

ここまでが私の原発性副甲状腺機能亢進症の体験談である。

なかなかにレアなものを引き当ててしまったが、総じて自分はとても運が良いと思う。骨粗鬆症になる前に見つかったのはとても大きい。

ストレスで顔が引き攣る症状は10月に現れてから無くなっておらず(※突発性ジストニアという脳神経系の病気で現在も通院中です。2023/8/6追記)、PMDDの症状はもちろん現在でも続いている。
しかし、これらの症状がなければこの病気に気づくのはかなり先になっていたことだろう。
骨粗鬆症になるまで気づかなかったかもしれない。

結論、私から皆さんにお伝えしたいことは、健康診断はきちんと受けることと、日頃から自分の身体を気にかけておくことを徹底してほしいということだ。
自分の普段の症状と違う、違和感を感じたら病院に行って診てもらってほしい。
そうすれば今回のように何か見つかるかもしれない。

20代でこの病気が見つかった人の体験談は調べても見つからなかった。
今後誰かがこの病気になった時に、こんな人もいたと参考、励みになればいいと思う。

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